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ヒトラーの忘れもの /誰もが、加害者。 


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 ヒトラーの忘れもの
 (2016年 デンマーク映画)  90/100点


衝撃的な映画でした。まともに直視できないタイプの…。
けれど、傑作です。

本作の邦題が批判されているようです。「ヒトラー」は出てこないし、原題(『LAND OF MINE』:地雷の土地)に含まれた秀逸なダブルミーニングを丸無視だから、とか。ただ、私自身は致し方ないのかなとは思います。原題よりも、人目を確かに惹きます。もちろん、「忘れもの」という響きが、ちょっと可愛らしすぎで、映画の内容に沿ってないのはホントです。人によっては、「トトロあたりが出て来るん? ワクo(´∇`*o)(o*´∇`)oワク」、と勘違いしそうです。(それはない)
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※当時のキャッチコピーを思い出したもので…

さて。

そんな能天気な事など言っていられないくらい、本作の内容は「過酷」なものです。
これは戦争映画…ではなくて、戦後処理映画です。ドイツによって埋められた、デンマーク国内の何百万個にも及ぶ「地雷」を、デンマーク人たちが、ドイツの少年兵にやらせる、という物語。素人の少年兵たちの地雷撤去作業が、ただで済むわけはありません。こちらの想像を超える、愕然とする展開が私たちを待っています。

しかもこれは、史実です。

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冒頭、一人のデンマークの軍曹が、ドイツ兵を殴りつけます。「俺たちの土地から出ていけ!」と叫びながら。第二次世界大戦中、デンマークはドイツに占領されていました。虐げられていました。そうはいっても、終戦した後に、ドイツ兵とあらば誰であろうとののしり、不条理に殴りつけることに「正義」があるのでしょうか。殴られたドイツ兵は、やり返しもせず、黙々と暴力を受け入れるのみ。その仕打ちは、ドイツの少年兵にまで及びます。「お前ら、ドイツ兵だろ。」「死んだって知るもんか」「いい気味だ」 
そこに、「正義」はありません。あるのは、「憎しみ」だけ。無数の「地雷」と同じく、デンマーク人の心に、それは埋め込まれたままなのです。
いわれのない罪を着せられたドイツの少年兵たちは、残酷な扱いを受け続けることになります。
結局…、誰しもが加害者だった、というお話。

わすれもの3


広大な砂浜に埋められた「地雷」を、少年たちは黙々と処理していきます。おぼつかない手つきです。いつ、何が起きるか分からないし、死を予感させるフラグまで散りばめられていて、恐ろしくて仕方ないです。これは、最凶のブラック部活ですよ。…案の定、惨事は起こります。重傷を負った少年が、しきりに母親を呼ぶ姿が衝撃的でした。「里心などない」と強がっていても、恐怖のあまり、我を忘れて叫ぶのです。
戦争が生む最大の残酷は「死」ですが、その前に、「家族を引き裂く」ことがどれほど酷か。きっと、きっと、家に帰りたいことでしょう。猛烈に、肉親や兄弟に会いたいことでしょう。その希望をひねり潰すような行為は、ドイツ軍(ヒトラー)がしでかした鬼畜の仕業と、規模は違えど、大して変わりはないのだと思います。

物語では、少年兵たちと、彼らを統率するデンマークの軍曹との交流が紡がれていきます。
軍曹もまた、激しい「憎しみ」を内包した人物です。ドイツの少年兵たちに食べ物もろくに与えず、夜は小屋に閉じ込め、具合が悪くても休憩をさせません。当初、彼らを「人扱い」さえしていなかった軍曹ですが、自分の判断により、少年兵を一人を失ったことから、次第に心が揺れ動き始めるのです。


<以下で、結末以外、ネタバレします。>

 わすれもの2


この軍曹、本来は「いい人」なんでしょう。ただ、ちょっと不安定なんです。その揺らぎが、ちょっとこちらの理解を越えている部分があるもので、戸惑う面もありました。少年兵たちと仲良くなる過程と度合が、急なんです。
中盤を過ぎたあたり、ある一人の少年兵と浜辺に座り、会話している場面でのこと。
少年兵は、軍曹に向かって、「ボオオオーン!」と言って驚かせます。えー!? 何やってんだ、こいつ!? 哀川翔の頭を、後ろからぶっ叩いたくらいの奇行! 「舐めとんのかーーー!!(#゚Д゚)ゴルァ!!」とキレられてもおかしくありません。ところが、なんと軍曹、一緒になって笑っとる!? 彼は、信じがたいほど、急に、随分優しくなっているのです。
…急…過ぎないかい? 
ま、まあ、確かに、その描写のおかげで、物語に清涼な風が吹き、ひとときホッとはしたのですが…

が。

一筋縄でない展開が、この先にあります。

軍曹に、ある悲劇が起こります。その途端、軍曹は、また「憎しみ」を巻き散らかす男に戻るのでした。
いったん優しくなっていただけに、かえって状況はツラく、見ていられないほどです。それでもまだ、立場上のポーズであってくれたらいいのになと思っていたら、軍曹は少年兵たちに、「命の危険」がさらに増す行動を課すのです。本気すか、軍曹…(私、かなり引いたよ)。
やっぱりちょっと…、不安定な人なんだなあ…。
正直、この辺りの描写は、納得がいくようないかないような、変な感じがありました。軍曹の態度の振り幅に、少年兵たち同様、振り回されてしまったのでした。

 わすれもの5


何度も言いますが、これは史実…、これが史実なのだから、哀しいです。
本国デンマークでも、最近まで知られていなかったという、暗黒の歴史。それを、デンマーク自らが、映画にした傑作です。

軍曹と少年兵たちの間で、最後に交わされた視線。それぞれに帯びていたのは、「赦し」か、「憎しみ」か。


  

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Posted on 2017/08/08 Tue. 21:29 [edit]

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