素人目線の映画感想ブログ

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ブレードランナー 人間を越え、人造の魂は到達した。 


 ブレードランナー
 ブレードランナー
 (2015年 アメリカ映画)  80/100点


「リメイクされることだし、今の内にオリジナルを鑑賞しておこう」シリーズです。
前回の『ゴーストバスターズ』はおさらい鑑賞でしたが、今回は初めての鑑賞。
こんな大御所のSF映画を見ていなかったとは、何とも恥ずかしい素人目線ですが、随分と過去に見ようとしたことがあるんです。けれど、本作がのっけから放つ、思いがけない「暗み」に怖じ気づき…いったん鑑賞を断念していたのでした。

それほど、本作は実に退廃的で物悲しく、そして極めて哲学深いSF映画です。「スターウォーズ」のような華やかな娯楽SFとは違うのです。『マトリックス』は、押井守の『攻殻機動隊』に影響を受けていますが、その『攻殻―』とその続編『イノセンス』は、間違いなく本作に影響を与えられまくっています。
つまり、この世界観の元祖と呼ばれるサイバーパンク映画の先駆け的、記念碑的なSF映画なのです。

物語は、結構ローペースで進みます。ムードを重視した描写は実にゆったりした感じで、ひょっとすると、人によっては退屈を感じるかもしれません。しかし、人によっては、癖になるような味わいがゆっくりと広がっていくスルメのような映画でもあるのです。

そして、極めてアジアチックな世界観に驚きます。特に、奇妙なほど日本色が濃いです。街の大型ビジョンに映し出される芸者と「強力わかもと」の広告。街に響き渡る日本風の音楽。時折聞こえてくる日本語。ただし、街の看板にあふれる奇妙な日本語を見たり、上流階級の人間は、もはや地球に住んでいないという設定だと聞いたりすると、ちょっと複雑な心境にもなります。外国の人からすれば、随分エキゾチックで魅惑的な設定なのかもしれません。当事者からすると…やや腰が砕ける部分です。

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しかし、そこを差し引いても、この世界観はやはり魅力的です。
超未来風な遠景の中身は、意外にも現代と違わぬクラシックな風景が占めています。
古めかしい警察署やグランドピアノが置かれた部屋の内装、ボロアパートの造形、冒頭に出てくる屋台、TOKYOの風景を模したという雑多な街並み。これらが、混沌とした風情を後押しし、息の詰まるような階級社会の抑圧まで感じさせるのです。
ブラウン管のモニターや蛍光灯、この世界ではそっちに発展したかーと苦笑してしまう公衆テレビ電話など。今となっては古臭く感じる未来絵図が、かえって無秩序な荒廃を際立たせているように感じました。

未来って素敵。そんな様子は微塵も感じられません。
時は2019年設定だそうですから、実際の現代に比べ、ここはおかしな方向へ発展したパラレルワールドなのです。
やろうこの世界のドラえもんは、たぶんこんな感じ。


この、今にも秩序が溶解しそうな不安定な舞台で語られるのは、切ない人造人間の物語。
あらすじは、「過酷な労働を強いられていたレプリカントと呼ばれる人造人間たちが逃げ出し、地球にやってきた。かつてレプリカントの抹殺を仕事としていたデッカード(ハリソン・フォード)は、引退していたにも関わらず、再び職務を命じられる。捜査を始めたデッカードは、レプリカントの生みの親であるタイレル博士を訪ねる。そこで、不思議な雰囲気を醸すレイチェルという女と出会う。女の正体は? そして、レプリカントたちの目的とは?」という物語。

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<ネタバレ全開です。>


前述のように、一度目の鑑賞を断念させたほど、物語は「暗い」です。それは、SFというよりも、探偵ノワールの暗みです。もちろん、カルト的な人気を誇る本作ですから、そこに漂う渋味を感じ取ることが出来れば、自分の映画史に残るほどの印象を打ち込まれるかもしれません。
それにしても、映像まで暗いです。描かれる時間は夜が多く、昼間でも薄暗く、そして雨が常に降り注いでいます。町中で平然と工場の煙突が炎を噴出しているせいかもしれません。
そして、驚くことに!
登場人物たちの部屋まで、めっちゃ暗いです。
電気を付けましょうよ! ナショナルだったら黙ってませんよ!(古い)
そんな中、街頭広告は際限なく光を放っています。穴倉のネズミのように、こっそりと息を潜めている住人の部屋に向かって、それらの光が、まるでサブリミナルのように何度も部屋に差し込みます。商品の買い手を無神経にあぶりだそうとしているかのようです。この広告描写は、資本主義への批判のようにも感じられるのです。

