素人目線の映画感想ブログ

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座頭市 /機械仕掛けの座頭市。 


 無題
 座頭市
 (2003年 日本映画)
 80/100点



北野映画において、初めての大ヒット作です。
前作が、難解(個人的に駄作)の『dolls』ですから、本作のエンターテイメントに割り切った作り方に、大変驚きました。
こんな方向転換ができるのかと、嬉しく思ったものです。
 
「金髪頭」や「タップ」といった点がクローズアップされ、キワモノ時代劇のように評されることもありますが、見事に武流の「時代劇」が表現されています。
恐らく、勝新太郎の座頭市を期待すると肩透かしを食らうでしょう。

頭髪を「金髪」にすることで、勝新太郎の市とは違いますよ、ということが表されています。
本作は、勝新の座頭市に比べると、やはり北野映画テイストな「乾いた」感じです。おまけに、主人公の市には、どこか機械的な雰囲気さえあります。

例えば、扇屋の主人(石倉三郎)の部下が刀を振り上げると、まるで「ウィーン」という機械音が聞こえてきそうなほど機械的に、市は仕込み刀を構えるのです。
浪人(浅野忠信)と居酒屋で初めて対峙した時も、浪人が刀をほんの少しカチャっと鳴らした瞬間、市はとっさに仕込み刀を構えます。

すごい…。まさに、ゴルゴ13の「後ろに立ったら、誰であろうとぶんなぐる」的システム。
「このドメクラ!」と叫んだ賭場の男の腕を一瞬で切り落とすなど、システムが過剰反応を起こす時もありますが。
絶対に、友達ができないタイプです。危なくて近寄れたもんじゃありません。
 
機械仕掛けのような市は、人間的感情があまり見られません。
そのため、人によっては「物足りない」と感じるかもしれないし、「得体が知れない怖さ」を感じるかもしれません。

市は、賭場仲間の新吉(ガタルカナル・タカ)や、ワケありの芸者姉妹には優しいので、市のセンサーは「コノヒトタチ…トモダチ」と判断しているのでしょう。
おお! そうして考えると、フランケインシュタイン的な、怪物と人間の絆が結ばれる感動物語のように見えてこなくもないですね!

本作の特徴は、いろいろな「芸のプロ」がたくさん出てくる所にもあります。
古典的なお座敷芸や踊り、タップ、和太鼓が披露されます。

お笑いのプロとして、ガタルカナル・タカが抜擢されていますが、このタカの「笑いのシーン」はツボです。笑えます。
一番好きなのは、タカが木の棒を使って手下と剣の修業をするシーンです。手下3人に決められた通り打ち込んでくるよう指示しますが、その打ち込みがちょっとずつズレてきて最後はボコスカ殴られる…というやつ。くだらないけど、笑えます。

時代劇として、「殺陣」もかなり本格的です。
刀に重みを感じます。
また、「刀は危ないもの」として演出されています(刀を抜いたら、隣の人の腕を切ってしまったり)。

灯篭が切れるシーンはちょっとご愛嬌ですが(五右衛門か!?)、「野球のピッチャー」を意識したという市の刀の振りは、思いっきし腰が入ってて力強いし、速いです。

ただし、「キツネの嫁入り」のような明るい雨の中では、殺陣がスローモーションなのが残念。
「白昼夢」という表現でしょうが、殺陣はやはりスピード感が欲しい。綾瀬はるかの『ICHI』も、スローモーションの多様が目障りでした。

無題3
(勝新にも負けてない、殺陣の速さも見どころ!)


芸者姉妹の危機に市が助けに入るという、よくある時代劇的展開も、待ってましたという感じで痛快です。
あの人が実は! みたいなサプライズも用意されており、なかなかストーリーにも手が込んでいます。

ただ、芸者姉妹には悲しい過去があるのですが、北野監督は、はっきりいって湿っぽいシーンは苦手です。悲しみに暮れる姉妹の雰囲気が、ちょっと白々しかった…。

それとついでに言うなら、芸者姉妹(妹は女形です)は、超美人姉妹ってことになってるんですけど、女形の方はちょっとお世辞にも…。
ガタルカナル・タカが女形の子に向かって、「男なのに、どうしてそこまで女になれるんだ?」と聞くと、女形が「顔だよ、顔」と答えるシーンがありますが…、ウソぉ…と思ったもの。

さて、賛否両論のラストのタップシーンですが、個人的にはすっごい良かった。
実は本編中には、所々で「リズム」を感じさせるシーンがあります。それが伏線になっていて、最後にドカーンと繰り広げられる大団円のタップダンスは、かなりの迫力です。鈴木慶一の曲も良くて、感激さえしました。
時代劇なのに…、などと眉をひそめるのはもったいないと思いますよ。

そもそも、いつもの「時代劇」にしても、実はマゲの形からなにから実際とは違いが多いそうです。だから、今さら何をしたっていいじゃないか、という発想なのでした。

無題2
(かなりの高レベル…まさにプロフェッショナルです)


市のアップで終わるラストカットも、意外性があって面白かったです。 
最後のセリフも、いきなり市が人間的なこと言うから、ニヤリとさせられます。

おお! そうして考えると、これは悲しい機械人形のロボットが、人々との交流を通じて、ついに本物の人間に成長したという感動の(以下略)

本作は、第60回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(観客賞)を受賞しました。
北野監督が観客の目を意識しまくって、思いっきりエンターテイメントに仕上げた痛快な良作です。 




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Posted on 2012/09/28 Fri. 23:08 [edit]

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