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ヴィクトリア【感想・レビュー】これは、人間ピタゴラスイッチ。 


 VIKUTORIA.jpg
 ヴィクトリア
 (2015年 ドイツ映画)  
 89/100点



最近、舞台にはまってます。今は、大泉洋が所属するTEAM NACSの舞台を主に観ているところです。

映画と違う舞台の凄さは、何といっても、二時間以上もの上演時間中、ノンストップで役者が芝居を続けるところにあると思います。よく長セリフを覚えられるなあ…、複雑な段取りをこなせるなあ…と、感心しきりなのです。

で。

実は、本作の凄さもそこにあります。何と、140分間「ワンカット」

「ワンカット」とは、140分間始まりから終わりまで、ずうううううっとカメラを止めないということです。舞台と同じように、役者が演技を続けます。

ただし、本作ならではの凄さがあります。本作は、ワンシチュエーションではなく、場面が、クラブからビルの屋上、カフェ、地下駐車場、銀行、アパート、ホテルと、めくるめく展開していくのです。

つまり、登場人物たちは街中を、徒歩や自転車、車移動で実際に移動し、それをずっとカメラがリアルタイムで追いかけているわけです。

街をまるごと貸し切っているのか…?

人気のない田舎町というわけではありません。そこそこ都会だからなおさら不思議。おまけに、途中でマフィアやら警官やら、登場人物は無尽蔵に増えていくし、逃亡劇はあるし、銃撃戦はあるし。ドラマチックで複雑なカメラワークはあるし。

一度もNGが許されない「ワンカット」の割には、仕掛けが大がかりで驚きます。「ど、どーやって撮ってるの!?」と不思議でしょうがなかったです。

(ちなみに、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』も最初から最後までワンカットでしたが、あちらはCGを使った疑似ワンカット。こちらは本物のワンカットです。)

ヴィクトリア


ワンカットでやってしまおうと決めた時は、監督も役者も、まるで映画研究会の大学生のようなノリだったんじゃないでしょうか。「やろーぜ、おもしれーじゃん」という熱い意気込みが、画面からほとばしってきてワクワクしました。

ということで。

本作の醍醐味はその一点。

マジでワンカットじゃん…という点に感激できるかどうかで、本作にノレるかノレないかが決まるでしょう。映画は技巧よりもストーリーだと思っている人には向かないかもしれません。ストーリーは、それこそ学生映画レベルの単純さです。

あらすじは、「スペインからドイツに移住してきたばかりのヴィクトリア(ライアン・コスタ)は、クラブからの帰路でゾンネ(フレデリック・ラウ)ら4人の若者と出会う。寂しさを埋めるかのようにヴィクトリアは男たちと過ごすが、やがて男たちの危ない企てに巻き込まれることになる」…という物語。
何度も言いますが、リアルタイムに140分間の出来事。ジャク・バウアー風に言うと、「これは、午前4時頃から明け方6時頃までの出来事である…」

ヴィクトリア4
↑本作のジャックアバウアーこと、やや老け顔のゾンネ。
「本当に…すまないと思っている」と言ったとかいないとか。


リアルタイムだからこそ、ドキュメンタリーのような臨場感がすごいものです。

地味に、序盤の飲み会の雰囲気がリアルです。クラブを出てからビルの屋上に上がったり、ヴィクトリアのカフェに行ってみたり…。深夜徘徊の醍醐味を感じさせます。

ただ逆に、そこでは特に事件が起きないもので、退屈でもあります。ハンドルキーパーの役目を負わされているかのような、「お前らは飲めていいな、おい」という疎外感が若干あるかな…。

ヴィクトリア3


そんな感じで、ちょっとダレてきた中盤(序盤40分くらい退屈かな…)で、ようやく事件が勃発します。

そこからは急転直下。休む暇もなく、どんどん物語は加速していくのです。

前述の通り、車で次の舞台へと移ります。移動中も、もちろん時間は途切れません。そのためか、移動距離はやけに短いです。走っていけるぐらいの距離ですね。まあ…、ここはご愛敬。

終盤のクラブでのダンスシーンや、銃撃戦には度肝を抜かれました。ワンカットなのに遠慮なく役者は動き回り、そしてカメラも激しく動きます。しかし、乱雑に見える中で、カメラは的確に役者を捉えています。

これは…凄いよね…。よくやりきったよなあ…。最初から最後まで、きっちり計画され、計算され、寸分も間違いなく進んでいく。

これ…、まるでピタゴラスイッチです。140分間続く、壮大な「人間ピタゴラスイッチ」なのです。

ラストカットの右端に、「NHK」の文字が見えそうでしたよ!(嘘)

ただし、物語には気になる点がないこともないです。ヴィクトリアが、男たちのあまりに危険な冒険にまんまと付いていくのが不自然でした。普通なら…、「バッカじゃねーの!? 仕事あんだよ、ねみーよ!」とぷんすかして帰るとこですからね。男たちの一人・ゾンネに恋をしたのでしょうけど。…まあ…、だから仕方ないけど…、そうねえ…。あのお、ゾンネ、何かおっさん顔じゃん?(関係ないけど)

ヴィクトリア2


それにしても。

カメラを持って役者と一緒に動き回ったカメラマンが、実は一番凄いかもしれません。映画のエンドクレジットも、カメラマンの名前から始まります。

役者は、ある程度のトラブルはアドリブでしのげます。実際、本物の酔っ払いに絡まれたシーンがありますが、巧い機転をきかしてました。また、車での逃走場面では走行ルートを間違えてもいるそうです。それも、上手に対処してましたね。

しかし、カメラマンは失敗が許されません。ちょっと躓くことさえ厳禁です。激しいカメラワークの段取りもミリ単位で間違えられません。痒くてもかけないし、くしゃみも出来ないし、そのうえ歯も磨けないのです(当たり前)。

映画の終わりには、本当に拍手喝さいしたくなる気持ちでした。

それと、『バードマン』の時にも思いましたが、こういう映画こそ、3Dで見たいものです。役者と一緒に動いて回れる、広大な「舞台劇」を見ている気になれるんじゃないでしょうか。…どうかな?


 

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Posted on 2016/10/12 Wed. 20:00 [edit]

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