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ルーム 親になったからこそ、闘えた。 


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 (2015年 アメリカ映画)  90/100点


だいぶ更新が途絶えましたが、ようやく再開…、で年内最後です。

さあ。

年内最後の本作は、本年のアカデミー作品賞ノミネートの傑作。

物語の設定は、信じがたいほど過酷なものです。

あらすじは、「主人公のジョイ(ブリー・ラーソン)は17歳の頃、知らない男に監禁される。そして2年後、監禁したその男の子供を出産する。その子は、生まれてずっと監禁部屋しか世界を知らない。そして5歳になったある日、彼女はついに息子と脱出するのだが…」という物語。

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そもそも、時折こういう監禁事件が実際に起きていることが信じがたいです。おまけに、本作は実際の事件(フリッツル事件)を下敷きにしていますが、実際の事件の方がはるかにおぞましいのだから、事実は小説より恐ろしいのです。

ただし、本作はこの「監禁事件」を中心に描きません。そのため、監禁事件とはいえ、そこまで陰残な描写ではありませんでした。さらに、結果として親子が救出されることが事前に分かっているから、何とか序盤の監禁場面は安心して見ることが出来ます。

本作の主軸は、「監禁事件後」にあるのです。

序盤は、監禁部屋での親子の生活だけが描かれます。
監禁されているとはいえ、生活用品は男から支給され、通常の生活空間と変わりません(キッチンも風呂もベッドもあり、意外に充実している)。それもあり、ジョイは息子に決して「監禁」の事実は告げず、外の世界はないものとして生活をさせていました。ジョイのその努力のおかげで、息子のジャックは、その監禁部屋での生活に恐れを抱くことも、つらい思いをすることもなく過ごすことが出来たのです。ふと思い出したのは、ロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』です。ナチスに収用されたユダヤ人の父親は、息子に、「これはゲームなんだぞ」と面白おかしく言い聞かせ、安心させていました。本作も同様です。もう、これだけで感動的なんです。子供が心配し、苦しんでいる姿は、親はとても見ていられません。そのために、嘘も方便。「ここが世界の全てよ」と話し、ジャックを恐怖から守った親の愛の深さたるや。その分、ジョイは苦しんでいたはずです。息子が成長するにつれ、嘘はいづれ通らなくなることは分かっているのだから。
通常、こういった監禁事件では、被害者はなかなか脱出を試みる気にはなれないといいます。こういう事件が報道されるたびに、「逃げればいいのに」と、被害者に疑問を持つ人もいるのですが、徹底した恐怖は、人間を「無気力」にさせ、行動する気を削ぐのだそうです。かつて、ジョイも脱出に失敗し、後遺症が残るほど腕をねじられ、痛めつけられていたのです。

しかし。

ジョイは、息子・ジャックのために決意します。ジャックは5歳。もう、嘘は突き通せない。そして、いくらなんでも、外の世界の生活、いわば「普通の生活」をスタートさせねばならない年齢になったからです。

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ところで。

ジョイが考えた脱出作戦…、ちょっと無理があるような気はしました。とてもうまくいきそうにない作戦だと思ってしまったものです。
おいおい…、その作戦だと…、息子が焼かれてしまうって心配はしなかったのかい…?
ま…、まあ、前述したように、助かることは事前に分かっているから特に心配しなかったけど、ちょっとツッコミどころかなあと。

ただ!


<以下、結末には触れませんが、ややネタバレしていきます。>


一人逃げ出すことに成功したジャックを保護した黒人の女性警官には、いたく感動した! うまく監禁場所を話すことのできないジャックから、上手に情報を聞き出し、素晴らしい推理力で監禁場所を探し当てるのです! ジャックが言葉足らずでハラハラさせるものだから、余計に女性警官の優秀さが有難くて、これには泣けたなー。ジョイに代わって、ありがとう!ありがとう! と感謝したものです。

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しかし。

皮肉なことに。

監禁後、この親子を待ち受けていたのは、決して生易しい「外の世界」での生活ではありませんでした。
7年間の間に変わってしまった家庭環境。
珍しいものを見るかのような世間からの衆目。
すると聞こえ出す、「わかったような辛らつな意見」
ジョイの心をえぐったのは二つ。
・ジャックを受け入れられない、ジョイの父親。
もちろん、ジャックは監禁した男の子どもでもあります。そのため、ジョイの父親は、ジャックを直視する事ができません。ジョイは自分の父親に訴えます。「ジャックはあの男の子どもではない。私の子どもだ」と言い張ります。そういう「感情」として、皆で受け止めればいいと思うのですが…。どうしても、特に男性には、「理屈」でしか考えられない人もいます。
いつかジャックに、父親や出生についての真実を話すのかなど、いろいろな課題はあるでしょう。しかし、それはそれ。何とでもなる。そもそも、ジャックに罪はないということが、一番重要だと思うのですが。
ジョイの実の父親よりも血のつながりのない新しい父親の方が、優しくジャックに接するのが、また皮肉でした。

・インタビュアーが無神経に追求する、「出産した時に、なぜ子供を外に出さなかったのか」という疑問。
ジョイにも罪はないはず。彼女は絶対的な被害者です。しかし、何か悲惨な事件が起きた時、何故か野次馬は、「事件」と「被害者」の間に「因果」を見出そうとします。「この人は、こんな人だから、こんな目に遭ったのだ」という理由を欲するのです。なぜなら、「誰にでも起きうる事件」だなんて、あまりにも不条理で恐ろしくて、受け入れ難いからです。「だから、自分はこんな事件には巻き込まれないはずだ」と思いたくて仕方ないから、被害者の落ち度を探そうとするのです。

そういった、いろいろな煩わしい「外の世界」の出来事がジョイに降りかかり…

ジョイは、次第に心を壊していきます。

「監禁部屋」での生活から逃れてもなお、ジョイは苦しみ続けるのです。

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さらに。

息子のジャックは、「あの部屋に帰ろう」とまで言い出すのでした。
子どもにとって、生まれ育った場所とは、たとえ「監禁部屋」であっても慣れ親しんだものです。その部屋での母親との穏やかな生活に比べ、「外の世界」はジャックにはなかなか慣れないものだったのです。ここは、少しばかり『そして、父になる』を思い出します。やはり、これまでの生活を捨て、新しい世界に入ることは、子供にとっては苦痛であり…恐怖でしかないのです。思い起こせば、ジョイが監禁部屋からの脱出をジャックに話した時、ジャックは頑なに、ワガママなほどに、拒否をしていました。その気持ちは、胸が締め付けられるほどよく分かります。この一連のジャックの気持ちの流れは、子どもの心を捉えた素晴らしい描写だと思いました。

本作は、この親子の再生と、ジャックの成長を丁寧に描いていきます。

中盤以降、本作は意外に静かに展開します。
けれど。
少しずつ、少しずつ…、「普通の生活」を取り戻していく二人の姿が、本当に感動的です。

同じ年頃の子どもを持つ親が観たら…、きっと、今すぐにでも子供のそばに寄り添いたくなるでしょう。


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Posted on 2016/12/30 Fri. 10:08 [edit]

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