素人目線の映画感想ブログ

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帰ってきたヒトラー/昔も、みんな最初は笑っていた。 


 ヒトラー
 帰ってきたヒトラー
 (2015年 ドイツ映画)  80/100点


傑作映画『ヒトラー 最後の12日間』では、ヒトラーの「人間性」が描かれたことに批判が巻き起こりました。
「あいつは悪魔だ。人として描いてはいけない」
ヒトラーものの映画は多いですが、確かに彼を擁護するような映画はありません。
しかし、これほど映画化される歴史上の人物も多くはないかもしれません。「ヒトラー」という人物に、それだけ興味を持つ人が多いということだと思います。

本作では、そんな「ヒトラー」が現代に蘇ったことで巻き起こる騒動を、なんとコメディとして描きます。それも、ドイツ映画です。

しかも、本作の「ヒトラー」は、分かりやすく「悪魔」としても、「バカ野郎」としても描かれていません。れっきとした「国を憂う政治家」として描かれているのです。これは、相当なタブーだと思わせます。

帰ってきたヒトラー


ただし。

本作の狙いは、もちろん「ヒトラー賛美」ではありません。

本作の「ヒトラー」は言うのです。「民衆が私を選んだんだ」と。
奇しくも、トランプ大統領を思い起こしました。マスコミでは、「トランプ大統領」を強く非難しています。信じられない差別主義者だとか、内向き過ぎるだとか。しかし、それには若干の違和感を覚えます。なぜなら、トランプは「嘘を言って」大統領選を戦っていないからです。最初から、「壁を作る」「イスラム教の人を差別する」と宣言していました。アメリカ国民は、それを知った上で彼を大統領に選んでいます。トランプ大統領の国策が愚行であるなら、国民はその愚行を支持したことになるのです。トランプ大統領一人を批判するのではなく、「なぜ民衆はそんなトランプを選んだのか」を考えてみないと、結局、第二、第三のトランプ大統領が生まれ続けるに違いありません。
つまり、トランプを大統領に選ばなければならないほど、追い詰められたアメリカ国民がいる、という事実が問題ではないでしょうか。もっと言えば、その状況を生み、放置し続けた今までの政治にも責任があるのだと思います。

本作の狙いは、まさにそこ。

帰ってきたヒトラー3


物語序盤こそ、現代にタイムスリップした「ヒトラー」が、インターネットなどの現代の英知に度肝を抜かれたり、時代錯誤な物言いで現代人の失笑を買ったりするコメディとして展開しますが、中盤から、途端に「政治風刺」としての色合いが濃くなっていきます。

特に、ヒトラーがテレビ番組のレポーターとして現代の街に繰り出し、ドイツ国民の声を聞いて回る場面は、奇抜でいて面白いです。
しかも、ここだけは「ドキュメンタリー」で撮影する発想が凄い。
「ドキュメンタリータッチ」ではなく、本当に一般人に街頭インタビューを実施しているのです。「ヒトラー」の格好をした役者に向かって、中指を立てたり、罵声を浴びせたり、非難をする人が数多くいました。やはり、彼の嫌われ度合といったら、狩野英孝どころじゃないのです(当たり前)。
しかしそんな中、何人かの人は、ドイツの現状を憂い、真面目に答えています。少数なのかもしれませんが、彼にハグを求める人もいました。
マスコミの中では「絶対悪で一致」していても、民衆の中では、「そうとは限らない」様子が存在しています。リアルな民衆の声を拾うことで、本作にある不穏当な空気が、現実味を帯びていきます。

本作のヒトラーは、こうしてフィクションとノンフィクションを行ったり来たりし、民衆と関わっていきます。

帰ってきたヒトラー2


「ものまね芸人」としてテレビ番組に出続けるヒトラーは、次第に大きな人気を獲得していくことになります。「ものまね」の巧さ(そりゃ本人だもんね)もありますが、一人一人の民衆の不満をじっくりと聞いた上で述べる、ドイツの窮状・問題の提起に、民衆は引き込まれます。確固たる自信に満ちた力強い言葉の砲弾は、確かに力強いです。
表向きは「紳士」であり、「実直」なその男は、迷える民衆を幸せに導く「責任」を、しっかりと背負っているように見えるのでした。

ヒトラーは言います。「民衆が求めているのは、責任を取るリーダーだ」と。それは逆に言うと、民衆による責任の転嫁でもあります。
ドイツには移民問題があります。そこには、もともとくすぶっていた排他主義と、攻撃的な「本音」がありました。
実は、民衆の一部は、「大きな声では言いにくい」その本音の代弁者を求めています。またまた引き合いに出しますが、隠れトランプ派の多かったこと。みんな腹の底では、「大きな声では言えない」本音と、「笑われそうで言えない」願望を、代わりに背負って代弁・代行してくれる彼に、他力本願な救いを見出したのではないでしょうか。

トランプもヒトラーも、民衆が望んで生まれたのだということ。

「好機到来だ」とにやけるヒトラーが行きつく先は、やはりナチズムなのか。
終盤、彼の本来の「残虐性」の一端が露見し、化けの皮がはがれる瞬間があります。
しかし、一時の沈静のあと、彼が再び支持を回復させる様は不気味です。

それは、アウシュビッツの悲劇の再来さえ呑み込みかねない、「民衆の恐さ」をも感じさせるのでした。


    

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Posted on 2017/02/17 Fri. 00:48 [edit]

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