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さて。

主人公であるデッカードは、地道に捜査を進め、レプリカントを追います。
空間全てを記録しているという「未来の写真技術」で、デッカードは手がかりの画像を口頭で操ります。パシャ、パシャ、パシャと、巧みに写真の中に迫っていく描写がカッコイイです。それにしても、唐突に未来チックな道具が登場するもので戸惑いました。やはり本作では、「空間記録カメラ~(テッテケテッテッテー)」などと高らかに宣言するような煽りなどゼロなのです。
それにしても。
一人、また一人とレプリカントを抹殺していくデッカードは、ただの横暴な人間のようにも見えます。レプリカントとはいえ、逃げる女を後ろから撃ち抜く姿は、完全に悪人です。恋人となるレイチェルへの迫り方も、「キスしてと言え」、「抱いてと言え」…と異様にオラオラ系です。案の定、レイチェル役の女優さんは、あまりにハリソン・フォードが乱暴なので怒り出したといいます。
面白いことに。
そんな人間臭い暴虐さを抱えたデッカードに対し、レプリカントたちには、情愛深い様子が見て取れます。仲間の死を悲しんだり、愛らしい慰安用レプリカントのプリスと、リーダー格であるロイの間には、愛情とも呼べる感情があったりします。もちろん、残虐性も認められる彼らですが、天才であるタイレル博士にチェスで勝利するなど、腕力だけでなく、あらゆる面で人間を越えているようなのです。そしてあろうことか、ロイはさらなる精神面の進化を続けていきます。

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そう。
本作の優れている点は、最終的にロイが、倫理面で人間を越えるところにあります。
追い詰めたはずのデッカードを救い、「命の大切さ」を説くロイに、命を慈しむ美しい心を見たのです。
それは、レプリカントが創造主である人間を完全に越えた瞬間でした。『ターミネーター』の人工知能のような「悪」としての進化ではなく、本作のレプリカントは、「友愛の心」で人を圧倒したのです。詩情を独白し、残酷にも4年の寿命が尽きたロイの前に佇むデッカードの間抜けヅラといったら! それはまるで、女優さんと仲違いしているハリソン・フォードそのもの。

dora2.jpgまさに、ドラ氏にも匹敵する悟りロボットなのです。


素晴らしい展開だと思います。本作が人気を誇る理由が、ストンと腑に落ちました。
(とはいえ、ロイがタイレル社の技師・セバスチャンを殺してしまうのは、物語として筋が合いません。これには、ロイ役のルトガー・ハウアーもクレームを付けたと言います)

ところで。

本作を観たことがなかった私でも、聞いたことのある本作最大の有名な謎があります。それは、デッカードの正体です。
彼もまたレプリカントではないか、との議論を本作は巻き起こしました。
デッカードは、物語途中でユニコーンの夢を見ます。彼を監視しているように不気味に現れる警察官・ガフは、ユニコーンの折り紙をデッカードの住居の床に残していました。レイチェルがそうであったように、レプリカントは虚偽の記憶を埋め込まれている場合があります。デッカードにとってはそれが「ユニコーンの夢」であり、それをガフが知っていることで、この謎が提示されたのです。深まる謎・・・果たしてどちらが真実なのか議論が尽きないと…ころ…、すみません、監督のリドリースコットが「そういう設定だよ」と明言しちゃいました。監督、そこはもやもやさせといた方が盛り上がるんで、ちょっと野暮です。
ハリソン・フォードは、デッカード=レプリカント設定に反対したそうですが、操縦していたセスナが落ちても平然と映画に出ているあんたなら、あり得る話だから。

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さてさて。

本作には、なんと5つものバージョンが存在します。
私は最初、82年のオリジナル公開版を観ました。そのラストは、明るい未来に向かってデッカードとレイチェルがドライブしているハッピーエンドで終わります。その後のインターナショナル版以降では、そのラストはカットされています。確かに、前述のようにロイに立場を喰われたデッカードが、ノーテンキに愛の逃避行をしているのは、あまりにも、キャリスタ・フロックハートを射止めたハリソンのまんま過ぎるじゃありませんか。(羨ましい…)
だもんで、私は個人的に、唐突に謎と余韻を残して終わらせるインターナショナル版以降が好きです。

それにしても。

このバージョンの多さが、本作の制作や公開の過程での難儀を想像させます。観る側からすれば、どれを選べばいいのか戸惑います。「二つで十分ですよ」と言いたいくらいです。
人にいいように翻弄された本作は、まるで記憶をいじられたレプリカントです。そして、レプリカントが最後に素晴らしい進化を遂げたように、2018年1月公開予定のリメイク版も、さらに素晴らしい映画に昇華することを期待します。

おっと、なんか、まとまったようなところで。本日はここまでで。


    

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Posted on 2016/06/09 Thu. 23:59 [edit]

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