素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。

北野映画 まとめ 短感<前半> 

北野3

ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏が、自身が影響を受けた日本の映画監督の名を挙げていました。そこには、「黒澤明、小津安二郎、伊丹十三」に並び、「北野武」の名前があったのです。

『アウトレイジ』シリーズしか知らないと、「何で?」と思うところでしょう。しかし、過去の北野映画には、「皮肉と暴力と愛情」を下敷きに、「物哀しくも、懸命に生きる人々」を描いた素晴らしい作品群があるのです。

そこで。

第1作目から「北野映画」にハマっていた私が、これまでの軌跡を短感で書き連ねていこうと思います。みなさんも、過去の作品が気になるでしょう? ねえ? ね? 気になるでしょうとも。
これを機に、一人でも多くの人が、「北野映画」に触れてくれたらいいんですけど。

北野映画 まとめ 短感<後半>はこちら。

では。

第1作:『その男、凶暴につき』1989年   
北野1

記念すべき第1作。
もともと深作欣二が監督する予定だったけど、なんやかや、急きょビートたけしが監督に抜擢。

処女作からもうほとばしる稀有な才能。
鮮烈な暴力描写はもちろん、車内から長回しされる犯人追跡や、遮蔽物に隠れない銃撃戦、皮肉満載のセリフなどなど。斬新さいっぱいで、見応え抜群です。
挿入されるBGMも、もの悲しくて好きですねえ。
舐めたガキンチョや女に手をあげる男を、問答無用でぶん殴る爽快感もあります。

あまりに血生臭い感じと、やけに長ったらしい歩行シーンなど、粗削りなところもありますけど、映画監督としての才能を感じさせるには十分な1作目です。

過去の感想記事はこちら。


第2作:『3-4X10月』1990年   
北野2

タイトルは、大逆転を表しています。
とても奇妙な「青春映画」 とても不思議な構成です。
前半は、草野球に打ち込んでいる柳ユーレイやダンカンといった面々が、段々と暴力団に絡まれていく様子が描かれます。
後半は、沖縄に飛び、たけし扮するヤクザとの交流が描かれます。

群像劇のように登場人物が多いし、面白いです。印象に残るシーンがてんこ盛り。柳ユーレイが小沢仁志に掴みかかる場面とか、ガダルカナル・タカがベンガルを脅しつける場面とか、カップルに絡む奴らが乗った車が衝突したりとか。
それと、やたら本作の銃声が怖かった記憶があります。独特なんです。ヴォガァン!っていう…、字では表現無理だな。

まだ無名だった「豊川悦司」演じる組長も、かなり独特です。無口でクールな凄み。ああ、本作の面白味、短感では書ききれない。
途中、啓示のようにこの先の顛末が脳裏によぎる描写もまた、強烈なインパクトを残します。

ただし。

グロテスクとは言わないまでも、前作に負けず劣らず、暴力の描写は激しいです。加えて、女性への乱暴なシーンも多いかな…。
本当に好き放題な、初期の北野映画のやんちゃ坊主といったところです。


第3作:『あの夏いちばん静かな海』1991年   
北野5

北野武の次回作は、自身の原作を映画化した「恋愛映画」と言われていますが、本作もしかり。これまでと急に作風が変わって「恋愛」を描きます。
主演が真木蔵人なので…、今後、あまりクローズアップされることがないかもしれませんが、本作もまた傑作です。

主人公二人は、耳に障害のある男女。耳が聞こえない・喋れないという設定ですが、だからといって、それを使って感動させようというような部分は全くありません。老年の仲のいい夫婦のように、淡々と、当たり前のように寄り添う二人を、遠くからカメラが見守るような優しい視点です。
周りの人が、小さな親切で、そっと二人を助けようとします。武は本作で、「日本人的な優しさ」を描こうとしました。

ただ。

本作は、あんまりなくらい大したドラマが起きません。途中でサーフィン大会がありますが、カメラはほとんど主人公に寄りません。ここまで観客を突き放した映画も珍しい。

けれど。

それが狙いだったのでしょうか、抑えに抑えた描写が、ラストで爆発します。久石譲の名曲が波のように繰り返される中で、カーテンコールのようなラストシーンの昂ぶりに、思わず泣きます。途中で退屈と思っても、我慢して観ると、最後に素晴らしいサービスが待っています。

ちなみに、淀川長治が北野映画を認めたのは、本作からだそうです。
数々の映画賞を取りましたけど、興行成績は散々。武は、「評論家なんて何の役にも立たない」と恨み節を募らせるのでした。


