素人目線の映画感想ブログ

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アイ・アム・ア・ヒーロー 続編決定はよ! 


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 アイ・アム・ア・ヒーロー
 (2016年 日本映画)  79/100点


原作が好きなので早速観に行きました。
大泉洋が宣伝のためにテレビに出まくって、きっちり笑いをとっている姿を見ていると、ぜひオススメ! と言いたいところなのですが…。凄く見応えのある面と、うーーーんな面がいろいろ混ざり込んでいる、「惜しい」出来だったのです。

本作は、海外ではよく見かける、いわゆる「ゾンビもの」。このジャンルはグロテスクなホラーとして敬遠されがちですが、社会を極限状態にする優れたパニック装置なのです。さらに、人間が変わり果てるので深いドラマを生み出すことも出来ます。個人的に大好きなジャンルです。
原作は、このジャンルを日本を舞台にして本格的に展開させている花沢健吾の傑作コミック。緻密な画と現代日本が破綻するリアルな社会描写が、ゾンビ(のようなもの)の造形の突き抜けたおぞましさと相まって、とても面白いのです。第1巻から読んでいますが、最初から「映画的だなあ」と思っていたので、今回の映画化はとても嬉しく思っていました。

あらすじは、漫画家を目指すがちっとも芽が出ない主人公・鈴木英雄(大泉洋)は、彼女にも愛想を尽かされ、どん詰まりの生活をしている。しかし、突如事件は起きた。日本、いや、恐らく全世界に謎の感染が広まり、人々が次々とゾンビのように変貌していく…というお話。

アイアムア


では。

まずは良い所を!<ここでは、ネタバレは控えめです>

(ちなみに本作ではゾンビを、ZQN(ゾキュン)と呼びます。以下、ZQN)

○日本の日常が壊れる恐怖が凄い。 
同じ系統の映画『ワールド・ウォーZ』もそうでしたが、何気ない日常から急きょ(理由も何もなく)、ZQNパニックが訪れます。冒頭から奇怪なニュース報道などが流れ、若干の前兆はあるとはいえ、かなり唐突です。実は原作では、事件が巻き起こるのは第1巻のラストでした。ただのモテない男のトホホな青春物語くらいに思っていたのが、突然のジャンル変化を果たすので、どえらい衝撃を受けたものです。
本作でもその点は意識されていたように思います。冒頭から何てことない日常が紡がれます。それも、主人公・鈴木英雄(大泉洋)のうだつの上がらない日常です。マンガ家のアシスタントという、登場人物が言うには「無職」も同然の彼は、常に強い自分を妄想しているヘタレキャラ。恋人はいますが、うまくいっていません。こんな日常のすぐ先で、世の中がひっくり返る出来事が勃発するのです。
日本のどこにでもある見慣れたご近所風景が地獄と化していきます。町中のZONがじわりじわりと増え、ついに溢れかえるまでの流れるような映像が面白かった。
そして。
本作の中のネットには、いい加減な憶測やサバイバル情報が溢れます。このネット掲示板の様子は、原作ではもっと細かに読めますが、「勝ち組」と「負け組」の差が、あっという間に更地に変わることを待ち望んでいるような文言が並ぶのです。驚いたのは、3.11の福島原発事故の際の掲示板でも同じ現象が起きたことです。「世の中が壊れる」ことを待ち望んでいるような想いでいっぱいでした。本作の中盤で登場する1人の男は、「これからはニートの時代だ」と歓喜します。窮した現代日本の若者の心の奥底には、確かにこんなテロリズムにも似た衝動が巣食っているのだと思います。ちなみに原作では、説教くさい初老の男が若者にいたぶられる描写がありました。これもまた、社会の崩壊とともに飛び出した若者の本音の憎悪です。老人介護の現場で凄惨な虐待がありますが、今後はもっと増えていくでしょう。人生に不満を抱え、自身の不遇が前の世代に押し付けられた「負の遺産」のせいだと思っている若者は、想像以上に多いですよ。

