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インサイドヘッド /どうして大人になるんだろう。 


 インサイドヘッド
 インサイドヘッド
 (2015年 アメリカ映画)  85/100点


ディズニーやピクサーに限らず、アメリカ映画は、とにかく「擬人化」という発想が大好きです。
『トイ・ストーリー』では、おもちゃたちを。
『カーズ』では、車を。
『ファインディング・ニモ』では、魚たちを。
『キャッツ&ドッグス』、『ペット』では、動物たちを。
もはや、地球上には、冒険の舞台となりえる未知の場所など存在しないのかもしれません。だからこそ、人間の身近な場所に、まだ気づいていない秘境があった! …というファンタジーが好まれるのかも。

今回擬人化されるのは、人間の頭の中の「感情」たちです。ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカ…といった感情が、実は人間の頭の中でドタバタ活動していたという、世にも奇妙な物語。…今に、細胞や素粒子までも擬人化されそうな勢いです。

とはいっても、そこはピクサー。今回だって面白さは、一ミリもはずさない。CGキャラクターたちのテンポのいい躍動も、大人でも十分に楽しめる練りに練った物語も、どれもこれもが一級品。嫉妬を覚えるほど、当然のように素晴らしい出来栄えのアニメーションだったものです。

ではここで、主な感情人物たちをご紹介。


○ヨロコビ
インサイド
ザッツ、ポッジティブ!! 常ににこやかに元気よく動き回る、スクールカーストでいうと上位に位置する存在です。いーえ、どことなく似てますが松居一代じゃありません。
まあ、人生、「喜び」が「正義」なわけですから、頭の中の指令室で、彼女は他の感情たちよりも抜きんでた存在感を発揮しています。もちろん、本作の主人公でもあります。
しかし、「あたしが一番大事でしょうがっ」という、「独善的」な雰囲気もあり、いつか陰口を叩かれていそうなタイプでもありますね。いーえ、なんか似てますが松居一代じゃありません。

○カナシミ
インサイド5
ザッツ、ネガティブ…。スクールカーストの最底辺にいそうな彼女は、ヨロコビが盛り上げようとしても、常にマイナスイメージを巻き散らかします。そのため、ヨロコビから邪険にされ、挙句には見捨てられるという悲劇に見舞われるのです。
小太りめがねキャラなので、近藤春菜の新たなレパートリーに加わりそうな気配です。(※やっぱり! 実際加わってた!)

○イカリ
インサイド2
「怒り」を司ります。当然、短気です。怒ると頭から炎が吹き上がるという恐ろしい体質です。昭和のオヤジのイメージ…いわゆる、梅沢富美男のポジッション。てめえな! バカ言ってんじゃねえ! コノヤロー! 夢芝居!

○ビビリ
インサイド3
「ビビリ」…は感情なんでしょうか? という疑問が湧かなくもないですが、ようは「心配」を司るということかと。頭の中の警報のような存在です。大事ですよ。(たぶん)脳筋な「ヨロコビ」なんか、目の前の落とし穴に気づかず、猛進するタイプですから、目配りのサポーターは不可欠です。
実写化されたら、滝藤賢一が演じそう。

○ムカムカ
インサイド4
「不愉快」を司る…、ということでしょうね。大所帯のアイドルグループにいそうな風貌です。そう見ると、かのグループなんて、総勢「ムカムカ」だらけが歌って踊っているようで地獄絵図ですな。…すみません、今んとこ、思いついたこと全部書いてます。

で。

上記の5つの感情たちは、11歳のライリーという少女の頭の中にいて、ライリーの感情すべてをコントロールしているという設定です。彼らが陣取る指令室は、まるでタイムボカンの悪玉側のロボットの操縦室みたい。彼らが、「ここで『不機嫌』よ!」「次は『怒り』だ!」とライリーを自由にコントロールしている様子は、一歩冷静に考えてみると、まるで洗脳の一部始終を目撃してるみたい。

インサイド6


それにしても、なぜこの5つの感情なのでしょうか? ライリーがまだ幼い子どもだからなのか…と思いきや、ライリーの両親やその他の大人の頭の中も、この5つの感情のみが占めていました。えー? 他にもあるじゃないか。カットーとか、シットーとか、アイジョーとか、ヨクジョーとか。…というのは、野暮な突っ込みですね。とはいえ、wikiにある感情一覧を見たら結構他にもあって面白いです。→『感情一覧』
また。
ヨロコビやカナシミ、ムカムカが女性イメージで、イカリやビビリが男性イメージ…ってのは、何気に男女差別でないのか? と思ったりしなくもないです。カナシミが、小太りで眼鏡でタートルネックってのもね…。まあ、これも野暮かなあ。

そ ん な こ と よ り も !