第4作:『ソナチネ』1993年   
北野4

北野映画の最高傑作…とよく言われる本作は、またもやバイオレンス映画です。といっても、「ヤクザ」が主人公ですが、決して「ヤクザ映画」ではありません。

本作の本領は後半から。追い詰められたヤクザたちが、沖縄の海で子どもに還ったようにひとときを過ごします。
ロシアンルーレットや紙相撲、落とし穴、花火…。不思議な空気でいっぱいです。けれど、終盤、それまで隠れていた不穏な空気が流れ込んでくる「やるせなさ。」
「貧乏くじばっかり」引かされた人間の悲哀。

エレベーターでの銃撃戦(結構先駆けじゃない?)など、相変わらず突発的暴力の怖さにもおののきます。

寺島進や勝村政信、大杉連といったわき役勢も印象的です。ヒットマン役の南方英二も、キャスティングセンスが光ります。

また、やっぱり久石譲の曲がいいです。曲が目立ち過ぎているという意見も聞きますけど、個人的には、北野映画の質を5割増させてる気がします。

長文感想はこちら。


第5作:『みんなーやってるか!』1995年   
北野7

やらかした…。一説には、武のバイク事故は、本作の失敗による「自殺」ではないかとさえ言われていました。

本作は、北野武ではなく「ビートたけし監督作」と銘打っているように、「コメディ映画」、…のつもりです。
けれど、ほとんど笑えません。若干記憶に残っているのは、「オー、マイ、親鸞!」ってのと、
東国原がコカインで粉まみれになるところ。

松本人志にしても、武にしても、映画でお笑いに力を入れると、壮絶にコケる傾向がありますね。

しかし、これさえも淀川長治だけは褒めていた。もはや、あばたもえくぼを通り越しているんじゃないか。おすぎは、それに嫉妬して武を嫌っているんじゃないか。


第6作:『キッズ・リターン』1996年   
北野6

バイク事故後の復帰作です。本作では、武は出演せず、演出だけに力を入れています。

安藤政信のボクシングシーンがカッコ良くて圧巻です。
モロ師岡のうさん臭い先輩が、後輩である安藤政信を潰してしまう過程が、なんだかリアル。うだつの上がらない先輩のうんちくほど、役に立たないものはないのです。
器がでかそうで、実はブラック企業の社長のように自分勝手だった石橋凌も、とても印象に残ります。

ボクサーを目指した金子賢はうまくいかず、興味がなかった安藤政信に芽が出るという展開が武らしいです。やっぱり、夢は目指したって叶うものじゃないという皮肉。

本作は、「そんなに、うまくいくワケないだろ」っていう、身も蓋もない人生訓です。

だけど、それが世の中の「普通」でもあります。それは、逆説的に「人生賛歌」にもなっている気がします。なんたってラストシーンの「まだ、何も始まっちゃいない」というセリフは、北野映画で唯一、かつ、最大の「声援」ですから。


第7作:『HANA-BI』1998年   
北野8

そして武のキャリアは、本作で伝説となります。
第54回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞。武はついに、「世界のキタノ」と呼ばれるまでに昇りつめるのです。まさに、監督としてのキャリアの最高潮です。

立川談志をして、「凄い…」と言わしめ、淀川長治はもちろん、今や犬猿の中のおすぎでさえ、本作を「邦画の最高峰」と言っていた記憶があります。驚いたのは、イランの有名な映画監督:アミール・ナデリが選出したベスト100で、邦画も洋画もクラシックな名作ばかりの中、本作がランクインしていたことです。

本作では、武流の「夫婦愛」を描きます。「愛情(花)」と「暴力(火)」を振り子のようにして。妻に、「ちょっと待っててね」と優しく語りかけたのち、待ち構えるヤクザを電光石火で倒す場面が凄いものです。
挿入される武の自作の絵画も、とても意味深です。

あれこれ尽くしても、結局何もならなかったと思えるような哀しい結末。さざ波だけが残る寂しさ。
北野映画に出てくる海は、いつも「慈しみ」と同時に、「死」の予感に満ちています。

説明セリフが多くなっていたり、ちょっと観客迎合も見える本作ですが、満場一致だったというヴェネチアの選考も納得の大傑作。初鑑賞時、冒頭からワクワクするほど面白かった記憶があります。

過去の感想記事はこちら。



というわけで。前半はここまでで。また、時間を見つけて後半を書きます。たぶん。

「世界のキタノ」の後半戦は、これまでとガラリと様子を変え、「迷い」と「エンターテイメント」が混在していきます。

北野映画 まとめ 短感<後半>はこちら。


   
   

記事を読んで頂きありがとうございました。
↓よかったら、クリック1票お願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
<スポンサードリンク>

関連記事

Posted on 2017/10/06 Fri. 22:35 [edit]

TB: 0    CM: 0

06

コメント

Comment
list

コメントの投稿

Comment
form

トラックバック

トラックバックURL
→http://eigamove.blog.fc2.com/tb.php/362-0b009f81
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Trackback
list