素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。

葛城事件 /「家族」は、不幸の温床か。 


 20160702145619.jpg
 葛城事件
 (2016年 日本映画)  89/100点


<結末以外、ネタバレで書いています。>


怖いものを観た。

怖かったのは、「家族の中にある歪み」の描写。それは、決して対岸の火事のような「突飛」なものではありません。そこらにありそうな、とてもリアルな「歪」みです。

傑作の人間ドラマであることは間違いないですが、「面白い!」というか、「ウチも…、気をつけなきゃ…」と、戒められる気持ちになったものです。免許更新の時に見せられる「飲酒運転で事故を起こした者の人生崩壊ドラマ」くらい、人の折り目を正します。

アメリカ映画だったら、「困ったちゃん」の家族映画ってコミカルな場合が多いですけど、邦画はドロオォ…っとしてます。
「家族という病」という本が売れているし、「家族」は「不幸の温床」という印象が広がって、ますます婚姻率を下げるんじゃないでしょうかね…?

あらすじは、「通り魔殺人事件を犯した息子を持った父親と、その家族の地獄を描く。」という物語。
↓予告編です。



では、いろいろと問題を抱えた登場人物たちをご紹介。

葛城清(三浦 友和)
葛城一家2
(百恵真っ青…)

この顔ォ…。三浦友和が、『アウトレイジ』でも見せた「悪人節」をさらにパワーアップさせ、泣く子も黙るコワモテ親父を演じます。バラエティー番組で見かける三浦友和は、もともと寡黙で「怖い」イメージがあったから、まさに適役。

清は、金物屋を営む、乱暴で粗暴で、家族に強大な父権を振りかざすオヤジです。
けれど。
鑑賞前に予想していたキャラクターとはだいぶ違っていました。もっと「滅茶苦茶な」オヤジだと思っていたからです。
彼の根底には、コンプレックスがあります。
父親から引き継いだ金物屋で、うだつの上がらない商売に腰を据えてしまった自分に引け目を感じています。それは、長男のネクタイを「かっこいいな」と褒める場面で思いました。
精一杯に強がり、一軒家を建て、「男は家族を守るものだ」と豪語するのも、偉そうに日本社会を憂いてみせるのも、中華料理屋で度量の小さなクレームを付けるのも、全てコンプレックスの裏返しです。(「父親」とか、「客」という立場でしか、自己顕示欲を満たせない)
その彼にとって一番大事なことは、「家族」という帝国で自分が君臨すること。
彼にとって唯一、王様(支配者)になれる場所だから。


ただ。
理想の押し付けであったとはいえ、彼は一応は「家族想い」だったように思うのです。
…独善的なやり方だけど、「家族の為」という御旗の元、彼なりに頑張ったんだと思います。子どもたちを育て上げる誓いとしてミカンの木を庭に埋めたり…、一応は頑張ったんです。でも、その「頑張り」が「自己満足」でしかないから、全然実を結ばないのですよ。
そこに気づけないから、反省もできない。人のせいにばかりしてしまう。だからこそ、全てがダメな方に流れていく彼の押し黙った表情に、哀れみを感じてしまうのでした。


葛城伸子(南 果歩)
葛城一家4
(ケン、オーマイガー…)

これまた…、困ったお母さんです。
一番気になったのは、まったく「料理」をしないこと。
清は達観しているようで、「なんか作ってくれ、…出前でもいいから」と料理を強制しません。元々しないのか、ある時からしなくなったのか。家族の食事は、いつも「コンビニ弁当」です。漫画『闇金ウシジマ君』でも、人物の生活や心の貧しさを「コンビニ弁当」で表していましたが、家族そろってコンビニ弁当を食べている姿は、余計にどんよりさせます。

子育ての基本は、「食」だと思います。上手でなくても、お金がかかってなくてもいいので、「手料理」が必要だと思います。
以前、ラジオの「人生相談」で、「子供の非行」に悩む主婦の相談に対し、アドバイザーが「毎朝しじみのお味噌汁を作りなさい」と言っていたのを思い出しました。しじみを扱うのはひと手間かかります。つまり、「子どもの為に手間をかけなさい」という意味です。毎日「食事を作る」ことは、最適な愛情表現になります。子どもはそれを見て、「自分は大事にされている」と感じることができるのです。もちろん、母親に限らず、父親がやったっていいのです。

どうも葛城一家は、父親・母親双方に「愛情表現」の乏しさがあるのでした。(愛情がないのではなく、表現がうまくないということです。)


