素人目線の映画感想ブログ

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レヴェナント:蘇りし者 全てが野蛮で、美しい。 


 レヴェナント
 レヴェナント:蘇りし者
 (2016年 アメリカ映画)  90/100点


それにしても。
ぬいぐるみだの、マスコットキャラクターだの、「熊」ってのは、一体なぜ愛玩動物のように誤った使われ方をするのでしょうか。
子どもが勘違いしたらどうするんだろうか。
熊さん、熊さん…って。
気をつけろっ。
テッドの野郎は、きっとギラついた闘争本能をひた隠し、夜な夜な爪を研いでいるに違いない。熊のプーさん…こいつは裏じゃ営業用のはちみつの壺を置き、生肉食い漁っているに決まってる。別れ際を間違うと、梨園のプリンスのようにマスコミにいろいろ流されるぞ! それは、熊切あさ美でした。

本作でディカプリオを襲う「熊さん」の獰猛さを見て、あまりの壮絶な描写にしばし茫然。上記のような現実逃避な思念が頭の中をはらはらと舞ったのです。
地鳴りのような咆哮。いとも簡単に肉を割く巨大な爪。逆に、人をぬいぐるみのようになぶる強大な力。
一気にやらず、遊んでいるようにじわじわ痛めつける残酷さも寒気がするほど恐ろしいです。この、思わず息を殺したくなるような熊との死闘の場面は、今まで見たことのない衝撃映像だと断言します。
ついでに言うと…毛並みのモフモフ感が愛らしくって、くるまれたくなるほど。(なおも現実逃避中)

あらすじは、1820年代のアメリカ。息子を連れてヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)が加わっていた狩猟チームはネイティブ・アメリカンに襲われる。生き残った者たちで山の中を進むのだが、先を偵察していたグラスは突然、大きな熊と出くわし、瀕死の傷を負ってしまう。仲間たちは、当初はグラスを運ぶが、急傾斜の山道が立ちはだかる。隊長はやむなく連れ帰ることを断念し、ジョン(トム・ハーディ)という男に最期まで面倒をみるよう命令する。しかし、ジョンはグラスを敵視していて…というお話。


<極力、ネタバレを控えています>

れヴぇ3


上記、「熊」のシーンのみならず、本作には目を剥く映像がこれでもかと続きます。
3年連続でアカデミー撮影賞を獲得したエマニュエル・ルベツキの神業の手腕と、ノリに乗っているアレハンドロ・G・イリャニトゥ監督の執念の剛腕が融合して生み出した、渾身の力作。必見です。

冒頭から始まる原住民と狩猟チームとの戦闘シーンは、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でもあった擬似ワンカットで撮影され、カメラが追いかける人物を次々に変えていく不思議な映像です。これによって臨場感が半端なく、観客と戦場の距離を一気に近づけます。さらには、いつ誰を襲うか分からない狂暴な矢が飛び交い、目を伏せたくなるほどの恐怖を駆り立てます。

そして、命からがら逃げ出した一向に立ちはだかるのは、果てしないと思えるほど壮大に広がる大自然でした。

ここから始まる風景描写が極めて美しく、そして時折、幻惑的に映し出されます。
これには、『ツリー・オブ・ライフ 』にも似た荘厳さを感じました。そこに、まるで神が鎮座しているかのような原風景を見たのです。
本作には、宗教的な側面があると言われますが、大自然そのものが、すなわち「神」なのではないでしょうか。グラスの仇であるジョンは、「神は与えもし、奪いもする」と言いました。それはまさに、グラスやその他の人間たちに癒しと食料を与えながら、その実、容赦なく命を削ろうとする、まさに「自然」のことだと思うのです。

その自然がたたえる気まぐれような愛情と無情に巻かれながら、熊に深手を負わされていたグラスは、息子の命を奪ったジョンへの復讐のために復活を果たします。
ジョンが向かっているであろう300キロ先の要塞を目指し、必死に這い出すのです。これは、福岡から広島ほどの距離です。その距離も無謀ですが、極寒を、食べ物もろくにない中、いつ襲われるかわからない原住民の追手にも気を払わねばなりません。復讐どころか、生き延びる事さえ困難なのです。
しかし、驚くべきことに、次第にグラスは立ち上がれるまでになります。
これは、グラスが立った! グラスが立った! と騒ぎたくなるほどの奇跡です。正直言うと、なんだ、治るんか!? と思ったものですが、腹の底から煮えたぎる復讐心があってこその奇跡なのだと思います。

レヴェナント5


そのまま、怒涛のサバイバルが続きます。
風をしのいだり、火をつけたりする行為の一つ一つが、今にも消え入りそうな命をつなぎます。血だらけの肉や生きた魚にかじりつき、必死に生を手繰り寄せます。ぼおっとして観ている我々にツバを吐きかけるような猛々しさが、2時間30分以上におよぶ上映時間中、一時も目を離すことを許さないのです。

ちなみに。
途中で、ある一人の原住民に助けられ、ほんの束の間、グラスの表情に笑みがこぼれる様子に安心しました。この原住民がとても良い人なんです。なんか芸人の永野に似ているんです。にやっとした笑顔が酷似なんです。ミディアムよりレアよりナマ肉がすきなんです。それだけに、その先に訪れる出来事がショックでした。怒りを覚えました。

ここに映し出される全ては…人も熊も、自然も、世界自体が何もかも、野蛮です。グラスだって、生き延びるためとはいえ、人を殺します。しかし、グラスが息子を慈しむ心には美しさがあります。熊だって、思えばグラスが小熊に銃を向けたから襲いかかりました。残酷に思える原住民のリーダーも、さらわれた娘を探すことに必死でした。「憎しみ」と「家族への愛」が、本作では表裏一体で描かれているのです。

