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ボーン・アルティメイタム/やっちまわない硬派なスパイ。 


 aruteximeitamu.jpg
 ボーン・アルティメイタム
 (2007年 アメリカ映画)  80/100点


<最後までネタバレしてます。>


シリーズ最新作がレンタル開始になったことだし、まだ未見だったシリーズ第3弾の本作を、ようやく鑑賞。

「ボーン・アイデンティティー」
「ボーン・スプレマシー」
「ボーン・アルティメイタム」とタイトルの分かりづらさは健在。アルティメイタムの意味は「最後通牒」だそうで、和訳してもなお分かりにくいのでした。

アルティメイト


しかし、シリーズ最高傑作ともいわれる本作は、これまで培ってきたシリーズの魅力の集大成です。
本シリーズの特徴は!
「暗い!」
「地味!」
「ヒロインがふつー!」

と書くとあんまりですけど、本シリーズはまるで頑固な職人のようなイメージです。何一つ浮わついていません。派手なアクションもありますが、荒唐無稽っぽさが薄くてリアルにさえ感じます。主演マット・デイモンのイメージ通り、すごく硬派でマジメなアクション映画なのです。『ミッション・インポッシブル』や『007』と比べるとそれは歴然。

「キラキラ笑顔を振りまくスパイ映画の主人公がいたんですよ~」
「ゴージャスなガールとすぐにいい仲になるスパイ映画の主人公がいたんですよ~」
BO-N.jpg

YA(ヤ)CHI(チ)MA(マ)TA(タ)NA(ナ)ー!!
と、クールボーン(ポコ)なら怒り出すことでしょう。

あらすじは、「なぜ自分が暗殺者になったのか。あとちょっとで思い出せそうなボーンは、CIAの追手をまきながら真相に近付いていく」…といったお話。簡単に言うと、そういうお話。

アルティメイト3


ロシアでボーンが警官に追われている所から物語はスタートします。逃走の途中に過去の記憶が蘇っていくボーン。なぜオレは、CIAの暗殺部隊に身を投じてしまったのか…。その記憶の断片が頭の中に浮かんでは沈みます。その後、自分の身代わりで犠牲となった恋人のマリーの兄にワビに行き、新聞に自分のことを書いた記者・ロスに接触しようとロンドンに向かうのです。

時を同じくして、CIAはエシュロンと呼ばれる盗聴機能を使い、CIA最高機密の作戦名である「ブラックブライヤー」というワードを携帯電話で発したロスに目を付けます。このエシュロンの存在は「都市伝説」らしいですけど、実在するのではと噂されてます。世界中の携帯電話の会話などを盗聴し、テロや機密に触れたワードをチェックしているといいます。どれだけ精巧なんでしょうね。聞き取り違いはないんでしょうか。「アイス買ってきたよー」「わーい、ブラックモンブラやー」とか、無闇に拾わないですかね。(ブラックモンブランは九州限定販売のアイス) 「あんた仕事なにしてるん?」「なーに、ブラブラしとるブライ(無頼)や」とかでも拾われたら大変です。

ともかく!

ボーンもCIAも、ロスという新聞記者に接触しようと試みます。ボーンはロスにCIAが近づいていることを迅速に察知。ロンドンの駅での待ち合わせでは、監視カメラにロスが映らないよう、携帯電話で遠隔操作。そこでしゃがめ、そこで曲がれと、監視カメラの位置と動きを計算し、ロスを導く様子はさすがのプロです。本作の魅力は、こうした何気ないプロフェッショナルな職人芸を、ボーンがさらっと披露するところ。ドヤ顔ひとつ見せず、寡黙な表情でミッションをこなしていくボーンのカッコよさ。

モロッコでのシークエンスも素晴らしい見応えです。ロスの情報源だったダニエルズの暗殺をもくろむCIAと、それを阻止しようとするボーンの攻防。ここでもヒットマンが登場。本シリーズでは、敵ヒットマンがなかなか手ごわく、ボーンでも一本取られてしまうところが面白いです。ロンドンでのロスと、この場面でのダニエルズ、そして前作では恋人のマリーさえもヒットマンにやられました。ボーンがそばに付いていたにも関わらず。超人のようでいて失態も見せるボーンは、「可能な限り等身大」というシリーズ当初の人物設定を、かろうじて活かしているように思います。
さらに、かつてCIAでの仕事仲間(それ以上の関係?)だったニッキーと行動をともにしたことで、ニッキーも命を狙われます。これ以上負けていられないボーン。モロッコの家の屋上や部屋の中を走り回ったり、飛んだり跳ねたり、小池さん宅をドタバタ横切る藤子不二雄キャラのようにニッキーの元に向かいます。しかし、ヒットマンも徐々にニッキーに肉迫。かつて、マリーを物語序盤で退場させた実績のあるこのシリーズですから、もしかして…? とハラハラさせます。予定調和のない物語は、緊張感が違うのです。

