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パーフェクトワールド【感想・レビュー】父親の虐待を描く。 


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 パーフェクトワールド
 (1993年 アメリカ映画)  
 85/100点



<結末のネタバレをします。>


今なお、精力的に映画を作り続けているクリント・イーストウッド監督作品です。

イーストウッド監督作と言うと、昔はアウトローな刑事アクション映画のイメージでしたけど、近年は『ミリオンダラー・ベイビー』『グラン・トリノ』といった骨太な人間ドラマがメインです。

渋い作風ですね。

で、本作ですが…、意外にも、泣きの王道を突いてくるエンタ―テイメントとして、存分に楽しめる一作です。悪漢の脱獄犯と、心の傷を負っている少年の逃避行…、っていうプロットからして、王道。

パーフェクト


脱獄犯ブッチを演じるのは、ケビンコスナー。彼を追う老練の警察署長レッドは、クリント・イーストウッド。2大スターの共演なのです。共演シーンはほとんどないですけど。

とにかく王道なものだから。
凶悪犯であるはずのブッチが本当はいい人であるという描写が、序盤から展開されていきます。その噛ませ犬として、一緒に脱獄したテリーという男が、とにかく凶暴。この乱暴者テリーに怯むことなく、クールな態度で黙らせるブッチのカッコよさ! というわけです。

パーフェクト2


で。

ブッチと、逃亡中の人質である少年:フィリップの物語になっていきます。

そう。いい人とはいえ、ブッチは少年を人質にとります。銃を使って人を脅します。そもそも脱獄中に出くわした刑務所員は犠牲になっています(ブッチが殺したわけではない、そうだけど)。だからこそ、フィリップに対する彼のフトコロの広い態度に痺れるわけですね。つまり、王道のギャップ効果。鑑賞者全員をストックホルム症候群(人質が犯人に絆を感じるアレ)にたたっこむのでした。

少年フィリップが、とてもいい味わいです。表情に乏しく、言葉数も少なく、自信のない雰囲気です。ブッチが彼に目をかける気持ちが何となく分かります。福君や 芦田愛菜ちゃんみたいな芸達者だったら、きっとブッチは心を閉ざしたことでしょう。このキャスティングの妙は、『菊次郎の夏』を思い出します。

フィリップの、「ん~、オチッコ漏れる~」という、目をきゅっとつぶった分かりやすいお芝居が、かえってグッド!

子どもの頃から父親不在でいたブッチは、同じ境遇のフィリップの気持ちが痛いほど分かるのでした。フィリップも、次第にブッチを父親のように慕っていきます。逃げ出すチャンスがあっても、ブッチとともに行動することを選ぶのです。

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以降、ブッチとフィリップは共謀して車を強奪したり食料をゆすったり。フィリップも無断でおもちゃを拝借。まさに『万引き家族』が形成されていくことは、高須院長には内緒です。

イーストウッドは百戦錬磨の捜査力でブッチを追い詰めていく役かと思いきや、意外に活躍しません。たまたまブッチとすれ違ったり、追跡車両ごと林に突っ込んだり、ほとんどコメディリリーフの立ち位置です。ブッチの過去に絡んでいたりするのですが、狂言回しに徹している様子。

さて。

本作のテーマは「虐待・暴力の連鎖」です。

ブッチは父親からの暴力にさらされた経験がトラウマになっています。道中、子どもに激しい叱責をしたり、手を上げる親に対し、彼は激しい怒りを表します。しかし、その解決の仕方が、やはり「暴力」 それが、本作の哀しい結末に繋がっていくのでした。

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<以下、結末のネタバレです。>


ラストは衝撃です。
フィリップは、なぜブッチを撃ってしまったのか。やはりフィリップも、父親からの暴力に対してトラウマがあったのだと思います。ブッチが虐待親にした暴力に、彼は反射的に反応してしまったのです。父親の理想像をブッチに重ねていたフィリップは、裏切られたような気持ちさえしたはずです。それが、恐らく彼に引き金を引かせた理由。

ブッチは、瞬間、それを理解したと思います。ブッチは、フィリップを全く責めません。怒りません。自分が蒔いた暴力の種だと、きっともともと頭の良い彼は、察したのです。

親のせいにしてはいけないのでしょうが、もし、ブッチの父親が普通の人だったら、彼は気のいい青年として人生を歩んでいたように思います。

ラストの彼の表情に、そんな爽やかなもう一つの顔色が見えました。それが彼の本質だからなのか、もしくは、単にケビン・コスナーだからなのか。

本作は、1990年代の傑作の一本です。


パーフェクトワー4


  

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Posted on 2019/02/07 Thu. 21:49 [edit]

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