素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

マルサの女 セリフが好きなので、字で再現しました。 


 無題
 マルサの女
 (1987年 日本映画)85/100点


もう25年も前の映画なんですね。古いなー。言わずもがな伊丹十三監督の大ヒット作です。
「大人の社会見学」と言わんばかりに、社会の暗黒面を「お金」を切り口にして描きます。
「脱税」を取り締まる「マルサ」の存在は、この映画で初めて白日のもとにさらされたとか。
それだけ、「脱税」をテーマにするという発想は斬新でした。

しかし、その昔、映画は「反体制的」でなければならない、という奇妙な風潮があったらしく、体制側である「マルサ(国税局査察部)」を主人公にして描くことに、当時批判的な声が大きかったそうです。ま、サヨク的というやつです。
そもそも私は、「〇〇は、〇〇でなければならない。」という、勝手に縛りを決めつけた既成概念が、だいっ嫌いです。私にとっては、この体制的な社会派エンターテイメントは、自身の映画鑑賞史上、初めてハマった映画となりました。

公開当時は小学生でしたので、初めてこの映画を見たのはリアルタイムではなく、高校生の時でした。(小学生の時に観てたら背伸びし過ぎです)
しかし高校生の時でも、本作の内容の大半は理解できませんでした。(背伸びしてました)
今見ても、やっぱり大半は私には難しいですけど。(結局背は伸びなかった…)

とにかく、何やら大人の世界の怪しい秘密にワクワクしたものです。
何か楽しそうなことをコソコソやっとるぞと。
何より、伊丹十三の演出がテンポ良いし、ひたすら知的だし、動き一つが緻密に計算されています。ほんとに細やかな演出が施されているのです。
特に伊丹十三自身が書き上げた独特のセリフの調子には痺れました。
リアルでいて、悪意に満ちたことをサラリという感じとか、何とも格式ばった言い方などがツボだったんです。
出てくる役者は、抜群にうまい人だらけですから、そのリアルなセリフをまたリアルに言うもんで、もう、そのどリアル具合といったら、スーパーリアル麻雀どころの騒ぎじゃありませんから!(??)

さて、そういうわけで、あまりに本作のセリフが好きなので、ここから好きなシーンのセリフを再現しながら、感想をしたためようと思います。
 

冬。
ラブホテルの経営者・権藤(山崎努)とそのホテルの雇われ社長(室田日出男)が、癌で余命いくばくもない爺さんの病院へ。その帰り道。

権藤
「よし、じゃあ爺さん社長にして会社設立しろ」
社長
「会社の名前なんにします?」
権藤
「どうせすぐに潰れるんだ、何でもいい。…爺さんの名前なんていうだ?」
社長
「ハカマダ リヘイです。」
権藤
「じゃ、ハカマダ不動産でいいだろ。…爺さん、来年は死んでるんだろうな」
社長
「そりゃあ、もう保証付きです」
 

いきなりオープニングから黒い会話です。
当時は意味がさっぱり解りませんでしたが、イケナい雰囲気はばっちり感じました。
雪景色の映像も良く、とても印象的で見事な掴みでした。 


ベンガルの妻
「あの…サラ金の方はほんとに大丈夫なんでしょうか…?」
社長
「サラ金のほうはこっちで始末付けるから、心配いらないよ。」


セリフ自体は普通ですけど、室田日出男が強面なのに、無機質に「心配いらないよ。」と言うのが、むしろ心配で、心配で…。
ダメ夫ベンガルと、ちっちゃな子供がポツンといる絵がなんとも悲しい。


続いては、まだマルサに配属されておらず、一介の税務署員である主人公・板倉亮子(宮本信子)と、申告漏れの疑いがあるスーパーの経営者夫婦とのやり取り。
 
板倉
「これだけ(自分の店に)品物そろってると奥さん楽ね。ほとんど買い物必要ないでしょ」

「そうね…外で買うとしたら米に野菜、それと魚くらいなもんかね…」
板倉
「すると…お店のものを…おたく5人だから…どのくらいですか? 月に10万くらい食べてますか?」

「まあ、10万ってほどでもないだろうけど、8万は食べてるんじゃないですか」
板倉
「8万ね…」

「…なんです?」
板倉
「その8万は、ダンナさん、売り上げに入ってますか?」

「入ってるわけないでしょ。自分たちのものを自分で食べるのよ。なんでそんな売り上げになんのさ」
板倉
「このお店は会社になってるんでしょ」

「そうよ」
板倉
「では、お店の品物は会社のものであって、社長個人のものじゃありませんねえ」

「そりゃ理屈はそうだけど―」
板倉
「自分のものでないなら、手に入れるにはやはり買うのがほんとでしょ。…違いますか?」


理路整然。さらりと誘導尋問する血も涙もない仕事っぷりです。
この後、64万円を申告漏れと指摘し、スーパー経営者の妻を激怒させます。
自分の職務に完全に正義ありと心から思っている人間ほど、恐ろしいものはない、という描写。
この先に訪れる、脱税のプロと摘発のプロの大乱戦を予感させます。
 

