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たかが世界の終わり /「家族の常識」は、世間の非常識 


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 たかが世界の終わり
 (2017年 カナダ映画)  
 79/100点



いきなしですけど、この映画に一番いらなかったのは、「余命設定」ですよ。
正直言って、それがあるから神妙に観てしまうものの、本作の中身と言ったら、まるっきしコメディです。

「久しぶりに実家に帰ったら、みんなどんな顔すっかな~」とワクワクドキドキで家路についたら、超絶仲悪い家族が揉めまくってて、挙句に自分にまで絡んできた…って流れが、皮肉たっぷりでコントみたい。序盤からしばらく、私には主人公が、「状況を飲み込めないココリコの田中」に見えていたものです。

すぐにでも伝えないといけない「大事な話」を切り出そうとしても、すぐさま遮られるパターンなんて、コメディそのものです。
ヴァンサン・カッセルが「兄」という設定も、「オヤジじゃないんかい!」と突っ込みたくなったものです。

ところが本作は。
それらを極めて真面目に、エモーショナルに描いているのです。
「余命設定」があるものだから、無下に笑うわけにもいかず…、なんとも気持ちの収まりの悪い鑑賞となったのでした。

高が世界の1


それにしても。
確かにこの家族の「喧嘩の迫力」は凄まじくてヒヤヒヤします。口の悪い兄が妹をバカにし、すぐに喧嘩が勃発します。
家族ってのは、人間関係の壁がないから容赦がありません。
軽口を平気で言って、すぐさまキレて、怒鳴って、喚いて、喧嘩して…。
だけど…
周りから見れば、ドン引きするほど仲が悪そうなんですけど、しばらく経てば「元通り」 …それって普通ですよ。そういう「家族の気持ちの悪さ」が、本作ではよおく表現されていたと思います。

終盤で巻き起こる「最大級の口論」は、唐突だったり泣き叫んだり…、それこそ外側の人間が見たら「通報」するレベルです。けれど、「内輪」からすれば「日常茶飯事」で、大事ではなかったりするものです。
余談ですけど、磯野家だって尋常じゃないもの。姉貴がホウキを持って鬼の形相で弟を追いかけ回したり、隣家を揺るがすほどのオヤジの怒鳴り声が頻繁に聞こえてくるなんて、誤解されれば児童相談所が駆け付けますよ。

本当に仲が悪いのかどうか。
それは、外側の人に分かるものではないのです。

高が世界の


ただし、本作の主人公・ルイ(ギャスパー・ウリエル)はちょっと違います。
ルイは12年もの間、家族と疎遠に暮らしていました。
それが久しぶりに帰ってきたら、そりゃあ…、ちょっと「身内感覚」にはなれません。物心付いてからはほとんど初対面のような妹は、ルイに優しく接しますが、それは、ただの「他人行儀」に過ぎません。すぐに口喧嘩を始める兄との方が、実のところ「仲がいい」のかもしれないのです。

おまけに、ルイ自身がどこか「他人行儀」ですもん。
すました顔で微笑をたたえ、気取った喋り方でノリも悪い。喧嘩が始まっても、仲裁もせずにキョトン。母親と妹がダンスを始めても、参加することなく棒立ちのまま。私には、彼自身が家族と一線を引いたままなんだなーと感じられたのです。
もちろん、余命いくばくもない彼が沈んでいるのは当たり前なんですけど。
それを家族に告げるタイミングがなく、ことごとく不発。
おまけに。
元々家を放り出したルイのことが気に入らない兄は、悪口雑言の度合いを徐々にエスカレートさせていくのでした。

つまり。
今さら、何をのこのこ帰ってきたんだという話。

ルイのいなかった12年間、兄は兄なりに家族を支えてきたわけです。それなのに、何やら重たい爆弾を携えて帰ってきたルイは、兄にとっては均衡を破る厄介者でしかないのでした。
ひどい奴とは思いますが、兄に深く根差している「劣等感」の哀しさは胸に迫ります。不満の爆発とともに、運転中の車のスピードが尋常なく上がっていく場面の怖さ。この辺り、『ゆれる』の兄弟を思い出しました。

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さて。

びっくりするくらい豪華なキャスティングは見どころです。
予備知識がなかったものだから、「マリオン・コティヤールと、レア・セドゥに似てるなあ」と思ったら本人たちだった。
ハリウッド女優のオーラを消したコティヤールの、「役柄の幅」に驚きました。
レア・セドゥの激しい感情表現には、ドキリとします。
さすがの二人の瑞々しい芝居。…だから、なおさらヴァンサン・カッセルがどう見てもオヤジなんだってば。

本作の監督:グザヴィエ・ドランは、若き天才と言われています。本作も、カンヌ映画祭でグランプリを獲得しました。
実は、ドラン作品は初めてでしたが、正直、評判ほどの「天才ぶり」を本作からはあまり感じません。
好みの問題とは思いますが、急なMV風の場面や、思わせぶりな人物のドアップの描写などは、奇抜ですけど、あざといようにも思うのです。

高が世界の3


ところで。

ルイの死後、この家族には何かが起こるでしょうか。
…たぶん、最大級の大ゲンカと、一時の喪失感が襲うとは思いますが、結局は元に還るでしょう。
それほど、この家族の絆は本当は盤石で、簡単には壊れないように思うのです。
…そう。「たかが世界(ルイ)の終り」くらいじゃ。


  

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Posted on 2017/10/26 Thu. 19:40 [edit]

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