KOIKESAN
モロッコ追跡場面のイメージ。
(注:本作のスピード感はこれの100倍はあります)


窓ガラスを割って飛び込んでいくボーンと、ヒットマンとの壮絶な肉弾戦が凄いです。部屋の中にある物を駆使して闘うボーンは、さながらジャッキーチェンを思い出させますが、遥かにリアル感があります。「武器がない時は、分厚い単行本で敵の首を狙うといいよ!」という、豆なライフハック感が漂っています。そして例によってサラリとしているのがいい。知識の披露にドヤ顔がにじむ林先生とは違うのですよ。

アルティメイト2


終盤では、ボーンはニューヨークのCIA本部に近付きます。ここで驚いたのが、前作のラストシーンが出現するところ。パメラに電話したボーンが、自分が近くのビルにいることをパメラに悟らせる場面です。回想ではありません。なんと前作のラストシーンは、本作終盤の伏線だったのです。これって、今までにない手法じゃないですか? その電話を盗聴していたCIAも大慌て。どこだどこだと上へ下への大騒ぎ。これがまたボーンの仕掛けた陽動だったってのが巧いです。機密が隠された金庫の開け方にも、いちいち知恵が回っています。敵に電話したり居場所を教えたり、ボーンはかまってちゃんかよって突っ込ませておいて、なるほどそうきたかーっと。CIAだけでなく観客をも煙に巻くボーンの機転。…というか、映画の構成の妙技に唸らされます。ツッコミどころを探しながら映画を見てしまう、ひねくれブロガーは恥を知りなさい!(私です)

終盤では、ボーンはトレッドストーン作戦の本拠地だった場所へ乗り込みます。その過程での壮絶なカーチェイスは、本シリーズの見どころです。スピード感あふれる矢継ぎ早なカット割りが、多少見えづらいものの、頭の中が揺さぶられるような迫力があります。本物の事故を目の当たりにしたような恐怖さえ感じます。衝突の衝撃は凄まじいだろうに、シートベルトをトリッキーに使いこなして危機を脱する、ボーンの小技が粋です。生き残りサバイバル術にかけては、「初耳」はないであろうボーン先生なのでした。

ただ…。
ラストで明かされた「真実」は、正直言うと、そこまで衝撃はなかったように思います。「君(ボーン)自ら志願したんだぞ」と敵の親玉はしたり顔で言っていましたが、だましたり洗脳したりしてた部分も多いわけで。「実はボーンはいい人間ではなかった」というくらいの「事実」があると面白かったかな。
しかし、これには、本作の大きな特徴である、CIAに動かされている「ヒットマンたちの悲哀」が絡んでいます。
ラストで、ボーンを追うヒットマンは、ボーンへの銃撃をためらいます。ボーンから、「なぜ君はオレを殺す?」と問われたからです。ボーンは、致し方ない場合を除き、「コロシ」を辞めていました。それは、彼が人間らしさを取り戻すために必要なことだからです。「それで人間といえるのか」 最後にして、ちょっとドヤ顔で語るボーン先生。ヒットマンは思わず銃を下ろすのです。ああ、自分の名前と記憶を取り戻し、人間らしさを取り戻したボーン…、あの…、水を差すようで悪いんですが、車やバイクを盗むのもダメですからね。(逃走の時に、すぐ盗むんじゃ)

アルティメイト4


ラストの構成も実に特徴的です。銃撃され、水の中に身を投げたボーン。死んだように動きません。場面は先に進み、後日ニッキーがニュース映像を見ているところ。「ボーンの遺体は発見されていない」というアナウンスを聞き、ずっと能面だったニッキーが珍しくニヤリとしたところで、過去に映像が戻り、水中のボーンが動き出します。その瞬間、おなじみのエンディングテーマが鳴り響くカッコ良さ!第80回アカデミー賞にて、編集賞を獲得したのも納得。この場面、二度、見返しました。

それにしても。

この渋みの利いた本シリーズの特徴は、果たして最新作『ジェイソン・ボーン』でも活かされているのでしょうか。心配です。まさか、美女キャラクターとか出てこないでしょうね。その美女といい仲になったり…、やっちまっていないでしょうね!? もしそうなら私は許さない。

…っていうか…

「現実離れした美人捜査官とか出てくるんですよ~」
ニッキー

ニッキーが黙っちゃいないでしょう。


↓前2作の感想はこちら。
「ボーン・アイデンティティー」
「ボーン・スプレマシー」


  

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Posted on 2017/03/13 Mon. 20:21 [edit]

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