ということで。
本作のリアリズムは、日本的な日常と、日本社会に根付いたカーストの崩壊にあります。その中で成長し、逆転してやりたいと望む主人公・鈴木英雄の物語。彼は、果たしてヒーローになれるのか。これが本作の根底にあるテーマです。散々海外でやってきたこのジャンルを、あえて今さら日本でやってみるだけの価値があるのです。
『ワールド・ウォーZ』のように、家族を救って、ついでに世界も救おう! などという壮大なカッコ良さは微塵もありません。今の日本の若者に、そんな余裕があるわけないのです。自分が食うのに精一杯。誰が死のうと関係ない。そこには、閉塞感を放置した日本の代償さえ感じるのでした。


○原作通りのおぞましさとグロテスクが凄い。 
本作のZQNは顔つきが極端におぞましい。頭部の一部やら顔半分やらが欠損していたり、膨れ上がったり、黒目が異様な方向に動いたりするので見ていられないほど気持ち悪いです。原作のおぞましさを、かなり忠実に再現しています。人間でない奇妙な動きも不気味です。また、ゾンビものの定番で、生きている時の記憶が残っているという設定が、面白く活かされています口癖を繰り返すのです。感染したタクシー運転手が「(接客は)まごころ~、まごころ~」と言いながら英雄たちに襲いかかる描写がクスっとなります。感染した妻を持つ男の末路も切なくて良かったです。大抵のゾンビ映画と違い、本作のZQNには多様な個性があるのが面白いです。おまけに、一部のZQNは異様に身体能力が増強しています。そのため、中ボスレベルのZQNが時折登場し、おののかせます。
それから、本作がR-15指定であることで分かる通り、描写がかなり残虐です。英雄の猟銃の凶悪さたるや、もの凄いです。ドバー、ブシューのオンパレード。思いっ切りやり遂げていると思いました。ヘタに描写を抑えれば、当然原作ファンから怒られますし。私自身はとりわけグロ描写が好みではないですが、とことんやったるぜ、という制作姿勢が頼もしいのです。もちろん、この手の映画に耐性のない人はビックリするレベルだから、見るのに覚悟は要ります。ただ…際限なく続くので、次第に慣れてくるとは思います。『悪の教典』と違い、相手は人間ではない(まして未成年でもない)ので、まだマシということもあります。

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○アクション描写が凄い。  
前述しましたが、原作第1巻を読んだ時に「映画っぽい」と思ったのは、アクションの描写に見応えがあったからです。さすがに航空機墜落描写は省かれていましたが、韓国で撮影されたというカーアクションは、日本映画にありがちな、「周りに他の車がちっとも走っていない」的なちゃちなものではありません。かなり本格的です。本格的なカーアクションを、日常よく見る日本のタクシーがやらかしてくれているのが、嬉しい新鮮さなのです。ちなみに『ワールド・オブ・ウォーZ』ほどではないにしろ、閉鎖空間で一緒にいた人がZQN化する窮地が恐ろしかったものです。

○大泉洋が凄い。ギャグ要素が面白い。 
設定的に『ショーン・オブ・ザ・デッド』を彷彿とさせますが、そこまで笑いに特化した物語ではありません。けれど、所々で主人公を演じる大泉洋がしっかり笑いを作っていました。「うだつの上がらない」若者は、悲壮な生き物ですが、そこには自虐の笑いが生まれます。というより、せめて笑いにしなければ救われないのですよね。
おまけに、英雄の原作再現具合が抜群です。映画化が決定した時、英雄を誰が演じるのか気になっていました。ダメ男である英雄を、また香取慎吾やら山田孝之あたりがキャスティングされたらイヤだなあと思っていた矢先、大泉洋だと聞いてホっと安心したものです(失礼か)。それでも、細見の印象の大泉洋がどれだけ合っているかなあと思っていましたが、お見事でした。終盤の熱演も凄い。三枚目も二枚目も演じられる稀有な俳優さんです。

ということで。

本作の良さは、映像面がとても頑張っていたことが一番です。
日本映画のアクションもパニックホラーも、ここまで本格的に見せられるのだと思い、それだけでも十分面白い鑑賞になると思います。


が!


