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HANA-BI ベネチアは「アウトレイジ」を望んでない…きっと。 


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  HANA-BI
 (1998年 日本映画)85/100点


本作は、10月6日に新作「アウトレイジ ビヨンド」の公開を控えた北野武監督7作目にして、泣く子も黙るベネチア映画祭で金獅子賞を獲得した傑作です。

とはいうものの、見た人は国内ではあまりおらず…北野映画というと、「座頭市」か「アウトレイジ」くらいしか思いつかないのが一般的です。できたら、「世界の北野」を決定付けた本作を、一度鑑賞してあげてほしいなあと、1作目からファンを続ける私は親心のように思うのであります。

ただし、「座頭市」「アウトレイジ」は思いっきりエンターテイメント重視で、観客の視線を意識しまくってる映画なのに比べ、こちらは作家性を重視したアート系の映画なので、一般向きとはいい難いのは確かです。
それでも、最高傑作といわれる4作目の「ソナチネ」に比べれば、はるかに鑑賞しやすい作りではありますけれど…

あらすじはいつものように簡単です。「部下を死なせてしまった刑事の西は、銀行強盗で大金を奪い、病で余命いくばくもない奥さん(岸本加世子)を連れて、金を狙うヤクザや警察に追われながら、逃避行する」という話。

バイオレンス描写は、いつもながら強めに表現されています。
部下を撃ち殺した犯人に何発も銃弾を浴びせたり、割り箸を目に刺したり、鋭利な石で頭をかち割ったり、殴ったり、殴ったり、頭突きしたり、殴ったり……あ、待って! 引かないで!
その…北野武監督の持論で、「振り子の法則」ってのがありまして、針を思いっきり「暴力」の側に振ることで、その反対側の「愛」や「やさしさ」を際立たせることができる、という理屈で作られているわけです。

ただならぬ暴力シーンは多いですが、反対に、病に侵された奥さんに対する「やさしさ」は、目一杯に溢れています。
別名「ギャップ効果」ですね。
ゆえに本作は、北野映画では6作目「キッズリターン」に次いで、意外にも女性受けが良かったと聞きます。

無題
(暴力シーンの反対側で、徹底して表現される「やさしさ」)


「アウトレイジ」は、斬新な「暴力」で話題になりましたが、その片鱗は本作にもあります。
遠方の湖のほとりから、西が徐々にカメラに向かって歩いてきて、撮影カメラの目前まで来ると、西の目の前には二人のヤクザものが立ち塞がっているのが分かります。
「西、組長が会いたがって…」とヤクザものがセリフを言い終わらない内に、西はハンカチにくるんだ鋭利な石で、二人のヤクザを電光石火で打ち(切り?)倒すのです。
観客さえ、武器の存在を知らされていないので、この「突発的な暴力」には驚きました。
しかも、遠方から歩いてきて攻撃するまで、実にワンカットです! 

この、いつ暴力シーンが始まるかわからないという怖さは、北野映画の大きな特徴です。
時々、「もうちょっと話を聞こうよ」と思うくらいです。けれど、喧嘩の常套手段は「先手必勝」なのだから、先に手を出した者勝ちというわけでして。
北野武は、以前に岩井俊二を批判した時、「拳の喧嘩をしたことがないのがすぐわかる。本来は殴り合いなんてありえない。一発で立てなくなるから」と言っていました。

本作の特徴は、時々挿入される「絵」にもあります。
以前バイク事故で入院・謹慎をしていた際に、武自身が書き溜めていたという「絵」。
西の同僚であり、犯人に撃たれた後遺症で車椅子生活になった堀部(大杉連)が、自殺未遂の果て、次々と絵を描くようになるという場面で多用されます。
絵の良さのことは分かりませんが、印象的で神秘的でさえあるこれらの「絵」の数々は、やはりこれも、暴力シーンの対比として効果的に使われています。
ただ、それで簡単に癒しなどを表現しないのが、武流。
堀部は、初めこそ「花」と「動物」をミックスした生命力の漂う「絵」を描いていますが、時には、雪景色の下に真っ赤な「自決」と書かれた「絵」を描くなど、複雑な心境をのぞかせるのです。

無題
(印象的な絵が、実は、シーンの所々に張られています)


奥さんとの逃避行では、基本「やさしい」シーンの連続なのですが、一緒に並んで写真を撮ったりしないといった昭和の男気質も出てきます。(逃亡中だから、という意味かもしれませんが)
撮影当初は、西が奥さんをののしったりするシーンも考えていたようですが、「女性の心理として、それは受け止められない」という女性スタッフのアドバイスを素直に受け入れ、終始一貫「やさしい」夫です。
本作の問題点は、ここに、「観客迎合」を感じてしまうこと。
また、どうしても普段の芸人としての武を見ているから、「なんか、しらじらしい」と思ってしまうかもしれません。「そんな人じゃなかろーや」って。
海外では、そういったイメージを知らないから、手放しで評価されたのかもしれませんね。

ただ、この「やさしさ」は、作り手側も最初から「西の独りよがり」として描いている可能性があります。
この逃避行が、果たして奥さんにとって本当に「癒し」となったのか。 
ラスト直前に、これまで口を利かなかった奥さんが初めて口にする言葉は、何も救えなかった、意味がなかったとも捉えられることができるからです。
久石譲の名BGMも絡み、ラストは悲しく、壮絶な形で終わります。

海外で「キタニスト」なるファンを増加させた本作は、見所を満載に含んだ傑作です。
 



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Posted on 2012/09/19 Wed. 13:51 [edit]

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