素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。

北野映画 まとめ 短感<後半> 

きたの無題

さて、後半です。
ヴェネチア映画祭での金獅子賞受賞後、「北野映画」は長い混迷のトンネルをくぐっていくことになります…

北野映画 まとめ 短感<前半>はこちら。


第8作:『菊次郎の夏』1999年
武短

ヴェネチア受賞後、北野武の次回作は「母を訪ねて三千里」でした。

とはいっても、物語は早々にそのプロットを離脱。
あとは、のんびりしたロードムービーになっていきます。それも、まるでテレビのコントのような雰囲気が濃いです。
恐らく…、ヴェネチア受賞後、海外からの注目が俄然集まっている中なので、本業である「テレビタレント」の側面を見せたかったんじゃないでしょうか。
井出らっきょとの絡みが、テレビ番組でのやり取りそのまんま。途中の競輪シーンは、まるでバラエティ番組のようなノリで始まります。
それがうまくいっているかどうかというと…、やや失速感が否めません。やっぱり、映画ではあまり「お笑い」を前に出さない方が…

主人公の子役がぶちゃいくなのは、武らしいキャスティングでいいですね。


第9作:『BROTHER』 2001年
武短2

いよいよハリウッドとの共作です。本当か噂か、クリント・イーストウッドが絶賛した…、とwikiに書いてて驚きました。
確かに、お得意のバイオレンス映画だけあって、見どころは多いです。中でも、マフィアの幹部を一掃するシーンは圧巻。石橋遼が演じるヒットマンが、二人を始末する場面のワンカットも鋭いです。寺島進と仲間たちがバスケする場面も楽しいです。
女を助けに行ったら、その女まで撃っちゃったというのも、鬼のように斬新です。

「ファッキンジャップくらい分かるよ、バカヤロウ」
という名言まで残しました。

ただ、ちょっと雰囲気が重い…
大杉連や寺島進が仁義を通す場面が、やたらコッテリです。おまけに、いつも効果的だった久石譲のBGMまでコッテリ。
また、北野映画は、脇役にまでいい顔つきの人が出てくるのが大きな特徴ですが、アメリカ人には、どうもその神通力が利いていないようで安っぽく。

どうにも…、アメリカの空気感と北野映画の空気感のミスマッチが目立つ、アンバランスな一作になっています。
印象としては、傑作の一歩手前…という感じです。


第10作:『Dolls』2002年
武短3

本作はロシアで随分ヒットしたそうですね。こういう感じが好きなんだなあ…

人形浄瑠璃を擬人化したファンタジーという発想は面白いのですが…、実は、私は全然好きではありません。
映像はかなり凝っていますけど、肝心の演出が冴えてない。ぎこちない。無理に「若さ」を入れ込んでいるのが見て取れる。…菅野美穂と深田恭子が、まさに人形のような女でしかないのは、狙いなのか、もしくは下手か。

中でも、「お弁当作って待ってるからあ」の戦慄といったら。

ただ一つ、西島秀俊を発掘! という功績はさすがです。
北野映画は、男優 だ け は 出世します。


第11作:『座頭市』2003年
武短4

いったん「アート」から離れ、娯楽に徹して作ったら、なんと快作が出来ました。

金髪にタップと聞いて、おかしな時代劇ではと偏見を持つのは勿体ない。痛快時代劇として、王道に楽しめます。
それでいて、「刀の切れ味の怖さ」を北野映画流に表したり、親分の岸部一徳がおどけてみたり、随所に作家性や遊び心が盛り込まれています。

武と浅野忠信それぞれの殺陣も迫力満点です。(天気雨での殺陣が、スローモーションなのは残念)
珍しく(失礼)、「お笑い」のシーンも笑えます。瞼に書いたつぶらな瞳! ガダルカナル・タカの「間」の巧さ!

リズムを意識した編集や動きが積み重なり、ついに壮大なタップシーンが繰り広げられるラストは圧巻。

ヴェネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)や観客賞受賞も、納得!

