クソ野郎と美しき世界【感想・レビュー】美しき、彼らの「新しき世界」!

クソ野郎と美しき世界
(2018年 日本映画)
79/100点
話題の映画もスルーして、時間を作ってなぜ本作を観に行ったのか。
…なぜに??
仕事終わりに慌てて天神行き西鉄電車に飛び乗り、天神東宝のあるソラリアプラザに向かっている最中、私自身、そう何度も自問したものです。
答えは簡単。
最近になって、TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』を聞いているから。
たまに投稿もするくらい、どハマリ(たまにネタメール読まれてます)。爆笑問題の太田光の話術の鋭さ、メール読みの巧さ。この期に及んで、凄いもんだなあと再認識。
…やっぱり、テレビよりラジオの方が面白いよなあ。
そんな太田光が、久しぶりに映画を監督したのが、本作なのであります。
むろん、4話オムニバスの中の一編のみですけど。
番組を聞いているよしみ、感想メール送ったら読まれるかも!? という邪まな想いもあって初日鑑賞。
後日、きっちりラジオで読まれましたよ!

ということで。
もちろん、本作のメインの趣旨は、某J事務所を飛び出した元・SMAPの三人が始めた「新しい地図」のプロジェクトというところ。
のっけから、「新しい地図」のPVのようなテンポのいい映像が小気味いいです。
「縛り」のなくなった3人が、思う存分、想いの通りに、「自由」に「飛んでいけている」のかどうか。
その進化、真価が問われる本作の出来栄えやいかに!
ということで。
1話ずつ感想をば。
エピソード1『ピアニストを撃つな!』 監督:園子温 主演:稲垣吾郎

のっけから、もう園子温監督節が炸裂なんですよ!
世界観とか、キャラ設定とかがぶっ飛んでるんですよ!
そいで!
私が園子温が苦手なんで、出だしで困ったわけ…
個人的には、掴みでズッコケたんですよねえ。
園監督が好きな人には、いいのかもしれません。
どうも…、園監督の極端に振りきった演出が苦手…
言うなれば、マンガチックな世界です。
犬の何倍もの嗅覚を持つというマフィアっぽい組織のボス(浅野忠信)が、逃げた女を追いかける!
つまり、『マッドマックス 怒りのデスロード』を、すごく安っぽく作った感じ!
洋風の悪人たち、ピンクセクシーな女、夏祭りの風景、鳴り止まないオシャレなピアノ音、その全てがチグハグ過ぎて頭痛い…
相変わらず、モブの女性の描写が、「この人、絶対蔑視してるよね…」と疑いたくなる雑さ。
けど、園監督は不思議なもんで、「どぎついなあ…」と思っていた演出が、急にクセになる時があるんです。
本作でも、失踪するピンクのセクシー衣装を着たお姉さん(馬場ふみか)が、両手を広げて「愛してる~!」って叫び続けるシーンを繰り返される内、なぜだか最後の方では印象的だったりした。
ついでに言うと、赤毛女子の疾走といえば、ドイツ映画の傑作『ラン・ローラ・ラン』を思い出したり。
あ、そうそう! 肝心の稲垣吾郎はピアニスト役。あまり…、印象に残っていない。
エピソード2『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』 監督:山内ケンジ 主演:香取慎吾

これもまた、不思議な世界観の話です。
「歌喰い」という女の子に歌を喰われると、急に歌えなくなるという… 妖 怪 で す な。
けど。
このエピソードは、結構好きでした。
というのも、出てくる役者の自然体の芝居に引き付けられました。警官と酔っ払い。ストリートシンガー。警察の取り調べ官。みんな地味なのに巧い!
それでいて、展開はやはり漫画チックだから、今度はそのチグハグが良かったのです。
特に!
古舘寛治が異世界での「尾崎紀世彦」という、脱力感しかないキャスティングも楽しいのです!
「歌喰い」によって香取慎吾が歌えなくなるという場面でも、歌い出しで「あ! SMAPの!」と分からせる辺りが、皮肉が利いていていいですな。
ただし、本作のタイトルからも、そういった皮肉で責める映画かと興味を引いていただけに、そういう所はココだけでした。
で!
結構、面白く観ていた本エピソードなのですが。
惜しい! ネタバレすると(反転で)「歌喰いのウンチを食べて歌を取り戻すってのが、ノレません。ウンチに見えないように形も色も変えているとはいえ、便器に一度浮かんだものを拾い上げて口に入れてるってだけで、そこがもう…ノレません。」
ついでに言うと、香取慎吾の「太り過ぎ」が、ちょっと気になった。
エピソード3『光へ、航る』 監督:太田光 主演:草彅剛

で、オレは結局これが観たかったの!
というわけですが、これが結構良かった!
…どころか、ひいき目ではなく、4つのエピソードの中で一番面白かった。
驚いたのが、本エピソードのファーストカットの草彅剛。
『画』自体も素晴らしいですが、草彅剛の目力の鋭さ。
終始ぎゃんぎゃん喚いてる尾野真千子もスゴい迫力。
本エピソードもまた、役者陣の芝居で魅せますね。
畑道に置かれたアメ車に乗っかって、二人が喋るシーンの奇妙な美しさ。
本作は映像もいいです。

ラストでタイトルの意味が分かる演出が、ニクい。
ちょっと狡いけど、最後の「ロクデナシ」の優しい表情にやられます。ちょっと、ホロっときたものです。
なんか…、ちゃんとした「映画」になってるじゃないか…。
まさか、ハードボイルドタッチとも思わなかったから、意外性も良かった。
太田光監督の長編が観たいと、本当に思ったものです。
恐らく、あるんじゃない…? オフィス北野の森社長からのオファー。
で。
やっぱり、三人の内では、草彅剛が一番「役者」ですね。
エピソード4『新しい詩(うた)』 主演:稲垣吾郎・香取慎吾・草彅剛 監督:児玉裕一

で、ラスト。
ここでは、各エピソードの顛末や謎だった部分が明かされる種明かしパートになっています。
それも、ミュージカル調で。
とにかく、にぎやか。
これまでのキャストが勢ぞろいで物語のラストを彩ります。
まるで、パラレルワールドが重なり合ったような奇妙なイメージ。
ただ…、まあ…、そこまでの種明かしでもないし、そこまでワクワクするような曲でもミュージカルでもないんだよなあ…
とはいえ。
思い切った!! という羽目をはずている感があって、「新しき世界」に飛び出した三人の所信表明としては良かった気もします。
なにより。
スタッフ・キャストともに、豪華ですもん。監督も役者もスタッフも、その道の一流が揃っているのが凄い。
キワモノ映画のように誤解する人もいるかもしれないし、元・SMAPファンのための映画、と思われそうですが。
なんのなんの。
一見の価値はある…気がする!
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