<以下、結末までネタバレします。>

インサイド10



本作の何が面白いって、遊び心がすこぶる優秀です。途中、指令室から遠く離れた場所に飛ばされてしまったヨロコビとカナシミが、頭の中を大冒険。そこで見せる頭の中のあらゆる擬人化が愉しいのです。夢を作る人たち、いらない記憶を選別し捨てる人たち、ライリーの想像上だけの恋人…。

そして、最も印象的だったのは、ライリーが幼い頃に空想していた「ビンボン」。最初、彼の名前が「ビンボー」に聞こえて、頭の中に「貧乏性」が入り込んだのだろうか、と勘違いしたものです。しかし、そんなこと言ってられないくらい、彼は後半に大活躍し、物語を大きく彩ってくれるのです。

インサイド7


もちろん、ストーリーラインもすごいものです。

本作の大きなテーマは、
1.「『カナシミ』の役割」と、2.「『大人になる』ということ」 この二つ!

1.「『カナシミ』の役割」とは。
人生、喜びもあれば悲しみもある…と、ラジオ人生相談のオープニングでも言っている通り、どちらとも、人生には必ず幾度も訪れる感情です。本作の「ヨロコビ」は、「カナシミ」の存在意義が分かりません。だから、「いなくなればいい」とさえ考えています。けれど、ヨロコビは見るのです。落ち込んだビンボンが、カナシミに寄り添われたことで立ち直った姿を。ひどく哀しむライリーに、心配した家族や仲間が励まして初めて、美しい思い出が生まれた瞬間を。
そうか。
「哀しみ」があるから、「喜び」があるンだ…、とヨロコビは気づきます。本作の素晴らしい所は、この解答を映像だけで見せてくれるところです。邦画みたいに、「哀しみがあるから~、喜びが~」なんて、セリフでとうとうと語りません。特に目新しい主張ではないけれど、この表現の巧さに泣かされるのです。よ~く分かりますもの。ようは、あれでしょ? ほら…、「クリリンのことかー!!!」があるから、スーパーサイヤ人になれたー、みたいな?? (…あれは、「怒り」か…)

本作の原題は「inside out」です。これは「裏返し」を意味します。喜びと悲しみは、表裏一体というわけで。
それどころか、「喜び」に限らず、「哀しみ」があるからこそ、芸術も生まれるし、映画も小説も、名作が生まれるのです。そして、さらに言えば、成長も出来るし、思いやりも生まれる…。「哀しみ」は、実はあらゆる感情の起点なんだと思うのです。

インサイド9


で。

2.「『大人になる』ということ」とは。
ライリーの頭の中には記憶の谷があり、そこに落ち込んだ思い出は、みるみる風化していきます。その思い出とは、大人になるにつれ、当然のように消えていく子供の頃の記憶です。もちろん、かつてのライリーの空想の友達だった「ビンボン」も例外ではないようです。「最近はライリーあまり遊んでくれなくて…」と、寂しそうに、けれど半分達観しているようなビンボンの様子が切ないです。
この部分、『トイ・ストーリー3』を思い起こしますね。
ライリーが大人になるにつれ、彼女から「子供らしさ」は失われ、その象徴であるビンボンは消えていく運命なのです。大人になっていく苦み。そこには、本当はもっと大事にしておくべきものがあるような…。「あの子を月に連れて行ってあげてね!」と、幼い頃のライリーとの約束を、最後の最期でヨロコビに託す彼の姿に、強烈なノスタルジーを感じました。

あー、ぼーくはー、どおしーてー、おとーなにーなーるーんーだろー♪
あー、ぼーくはー、いつーごーろー、おとーなにーなーるーんーだろー♪
これが、いま私の頭の中で再生されてます(武田鉄也の『少年期』)
ちなみに、↓これ。名曲だと思うなあ。


それにしても、昔見たCMソングはいつまでも頭から離れない、という皮肉が強烈に効いてます。(商業主義へのアンチテーゼ?)


ということで。

本作は、ピクサーのまたもや傑作であったのでした。きっと、これは記憶に残っていく映画なのだと思います。


 

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Posted on 2017/09/03 Sun. 16:54 [edit]

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