素人目線の映画感想ブログ

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海街diary /こんな四姉妹は日本の田舎にいない説 


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 海街diary
 (2015年 日本映画)  80/100点


本作を撮った是枝裕和監督の『歩いても歩いても』が好きなんですけど、その作品の大きな特徴は、何も起きないことです。ドラマティックなことがほとんど起きない。久しぶりに家族を連れて田舎に帰るっていう、フツーのことを描いているだけなのに、なんだか猛烈な吸引力があるのが不思議です。たまにギクっとする場面はあるものの、何か人間関係の中にただならぬものがあるなあ…と匂わせるだけ。

本作もそうだろう…、と思っていたんです。
で、確かにそうなんです。
ドラマが起きるようで、起きない。
お、いよいよドラマが動き出すのかなあ…、と思わせても、大したことは起きません。起きても、淡々とした描写です。
でも、この押し付けない演出がなんとも心地良いです。他人の人生をぼんやり眺めている感じだけど、知らぬ間に微笑んでしまっていそうな…、そんな映画なのです。

あらすじは、鎌倉の古い民家に住む三人姉妹の元に、母親が異なる末っ子が転がり込む。末っ子は自分の母親が三姉妹から父親を奪ったと、罪悪感のようなものを感じていた…というお話。

本作は、世間から高い評価をされています。大抵のブログでは絶賛の嵐です。しかし反面、批判も見受けられます。その理由の先鋒が、「こんな美人姉妹が田舎にいるかよ!」という身も蓋もない突っ込みです。

では、その四人姉妹を誰が演じているのかと言いますと。

ウミマチ
長女:綾瀬はるか
次女:長澤まさみ
三女:夏帆
末っ子:広瀬すず


なるほど。
彼女たちを、ファンタスティック・フォーと名付けたい。

時折キャメラワークは、この四人の美しさをクローズアップするように撮られます。それは、表情のみならず、足元やら鎖骨やらいろいろです。次女・長澤まさみにいたっては、冒頭、素足のアップから入り、その後下着姿まで出てくるのでびっくりです。
実に、あざといのなんの。
そりゃあ、これだけの美女を揃えたなら、そうせざるを得ないのでしょう。
確かに、派手な演出を控えた作風の中で、これらは観客が退屈しないための要素になっているのは確かだし、それが「悪」かと言われれば、そうとは言い切れません。

ただ。

本作が、他の是枝監督作品と同じように、やはり「日常を紡ぐ」ものであるからこそ、何だか釈然としない思いが巡るのも確かなのです。美人過ぎてリアリティーがない…。

とはいっても、そこは是枝監督。役者さんたちの演技力の引き出し方は抜群で、四人のセリフの掛け合いは嬉しくなるほど自然体です。美人批判が出るのは百も承知のごとく。その代わり、ここまで演技力を引き出したんだから文句言うなよ、という声が聞こえてくるような。

特に印象的だったのは、次女である佳乃役の長澤まさみです。
実にフツーに、「女臭い女」を演じていました。男にだらしなく、酒好き…かといって、過剰に色っぽいわけでもなく、ホントに親戚にいそうな、ちょっと大人っぽいお姉ちゃんの枠をしっかり守っていたのです。かつてアイドル俳優だった彼女が、こうも脱皮して「普通の女」を演じているのが、頼もしいとさえ思います。
長女である幸役の綾瀬はるかも、いつもの従順で天然なキャラクターはなりを潜め、本作では、妹たちの面倒をしっかり見ている「頼れる長女」を違和感なく演じていて、その変貌に感心します。
三女である千佳役の夏帆もまた、自由気ままそうでいて、実は「空気を読む姉妹間のバランサー」をひっそり演じているのが、好印象です。

ただ…

これまた、個人的な感想でしかありませんが、実のところ、「姉たちに気後れを感じている末っ子」であるすず役の広瀬すずが、ちょっと苦手。
この子にだけは、異質なものを感じたのです。良く言えば…、美女過ぎて。
ぽってりとした唇に、きらきらと潤った瞳。ちょっと困った風な顔つき。これは…、まるで日本のクロエ・グレース・モレッツか。

そのため、その表情からは、ちはやぶってやる…という「野心」をどうしてもぬぐえません(個人的な感想)。
おまけに、周りの学生が極めて「フツー」だから、彼女のオーラが際立って仕方ないのです。すずの役は、普通の顔つきであってほしかった。まえだまえだの弟が演じる、すずの同級生と付き合っていると噂が立った時、ああ…本当はすずは、鼻で笑っているのではないだろうかと、妙に不安を覚えました(個人的な感想)。
髪の毛がやたら顔にかかるのも、桜を見上げて目を閉じるのも、まるでPVのようです。予告編にある、扇風機の前でバスタオルをめくってみせる場面にも、「天真爛漫」ではなく、「虎視眈々」を感じます(個人的な感想)。