続いては、権藤の前に、謎の男がある取引を持ちかけるシーン。

権藤
「誰だい、あんた」
謎の男
「名刺を出すような者じゃないですね。ま、クリーニング屋ですね。お金のクリーニング屋。…おたくくらいになれば、どうしたって裏金がたまっちまう。たまるのは結構だけど、裏金はどこまでいっても裏金だ。おおっぴらに表に出すことは出来ない。表に出せばたちまち税務署が飛んでくるからね。…ま、仮に、5千万円の裏金を表にだしてあげたら、社長いくら払いますか。領収書買うときは1割ですよね…」
権藤
「…それで?」
謎の男
「(宝くじを取り出して)5千万の当たりくじです。(新聞を出して)ほれ、番号はここに書いてあります」
権藤
「それじゃあ、あんた、この宝くじを俺に五千五百万で売りつけようってのか。ガハハハ、こいつぁいいやぁ、ガッハッハッハッハッハ」


黒いわあ。黒い会話だわあ。宝くじは非課税なんですよね。
そういうやり取りもあるということ。

無題
(右上は心霊ではありません。怨念の如きプロの目をした板倉です)


さて…細かく取り上げ過ぎて、長くなってしまいました。
ちょっと飛ばしていきます…

マルサに昇格した板倉は、権藤に目をつけ、銀行で権藤の口座をしらみつぶしに調べます。

銀行員
「確かに権藤様は、私どもとお取引いただいていますが」
板倉
「では、この調査書の別紙にありますように、権藤商事、権藤英樹、権藤太郎、そして杉野光子ですね。この関係一切の預貯金および取引について出して頂きたいわけです」
銀行員
「失礼ですが、一切とおっしゃいますと?」
板倉
「ええ、ですから、権藤さんなら権藤さんの預貯金。名義のいかんにかかわらず、一切見せて頂きたいということです」
銀行員
「ご主旨はわかるんでございますがねえ…、これですねえ…このー架空名義ってのがまた難しいんでしてねえ…。ご本人がお見えになって、別の名前で預金してくれとおっしゃったらそれはわかります。しかしですねえ、板倉さん。これ、もしご本人でない方がお見えになって、住所・氏名・印鑑を登録なさったら、こりゃあ、もうわかりませんねえ。ですからねえ、板倉さん。銀行には様々なお金が入ってまいります。ご本人の名であるものないもの。税金払ってあるものないもの。しかし、これはこちらで見分けることはできません。また、それを見分けるのは銀行の仕事ではございません。でも、どうしてもとあらば止むをえません。なんでもお目にかけます。どうか私どもの全預金の数値を、これ4万からございますが…ご自分でお洗いになってください」


名優・橋爪功が飄々と言ってのけます。
が、次のシーンでは、本当に4万のデータを独力で精査している板倉の姿と、あきれ顔の橋爪功。笑える。

さて、終盤だ。ついに権藤宅に査察に入るマルサたち。
なかなか裏金が見つからないことに機嫌を良くした権藤が、板倉の上司である花村(津川雅彦)の「どうしたら金がたまるんだ?」という質問に、小気味よく答えます。

権藤
「せっかくだから教えてあげるよ。金貯めようと思ったらね、花村さん。使わないことだよ。あんたは葬式がありゃ1万、結婚式がありゃ2万と出すでしょう。そんなもの出してたら金は残らない。100万あったって使えば残らない。10万しかなくても使わなければ、まるまる10万残るんだからねえ。あんた、今、ポタポタ落ちてくる水の下にコップを置いて、水、貯めてるとするわね。あんた、喉が渇いたからってまだ半分しか溜まっていないのに飲んじゃうだろ? これ、最低だね。なみなみいっぱいになるのを待って…それでも飲んじゃだめだよ。いっぱいになって…溢れて…垂れてくるやつ…(ペロッと)これを舐めて。我慢するの。そうすりゃコップいっぱいの水は…」

 
次の瞬間、板倉亮子が寄りかかった本棚が反転して、本棚の裏の隠し部屋が見つかるわけです。
ちょっとゆるいんじゃないかな、本棚の仕掛け。
このシーンのセリフは、とにかく山崎努が頂上レベルの芝居で魅せます。

ラストで権藤は、公園で遊んでいる子供たちを見て、「ああいうのを見ると、胸がかきむしられる気がする。幸せが手からすり落ちていくように思うんだ」と苦悩を吐露します。ちょっともやもやする終わり方なんですけど、これも、ある意味リアルかな。でも、できたらもう少し竹を割ったように気持ちの良いラストが見たかった。
 
とにかく出てくる情報が面白くて、とっても好奇心を爆発させてくれる映画なのでした。
 
続く「マルサの女2」も、負けじとセリフが面白いです。
三国連太郎の「地上げ屋必要悪説」とかね。
津川雅彦の「政治家の泣かせ方」とかね。最高ですよ、ほんと。
またの機会に、今度は「マルサの女2」のセリフを書こうかなと思います、が、まあ…しばらくしたら…です。
ふー、疲れたー。
 
 
続編「マルサの女2」の感想はこちら。


  

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Posted on 2012/09/25 Tue. 16:12 [edit]

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