やはり日本映画の悪い所は、脚本ではないかと思うのですが…。


<ここからネタバレ全開。鑑賞前には絶対読まないでください>

アイアムア2


なぜ、こんなにも展開に駆け足感を感じるのでしょうか。原作を知っているからでしょうか。英雄とヒロインである比呂美(有村架純)の出会い方もテキトーだし、その後の会話もウジウジしているだけです。そんな十分でない二人の関係描写なので、英雄が「君はオレが守る!」と心に決めることに説得力がありません。
大ネタバレですけど、原作で感じた比呂美感染の衝撃がないのが残念です。だって、全くヒロインに感情移入が出来ていない序盤で、もう感染するから。もちろん、原作のように時間を割けないのは当たり前ですが、それなら原作ほどの「意味」がなかった英雄と彼女のエピソードは外し、最初から英雄と比呂美の関係描写をしていた方が良かったような気がします。大改編になるから相当に冒険ですけど。
その後のショッピングモールでも、整然とシステム化されている要塞と化したモールの描写が薄く、元祖ゾンビ映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』にはあった人々の生活感が感じられません。そのため、そこが実は不穏な空気に支配されていることが明るみになっても、ついにZQNが入り込んできても、「絶望感」を感じないのです。
とりわけ二人目のヒロインである小田(長澤まさみ)以外の女性陣が完全にモブでしかないのは、寂しいものです(これは、原作でもそうだったような…)。ただし、これは女性陣を差別的に扱っている愚連隊のような男たちの酷さを象徴しているような気もしますが。

で、駆け足で進んでいるようでいて、時折ノロいテンポで面白みのない会話が始まったりします。登場人物の過去に何かがあったことを示唆しますが、興味を惹きません。緩急とはいえ、怒涛のアクションの後では落差が激しすぎて、かえって退屈を感じるのです。

終盤の無数のZQNとの対決も、ド派手に猟銃で吹き飛ばしていく最大の見せ場ですが、単調過ぎて驚きました。延々と同じ映像の繰り返しです。しかも、左右からあれだけの勢いで駆けてくるZQN軍団と、撃ち倒していくテンポが、全然合っていないじゃない。古い映画の映像ミスみたい。遠くから走ってくる車が、カットが変わると、全然近づいていないってやつ。窮地を演出したのだと思いますが、とても不自然さを感じました。せっかくの英雄の大活躍なのに、それが気になってノリきれない自分がいたのです。

それと…かなり驚いたのですが…中盤からずっと比呂美が働きません。序盤のあの強さが活かされないの…? まるで有村架純が職場放棄したような印象さえ持ってしまいます。英雄も言っていたように、今が出番だろ! と思ったものです。しつこいラスボスの復活の度、願いのようにそう思いましたが、じっと動かない…。英雄の成長物語が主軸とはいえ、この肩透かし感はひどいです。

で。

最も言いたいことですが、これ、続編ありきですよね? 確かに「前編後編」だのといった映画の作り方は、鑑賞が二度手間になるため、かえって客足を落とすかもと思っていますが、これは「続編ありき」で宣伝していないと、逆に観客は怒らないでしょうか。
確かにこの手の物語は、決着がつかないまま終わる場合が多いです。
それにしたって、伏線と思われる部分が、あまりに放りっぱなしではないでしょうか? この世界にしたって比呂美にしたって、どうなってしまうのか、みんな気になるところでしょう…?

全ての謎は次回で! という続編ありきとしか思えないのに、それを隠して(?)公開することに違和感を感じました。私は原作を知らない観客の様子が気になって仕方なかったものです。案の定、劇場は「ここで終わり?」という空気でした。エンドロール後にまだ何かあるよね…? と普段はとっとと帰るような観客さえ、すぐに立ち上がれないでいた様子でした。
日本映画は、観客の理解力を信用しない説明セリフが悪癖ですが、逆に本作のように置いてけぼりにする不親切さもあって、とても心配になります。

ということで。

なんだかんだ言いましたが、見応えはあるんです。
日本映画として、これほどのサバイバルホラーが観られるなんて、本当に嬉しく思ったのは事実です。
頑張ろうとしても「失敗のイメージ」が繰り返されてしまう英雄が、初めて人に必要とされたことで立ち上がる姿には、日本の再生の息吹さえ感じ取れます。そうこれは、英雄を象徴とした、失墜の現代日本が復活するヒントが散りばめられた、全ての日本国民鑑賞必須の物語でもあるのです。見なきゃダメだ! そう、とにかくヒットしてもらって、放ったままの謎を明らかにする続編を作ってもらわないとダメなんだって!

アイアムア4


    

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Posted on 2016/04/24 Sun. 23:51 [edit]

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