ウミマチ3


それはもう、いいとして。

凄かったのは、脇を固めるベテラン陣です。

大竹しのぶ
「だってしょうがないじゃない…」の言い回しのたるさは、世界一です。

樹木希林
「あんたたちのお父さんを取った人の娘よぉ…」 静かな一言のえぐる鋭利さ。

堤真一
幸に見せる、優しくて優柔不断そうな笑顔のあまーい中毒性。

加瀬亮
ヤサ男風なのに、静的な動作から漂うほのかな渋みとインテリジェンスの魅力。

風吹ジュン
本当に病気ではないかと心配になるほどの儚い表情。

リリーフランキー
巧みに方言丸出しで、どう転んでもいいようにしか見えない狡猾さ。

それぞれ登場シーンは多くないし、前述した通りドラマチックでもない本作なのに、強烈な爪痕を残します。泣き叫んだり、とうとうと説明的に語ったりしないのに。
自然体ばっちりの芝居は、英語が分からない海外映画では味わえないから、邦画ならではの醍醐味です。

ウミマチ5


<ここから、結末に触れます。>


何も起きないとは言いましたが、本当はいろいろなことが起きています。
主軸はすずの成長であり、四人姉妹の結束です。
その過程で、幸の不倫や母との喧嘩があったり、佳乃の失恋や新しい職場での出来事があったり、姉妹同士のいがみ合いがあったり、すずの本音爆発があったり。
それらが大きなうねりを作る事はありませんが、退屈することもありません。(若干花火の辺りは、だれましたけど)

ただし。

基本的に良い人だらけ。
という本作の特徴が、時折むず痒くなる時もあります。仲の良い姉妹描写が、変に気を遣い合っているだけのような心地悪さを感じたのです。
そう。
みんな、すずに優し過ぎるように思うのです。
もちろん、父親を看取り、意地悪なママハハから逃げてきたすずに気を遣うのは分かります。だから、すずには何か子供らしいヘマや悪さをしてほしかったと思ったりしました。良い子過ぎて物足りないのです。反抗期を見せてほしかったかなあ。そこでお姉ちゃんたちがヤキ(叱責)を入れることで、さらに家族になっていくような感じで。
それこそが、本当の兄弟・姉妹のような気がします。
本作の結末は、四人がしっかり姉妹になる様子で幕を閉じますが、まだまだスタートラインのような気がしたのです。

ウミマチ4


それから。

もう一つ不満を言うと。
幸が不倫相手の男と海外へ行かず、姉妹の元に居続けることを決めるのも、ありきたりな家族ドラマのように思いました。
彼女たちは、いつまで田舎の民家に籠り続けるのでしょうか。
それが、正しいことなのでしょうか。私は、今まで妹たちに尽くし、大叔母が言うように婚期を逃してきた幸には、一番に家を飛び出してほしいと思ったのです。もしくは、妹たちが背中を押して、「行っておいで!」と言ってほしかったのです。そもそも幸は、佳乃の指摘のように、家を捨てた母への恨みがましい想いから、当てつけのように家を守っている節があります。その呪縛から解き放たれた結末が見たかった。

無論、付いていくことが幸せだと決めつけられません。それに、人生を普遍的に考えるなら、人は結局冒険できず、元の鞘に収まるものかもしれませんが。

それでも。

母と同じように不倫に走る幸は、母と同じ境遇であるからこそ、母の気持ちを一番に知っています。終盤での「お母さんのバカ!」という幸の叫びは、母に似た自分への非難でもあり、母のように自由にできない自分への歯がゆさでもあるのかもしれません。
だから、幸には我慢をしてほしくないな…、と思うのです。
それに。
この先、姉妹の誰かが家を飛び出そうとした時、「私は家に残ったのに!」と、独善的な面を持つ幸が、足枷になりはしないだろうかと心配にもなります。

自然体の中に滲む、四人姉妹の不自然な「美しさ」に、やはり、一抹の不協和を感じずにはいられません。


    

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Posted on 2016/05/14 Sat. 21:02 [edit]

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コメント

初コメです。 

原作ファンで映画は未見です(笑)

身も蓋もない言い方をすれば、長女は不倫相手との別離後、末っ子のサッカーコーチといい感じになってるので、妹が嫁に行ってもやさぐれる心配はないと思いますw
原作ファンからいうと、映画としての尺は全然足らないと思うんですよねー。未完だし。大人の事情なんでしょうが、なんでこんな中途半端なとこで映画化しちゃったのかなーと未だに感じてて観る勇気が無いです。キャストは悪くないだけに。
原作厨じゃ無かったら、予告での次女の食卓の立膝とかにもイラッとせずに、素直に観る気になったのかも知れませんw





URL | リア #- | 2016/05/15 00:38 | edit

リア様 

コメントありがとうございます。

私は原作は未見ですので、教えて頂いて嬉しいです。
そうですか、幸には次の出会いがあるわけですね。それは良かったです。
幸は、映画では、「まっすぐ過ぎる」様子があって、
自分の考えこそ正義という側面を感じます。
妹たちに対し、「支配的」になってしまったら、
この姉妹にはいずれ亀裂が入ると感じたのでした。

原作が好きな人にとっては、いろいろと疑問が残る映画化かもしれませんね。
もし映画を観られたら、映画に足りなかったことなど、また教えてください。

URL | タイチ #- | 2016/05/15 12:02 | edit

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