素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

メランコリア /危険厨に悩むゲンズブール。 


 無題
 メランコリア
 (2012年 デンマーク映画)
 85/100点



「明日が地球最後の日だとしたら、最後には何が食べたい?」というお決まりの質問があります。
ステーキ?
フォアグラ?
寿司?
おにぎり? 

正解は、「地球最後の日に、食欲なんかあるわけない。」でした。

本作は、悪名高き(?)ラース・フォン・トリアー監督の最新作です。
お薦めしにくいけど…、これは傑作です。

トリアー監督は、『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『アンチクライスト』と、いつも「女性のうつ(メランコリー)」を主体に描きます。
トリアー監督は、自身がうつ病を患っている上、カンヌでのナチ擁護発言など、空気読まずの「困ったちゃん」です。
本作の主人公には、監督の性格がそのまんま投影されているのです。

キルスティン・ダンスト演じるジャスティンの「うつ症状」が描かれます。
そして、もう一つ描かれているのが、「地球最後の日」です。
 
惑星「メランコリア」が地球に急接近する、という設定でお話は進みます。
もちろん、『アルマゲドン』のようなパニックムービーではありません。
万一、そんな映画を期待してDVDを借りようものなら、冒頭5分で、十円玉が挟めるほど眉間にしわが寄るでしょう。

「うつ」と「地球最後の日」? 
この二つのテーマがどう絡まりあうかというと…


(以下、ネタバレしてますので、ご注意を)


映画は前半(ジャスティン編)と、後半(クレア編)の2部構成です。
前半では、ジャスティンの結婚式の一日を舞台に、ジャスティンの心理状況を次から次へと描きます。

2時間も披露宴会場に遅れておいて、客を待たせながら先に愛馬の元に行っちゃうなんて、見ているこっちがハラハラします。
そもそも田舎の狭い道を、むりやりでっかいリムジンで進もうとする新郎・新婦は、地球規模のバカップルぶりで、残念無念です。

その後も、ジャスティンは会場を抜け出したり、花婿の話を完全スルーしたり、突然雇い主の会社の社長に毒づいたり…
観ているこっちは、頼むからもう何事も起こさないで! とジャスティンの姉のクレア同様、不安です。

それにしても、次から次へと人を傷つけるジャスティン。
「憂鬱そうなジャスティンの向こう側で、怒って車で去っていく客」という構図。
これを全く同じく2度続けられた時は、思わずコントみたいで吹いてしまいました。まさに、テンドンです。

もちろん、彼女は深刻な「うつ」ですので、悪意でやっているのではありません。
しかし、周りの理解を得ることができなければ、「とんでもない人」とみなされてしまうのです。
理解を示そうと努力する姉のクレアでさえ、 「時々あなたが、たまらなく憎くなる」と口に出してしまいます。

無題2
(披露宴にて、スーパーマリッジブルーを惜しげもなく披露)


前半では、見ているこちらの息が詰まりそうになるほど、ひたすらジャスティンの「うつ症状」が描かれます。
ある意味これは、後半の伏線。

で。

後半は姉のクレア編です。クレアを演じるのは、前作『アンチクライスト』で、衝撃的過ぎる演技を見せたシャルロット・ゲンズブールです。今回は、普通の人。

さて後半では、「地球最後の日」に至るまでが、クレアの視点で描かれます。
なぜ、前半はあんな感じだったのか。そのすべての意味が、後半で判明するというわけです。
 
惑星「メランコリア」は、少しずつ地球に接近します。
クレアは不安で潰れそうになっています。クレアの夫であるジョン(キーファー・サザーランド)は、ゴルフ場を経営する大金持ちです。調査能力に優れ、「メランコリア」は地球に衝突しないという確信を持っているので、冷静です。
息子が一人います。聡明そうな小さな男の子です。

そして…、歩けないほど「うつ」が重症化したジャスティンも登場します。

怖いのは、登場人物がこれだけということ。
屋敷にいた執事は、途中でいなくなります。
「メランコリア」の接近に、他の町の人々のリアクションや報道シーンなど、一切出てきません。
世界から隔離されたような状況が、とても寂しく、不安を深めさせます。

しかし、ネットは健在です。クレアは、「メランコリアは地球に衝突するか」という情報を、一心不乱にネット検索で探ります。
「無機質な情報」に恐れおののくクレア。

驚きました。まさに3.11の時、ネット上は「福島第一原発事故」の「不安な情報」に溢れ、多くの人がクレアと同じような状況に追い込まれました。多くの日本人は、クレアに容易に感情移入できることと思います。
 
アイディアが秀逸なのは、「惑星メランコリア」が地球から離れていっているか、もしくは接近しているかを確かめる方法です。
針金を、空に見える「メランコリア」の大きさに合わせて円状にし、数分の時間が経った後、「メランコリア」がその円より小さくなっているか、大きくなっているかで測るのです。

このアナログ感が、かえって観客の不安な感情をゆさぶることに成功しています。
円状の針金を「メランコリア」に合わせようとする瞬間、すごくドキドキします。
だって、クレアの動揺が分かるから、凄く怖いのです。

次第にジャスティンの立場と、クレアの立場が入れ替わります。 
失うもののないジャスティンと、幼い子どもを抱え、裕福な暮らしをしているクレア。
「この世の終わり」に、二人の反応は実に対照的です。

前半では壊れそうだったジャスティンが、後半では余裕タップリです。
前半では気丈だったクレアが、後半では悲しみに暮れています。


無題2
(どんな人間にも、平等に死が訪れる…)

 
いろいろな見方はあるのですが、おそらく…(たぶん?)、この一連の騒動はジャスティンの妄想です。 
私が見つけた唯一の根拠は、「18番ホールまでしかない」としきりにジョン(クレアの夫)が話していたゴルフ場に、「19番ホールの旗」があること。
これにより、「現実ではない」と思いました。

また、屋敷の敷地からなぜか外に出られない(馬が進むことを拒否する)のも、狭い妄想の世界であることを示しているように思います。

これは、ジャスティンの願望なのか。
なぜ、こんな願望を持つのか。

3.11の話に戻ります。
あの時の「ネット」の状況はむごかった。
放射能で日本がどうなるかわからない大変な事態に、ネット上では「最悪の事態を望んでいるような狂気」が書き込まれていました。
勝ち組、負け組の大逆転だ! と言わんばかりでした。

トリアー監督の狙いは、そんな下衆なことではないでしょうけれど。
「あいつは、うつ病だ」などと指をさしている連中に向かって、「いざ大事が起きれば、みんな戸惑い、たじろぎ、苦しむのだ」と、私怨をぶつけているのかも。

本作の絶望的なラストシーンを、トリアー監督はこう解説します。
「この結末は、これ以上ないハッピーエンドなんだ」


 

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Posted on 2012/09/23 Sun. 08:34 [edit]

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