そして、たび重なる生と死の狭間で、グラスは深遠なる情景を見ます。妻の顔さえ思い出せないと嘆くチームの隊長とは裏腹に、かつて失った妻の姿を見るのです。この凄惨な復讐劇の先、たどり着いた境地で彼を待っていたものは、果たして神か、そして救いか。

レヴェナント4


それにしても。

本作でようやくアカデミー主演男優賞を獲得したディカプリオは、誰にも文句が言えない(言いにくい)ほどの熱量で演じています。途中から熊に喉をやられるため、ほとんどセリフがありません。その分、唾液魂を絞り出したような全身と顔面の表現が素晴らしいものです。しかし、ちょっと言うと…(以下、ラストに触れるので反転しますが)彼から滲み出る「今度こそ」というオーラが、時に引いた感想をもたらしやすいのもまた事実です。ラストカットで彼がカメラ目線になった時、「どうだい!?」と心の中で勝手にナレーションが浮かんできて、せっかくの場面でちょっと吹いてしまいました。なかなか賞を与えられなかった彼は、本当に気の毒だったと思います。それだけに、ようやく重たい荷を降ろすことができたのではないでしょうか。これからは、肩肘張らないサラリとした役柄も演じてほしいと思います。

とにかく。

圧巻の映像・演出・演技・音楽。全てがこれ以上望むべくもない高みに到達しています。これは、ぜひ劇場で観るべき映画なのです。


オマケで。


『熊VSディカプリオ』

レヴェナント1
あっ! く、ク、ク―

くま2
ただいま、映像が一時中断しております。しばらくお待ちください。

レヴェナント3
父さん! 一体何があったの!?
…グゴオオオウ…(気を付けろ、クマだ。クマにやられたんだっ)

テッド
オレ見てたけどさあ。こいつ自分で転んで、ガケから落ちたぜ。

レヴェナント2
グウウウヌウ…!オウオウウウウウ!

くま
ウウ…別れ話なんてしてないですぅ~。ホントです、ヒドいですぅ。

reve2.png
(死んだふり…)

結論:熊は怖い。


  

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Posted on 2016/05/02 Mon. 19:00 [edit]

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02

コメント

 

タイチさん、こんにちは
ほんとあの熊、、はトラウマになる怖さでした。
しかしすごいもの見せてくれました。
脚本、演技、撮影、音楽が一番高みのところにいる映画というかんじでした。
これでオスカー取れなければ、俺、二度と賞レースに参加せん!と言ってもおかしくないくらいのレオの素晴らしい演技でした。

URL | ゆーまる #- | 2016/05/08 15:29 | edit

ゆーまるさんへ 

コメントありがとうございます。

強烈でしたね。『ライフオブパイ』のトラも、CGでの凄い再現度でしたけど、
本作の熊はそれを凌ぐ恐怖でした。
のしのし近寄って、ディカプリアが銃をぶっ放した瞬間に
「何しやがんだ!」とばかり怒り心頭で突っ込んでくる時の恐怖たるや。
もしクマデミー賞があったら、熊に主演男優賞(オス?)を与えるということを、
意地悪なオスカー会員がしたかもしれません。

いやあ、良かった。他人事ながら、安心しました。
ディカプリオ、逆に燃え尽きないといいけれど。

URL | タイチ #- | 2016/05/08 21:30 | edit

 

タイチさん、こんばんわ。
映画館で見逃したレヴェナント、ようやくDVDが出たので観ました!

♬あるぅひぃ〜もりのなかぁ〜くまさんにぃ〜であぁ。。。。

ぎゃーーーーー((((;゚Д゚)))))))

夜部屋を真っ暗にして観てたんですけど、手で顔を覆って指の隙間から見る事十数回。。怖かったぁ。それにしてもレオナルドディカプリオ、ここまでやらないとアカデミー賞は取れないのか⁉︎と思ったけど、獲れて良かった。本当に良かった。(ちなみにうちのワンコの名前は彼にちなんでレオです)
それにしても凄い映画でしたね。グラスってば、熊に襲われ仲間に見捨てられ、先住民族に襲われ崖から落ちて、復讐しに行ってブズブス刺されて。少なくとも5回は死んでるハズ。人間の自然治癒力ってすごいな。。なんて妙なところで生きる勇気をもらいました。

キャナルは色んな劇場があるんですね。お食事しながら映画鑑賞って不思議な感じだけど1度行ってみたいかもです(^^)

URL | ももたろう #- | 2016/08/29 23:11 | edit

ももたろう 様 

こんにちは!
コメントありがとうございます。

レオの生きる執念と賞取りたい執念が混合して、ものすごい化学反応でした。
賞のためなら、オレは何度でも蘇ってやる! という…。

クマさんは、本当に怖いです。レオが銃をぶっぱなしても怯むことなく、
逆に、「何すんじゃ、ゴルァァァぁ(# ゚Д゚)」と突進してくるのが、
恐ろしい。

ディカプリオが好きなんですね。
マッチョな役柄が多くなった最近よりも、『ギルバート・グレイプ』とか、
昔の繊細そうな少年の頃が良かったように思ったりします。

食事しながら映画…想像つかないんですよねえ。
ながら鑑賞でしょう?
謎なんです。お客入っているのかなあ…。

URL | タイチ #- | 2016/08/30 13:05 | edit

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