過去の感想記事はこちら。


第12作:『TAKESHIS'』2005年
武短5

個人的には、好きなんです。劇場で、ワクワクして観ました。
けれど、世間の評価は散々。興行成績も散々。

すごく雰囲気が面白いんだけどなあ。
スターである武本人と、売れない武のドッペルゲンガーのような二人が交差した時、世界に不可思議なねじれが生じます。
さらりと世界が入れ替わる描写や、海辺の新体操のシーンなんて、ゾクゾクするような発想じゃないですか?  美輪明宏の存在感も凄いです。

とはいえ…。
いくつか神がかった映像があるのに、それ以上に、寒気のする場面もふんだんです。
ゾマホンと松村と内山君は必要だったですか?
京野ことみの無駄使いに、クラブDJが操る円盤と女性の裸体が重なる場面も苦々しく。お得意のはずの銃撃戦もかっこ悪い。

傑作になりえたのに、すごく惜しいと思います。

ついでに言うと、当初決まっていたタイトル「フラクタル」の方がいいですよ。どうして、キワモノ映画みたいなタイトルにしたのか。(まあ…、キワモノ映画だけど…)


第13作:『監督ばんざい』2007年
武短6

悩んでいるなあ…。
初心者の脚本スクールなんかでは、「まずは身近なことを書いてみよう」と教わるそうですが、武がその通り身近な自分を物語にしてみたら、とんでもない混沌が濃縮されちゃったという本作。

次作に何を撮ればいいか分からなくなったキタノ・タケシという映画監督が、様々なジャンルの映画に挑戦するというコンセプト。相変わらず、コンセプト自体は面白いんですけどね…

江守徹の怪演など、見どころがないわけではないんですけど、『TAKESHIS'』と同じく、失笑場面もてんこ盛り。終盤なんて、やけっぱちにしか思えません。

正直、内容はほとんど覚えてない。

これが、ヴェネチア映画祭で設立された「監督・ばんざい賞(野心的な作品を撮り続けている監督に贈られる賞)」の由来だと思うと、皮肉でしかないですよ。


第14作:『アキレスと亀』2008年
武短7

何とか復活してきたぞ! という見応えのあった作品です。

「芸術なんて、まやかしだ」
芸術に疑問を呈した本作は、けれど逆説的に「芸術への愛情」に溢れています。天才か、ヘタウマか。芸術を生み出そうと躍起になる自称・芸術家たちの微笑ましいドタバタに、次第に狂気と死がにじみます。

北野映画全般にも蔓延している、身の丈に合わない夢を追い求めることへの、罰。

といっても、妻役である樋口可南子による優しい結末が爽やかです。
転がってきた空き缶をぱかーんと蹴る爽快感。なんと偶然転がってきたというから、映画の神様は北野武を見捨てていないという、まさに啓示。



そして。
北野武監督作品は、ここから新たな境地に入ります。
これまで、「バイオレンス封印」を無理やり自身に課しながら、バイオレンス映画への止まらぬ想いで苦しんでいた武。
もうやっちゃえ! とばかりに吹っ切ったその先で、「娯楽バイオレンス」というジャンルで意外なヒットを生み出していくのです。

以下、それぞれ過去の感想記事に飛びます。

第15作:『アウトレイジ』2010年

感想記事はこちら。

第16作:『アウトレイジビヨンド』2012年

感想記事はこちら。

第17作:『龍三と七人の子分たち』2015年

感想記事はこちら。

第18作:『アウトレイジ最終章』2017年

感想記事はこちら。


アウトの零士


というわけで、以上です。
北野武の次回作は、「恋愛映画になる」と名言されています。湿っぽいシーンは軒並み外してきた北野映画ですが、感情的になりがちなジャンルで、吉と出るか凶と出るか。
でも、大丈夫。
失敗したら、『アウトレイジ リボーン』があるのだから。

まだまだ、北野映画は終わらない。

北野映画 まとめ 短感<前半>はこちら。


   
   

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Posted on 2017/10/14 Sat. 13:04 [edit]

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