素人目線の映画感想ブログ

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ボーダーライン /ここは、善も悪もない地獄。 


 ボーダーライン
 ボーダーライン
 (2016年 アメリカ映画)  85/100点


原題の「シカリオ」に対し、B級映画のような邦題が不満ですが…、本作はそれはそれは重たい緊張感で紡がれた1級のサスペンスです。一時も気が休まらないほどの見応えでした。

あらすじは、FBIの優秀な捜査官・ケイト(エミリー・ブラント)は、メキシコの麻薬捜査チームに引き抜かれ、深い影の見えるコロンビア人・アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と出会う。メキシコに入ったケイトは、麻薬カルテルの恐ろしさと、法を無視した凄惨な捜査手法を知る…というお話。

序盤の突然の爆破にびびらされて以降、いつどこで何が起きるか分からない緊張で、イヤな汗が手をにじませます。
メキシコの砂埃の風景がまた、その緊張感と混ざり合い、ノドの渇きまで感じさせるのです。この雰囲気は、かなり「ゼロ・ダーク・サーティ」に似ていました。

本作で描かれる麻薬カルテルの恐ろしい実態は、事実です。
麻薬戦争で、この10年で10万人が殺されていると言います。市長は実に100人が暗殺されているというから、映画以上かと思えるほど凶悪な現実です。アメリカのすぐ隣国であるメキシコの混沌は、トランプ氏の「壁を作ってやる」という暴言が支持されてしまうほど、アメリカ人に恐怖を植え付けているのです。

さて。

そんな地獄の窯の中に入り込む主人公・ケイトの強靭な心持ちが凄いものです。先の作戦で失った仲間のために、彼女は首謀者を捕まえたい一心。しかし、メキシコの街に入るや、アメリカとはまるで異なる現場に、彼女の顔つきには、次第に不安が張り付いていきます。
演じるエミリー・ブラントは、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の時にも、屈強な女兵士でした。クールな面持ちで、線が細いのに「強く見える」タイプの女性です。これもまた、「ゼロー」の時のジェシカ・チャステインを彷彿とさせます。

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ケイトはすぐに気付きます。
ここは、アメリカとはまるで違う。

人の命など、棒っきれの価値しかないような街。
警官さえ信用できない無秩序。
それを怯えながら受け入れている市民。

この街は、おかしい。

それは、犯罪だけではなく、取締りの捜査手法にも表れていました。
捜査官たちは、少しでも抵抗を見せる麻薬組織の人間を、正しい手順を踏まずに始末します。捕えれば、躊躇もなくリンチを加えます。

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あまりに法を無視した取り締りに、ケイトは幾度も抗議をしますが、全く聞き入れられません。
ケイトの言葉は、所詮この地では大甘な詭弁でしかないのです。
反対に。
大事な会議にもサンダル履きのノンキなCIAのマットと、重たい何かを背負っている様子のコロンビアン人のアレハンドロ。ケイトとは違い、この現場に慣れきっている二人の様子が頼もしくもあります。
「おめーは後ろで見てればいいから」
まるでバイトの初日のような扱いをされるケイトなのでした。

ベテランのバイトリーダーがテーブルに残った皿を見事な手際で片づけていくように、マットもアレハンドロも他の先輩たちも、実にテキパキと犯罪者を倒していきます。命のやり取りをしているとは思えないほど、そこには余裕すらあるのです。
ケイトは、ただ唖然とします。さながら、客のまばらな個人の喫茶店から、人気チェーンのファミレスに転職した新人ウェイトレスばりの使えなさ。それどころか、「残ったお漬物をまた別のお客様に出すのはいけないと思いまーす」とばかりに、現場の裏ルールに口を出すのだから、ベテラン勢にとって鬱陶しいことこの上ないのです。
「おめーは、だまってろよ…」
アレハンドロは、ドロンとした死にかけのような目でケイトを脅しつけるのでした。

この右も左も分からず翻弄されるケイトは、観客と同じです。
「一体、何が起きているのか。何が起きようとしているのか」 一切知らされないケイトと我々は、麻薬運搬ルートを襲撃する場面と同じうす暗闇の中で、手探りの不安に落とし込まれます。
そして。
徐々に明るみになる襲撃作戦の真相は、さらにこの闇の深さを知らしめるのです。


ただ…。<以下、少し結末に触れます。>

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前半まで圧倒的リアルに描かれていた物語は、終盤、ある人物の突然の「ジャック・バウアー化」で崩れます。
いきなり「24」や「96時間」的アクション映画みたいになるのは、ちょっとバランス悪かったかな…。

そのために一時緊張感を失いかけた終盤ですが…どっこい、その先に待っていたのは本当に血も涙もない結末でした。
どの争いでも同じこと。闇を深めるのは、復讐の連鎖。恨みの円環。
それは、麻薬カルテルのボスさえ驚愕させるほど、濃いものだったのです。
ここには、ボーダーもなにも、はなから正義も悪もなかったのです。あるのは、命や家族が次々と奪われていく、救いのない現実だけ。

シカ


ラスト。空になったベッド脇でじっと佇む1人の少年の心には、果たして「奪った者」への怒りが綴られていくのか。
そして。
絶え間なく聞こえる銃声が、現実と理想のボーダーで苦しむケイトをあざ笑うように鳴り響くのです。



(以下、おまけ…)


『新人ウェイトレス・小日向さん』

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今日からお世話になります、し、新人の小日向です。

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店長の藤野です、よろしくねえ。

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店長補佐、兼、コックのトドロキだ。

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バイトリーダーの牧野っすー、よろしく~

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まあ、今日は初日だし、力まずに先輩のやり方を見てたらいいからさあ。

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わ、わかりました。あっ、店長!

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いきなしビックリしたー。なんだい、小日向くん。

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牧野さんがお店の冷凍スープを家に持って帰ろうとしてます。

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あ、まあいいよお。ウチはオーナーがケチでまかない出ないから、その分少しくらい持って帰っても。

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オーナーはご存知ないんですね。それはイケないことだと思います!

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なんだよー、新人なのによー。わかったようなこと言ってんなよー。

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あ、店長!

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は、はい…?

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コックのトドロキさんが、賞味期限切れの缶入りソースを使ってます!

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う…うん。1日くらいだからさあ、目をつぶってやってくんないかな。うちも売り上げ苦しい時だし。
(こりゃ、困った人が来ちゃったなあ)

・・・数日後。

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店長! トドロキさんが私の家に勝手に入ってきます! 二度も! やめさせてください!

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それは問題だ。確かにそれは大問題だ。トドロキさん、なんでですか?

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君は・・・私の大切な人に似ている・・・。

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いや、それ理由になってな―

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え!? …(〃ω〃) ポッ

sikario2.jpg sikario.jpg
そこはいいのかよ! ボーダーわかんねーな!


  

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Posted on 2016/04/20 Wed. 00:02 [edit]

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