葛城保(新井浩文)
葛城一家

葛城一家の中で、どちらかというと「まとも」に見える長男ですが、彼も問題を抱えていました。
「弟に比べれば」出来る方だった彼は、清から期待をかけられていました。だけど彼は、「営業成績ゼロ」という事態を抱えていたのです。極度なあがり症を持つ彼に営業ができるわけないのです。しかも、(不幸なことに?)彼には妻と子供がいます。だからこそ、息づまる「苦しさ」は重たいでしょう。
赤ん坊の泣き声が彼の背中に突き刺さります。
さびれた清の金物屋に出向き、「この店継ごうかな…」とポソリ呟く、「逃げ道」を探る彼の心の重たさがつらいです。

生きていくってのは、不器用な人間には本当に過酷で。

そんな彼ですが、「父親からの期待」は、唯一自己肯定感を満足させるものだったのかもしれません。だから、彼だけは父親とうまく接していました。しかし、それはあくまで、「弟と比べればマシだ」という小さな優越感です。家出した母親と弟の居場所を父親に報告するのも、弟が父親に乱暴されるのを黙って見ているのも、さもしい彼の本音を浮かび上がらせます。
そしてそれは、弟から完全に見透かされていたのです。


葛城稔(若葉 竜也)
葛城一家3

彼が通り魔殺人を犯してしまう「原因」は、果たしてなんなのでしょうか。
どこから、歯車が狂い始めたのでしょうか。
それは、誰にもわかりません。サイコパスだったとしたら誰が悪いわけでもないし、母親に甘やかされたせいかもしれないし、父親が彼をいつも否定していたからかもしれないし、彼自身が言うように、「10代20代をろくに努力もせず怠けて過ごして生きてきたバカが、30手前で人生終わってる状態になってることに気づいて発狂して、人生を謳歌する他者をねたみそねみで自殺の道連れにしてあさはかに暴れた!」…のかもしれません。

自分に圧倒的に「自信」が無い彼は、反面、プライドばかりが肥大しています。そのため、理想と現実のギャップに苦しんでいたのだと思います。そういう人は少なくないですが、年月を重ねるにつれ、現実を受け止められるようになるものです。
しかし彼は齢30に近づいてもなも、そのギャップを埋めきれません。彼から出る言葉は、中学生レベルの痛々しい言い訳や屁理屈ばかり。それが、自分もそうなっていたかもしれないと思えるほどリアルなので、余計に気持ち悪くて仕方なかったです。

それは、父親の清と全く一緒です。タメ口や敬語を織り交ぜる話し方からして一緒。妙に「思想を語って」みせる部分も一緒。彼は清と同じ性質です。それだけに、彼らはお互いに「近親憎悪」を抱いたのかもしれません。

稔が、死刑判決を受けた矢先に傍聴席を振り返り、父親に向かって「してやった」ような顔をしたのは、彼の凶行の動機のある部分は、父親への復讐だったことはあり得ると思います。
と同時に、「父親に認めてもらいたかった」という欲求の裏返しでもあるのです。


星野順子(田中 麗奈)
葛城一家5
(家族になりまっしょい!)

本作は彼女の視点で語られますが、死刑反対のために稔と獄中結婚をする、よく分からないキャラクターでした。
「私は、人間に絶望したくないんです!」と何度も高らかに宣言しておきながら、ラストは清に向かって、「あなた、それでも人間ですか!」 萬屋錦之介ばりの啖呵を切ってトドメをさします。

稔の話もよく聞かず一人でぺちゃくちゃ喋っているし…
本作は、大方のキャラクターがとにかく「自分勝手」なんですよね。

KATURAGI0.jpg


書いているうちに、何だか暗ぁぁい気持ちになってきました…。
もうさ…
困ったオヤジがいたって、もっとカラッと明るくできないものでしょうか!?

例えばね。

バカボン
この人たちみたいにさ!


バカボン2
こんなオヤジの元でも、みな明るく生きてるじゃないか!


考え方を変えるんだ!
清は、一軒屋を建てて、もう十分立派だし。
伸子も、好きでもない夫とはいえ、可愛い息子たちを産み育てて立派だし。
保はとっとと営業をやめて、ジョージアのCMみたいにとび職とかさ、他に向いている仕事を探せばいいし。
稔は今からでも、清の言う通り通信制の大学行って、一歩一歩地道に生活すればいいじゃんか。


この日本で、「人生もうお終い」なんて、大病でもない限りそうないんですよ。
みなさん、悲観的に考えすぎなんです。

そう!
「これでいいのだ!」という精神にならって!

それくらい、この家族の歪みは普遍的なものだし、一歩考え方が変わっていれば、良い方向に向かったように思えてなりません。(本作の葛城一家は、無差別殺傷事件である「附属池田小事件」の宅間一家をモデルにしていますが、実際は映画以上に父親がひどかったそうです。そういう点で、本作は事件現場の悲惨さ含め、現実を正確には再現しておらず、ある意味、問題を描き切れていないと言えるのかもしれません。)

ということで。今日はここまでで。

KATURAGI


  

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Posted on 2017/03/05 Sun. 20:33 [edit]

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