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その男、凶暴につき 北野映画、始動。 


 無題
 その男、凶暴につき
 (1989年 日本映画)85/100点


「アウトレイジ ビヨンド」の公開が二日後となった今、宣伝攻勢がすごい。相当に力を入れています。たけし他、キャスト陣がテレビに出まくっています。周りの期待値も異様に高く、試写会評価もそこそこ。ベネチアでの無冠は影響がなさそうで、もともと前作「アウトレイジ」もヒットしていましたが、今回は恐らく大ヒットすると思われます。

「アウトレイジ ビヨンド」は、通産16本目の北野映画です。
今回感想を書きたいのは、その北野映画の記念すべき第1作目「その男、凶暴につき」

もう何度も言及されていますけど、もともと本作は深作欣二が監督するはずでした。なんやかんやしている内に、深作監督が降板し、急きょ主演のビートたけしが監督も務めることになったのです。

当初は「タレントが面白半分で監督した映画」の一つのように軽く思われていましたが(実際、日本アカデミー賞ではそんな扱いだった)、淀川長治など一部の評論家や黒澤明の受けは抜群だったのです。確かに本作は大物ルーキーの登場を感じさせる見事な傑作に仕上がっています。

主人公・我妻(ビートたけし)は、とにかく暴力的に事件を解決する刑事です。
ただし、その暴力の大部分は、「いいぞ、やっちゃえ」という観客の願望をかなえたような形、もしくは「笑い」に転化できる形で表れます。

なんとなく「こち亀」の両津勘吉に似たアナーキストさ(いわゆる自由人)を感じます。
職業に警察を選んだ理由を問われ、
両津勘吉「別に…他になるもんなかったから」
我妻「友人の紹介」

両者とも、正義などという気概がありません。

不良少年に対して、
両津勘吉「お前らみたいな連中は、頭ぶつけて死ねよ」
我妻「(いきなり殴って)殺したなあ? 友達連れて警察来なさい」

未成年にも容赦ありません。

後輩に対して、
両津勘吉「金貸してくれよ」
我妻「金、貸してくんない?」

迷惑な存在です。

そのくせ甘えた奴には、
両津勘吉「自立しろ、てめーら」
我妻「お前が働けばいいんだよ、バカヤロー」

言いたい放題です。

さて、本作が傑作と言われるゆえんは、その描写の特異性だと思います。
・不自然なくらい長回し。
これは賛否両論です。確かにただ歩いているだけのシーンでも長い。意味がないほど長いです。
・突発的な暴力
先ほどのだらだらした長回しの反面、暴力は突発的なので驚きます。 
さあ撃つぞという構えがなく、突然「バン!」と来ますのでビックリします。長回しのシーンと突発的なシーンで緩急をつける狙いなのでしょうか。
・説明排除
例えば、麻薬の密売に関与している我妻の同僚が、それを勘づかれたと知って我妻に言い訳をしている場面がありますが、その時のセリフは一切こちらには聞こえません。
・犯人追跡を諦める。
ダウンタウンの松っちゃんがこれを一番に感心していましたけど、我妻が息切れして途中で犯人追跡をやめます。よくある刑事ドラマの追跡シーンをおちょくっているわけです。現実には、そんな刑事だっているだろーと。
  
こういった一風変わった演出のほかにも見どころが多く、中でも特筆なのは序盤の犯人追跡シーン。
金属バットを持った犯人が刑事を殴り倒す場面から、非常に切ないピアノの旋律の中で展開するこの一連の流れは、驚くほどよくできていると思います。
その犯人を車で追いかける場面を車内カメラで臨場感たっぷりに映し出したり、我妻の後輩が「一方通行を気にする」「サイレンを鳴らして犯人にこちらの居場所を教えてしまう」ことに我妻がいらだったり、今までの映画にない描写が続きます。
全体的にカッコ悪いこの追跡劇は、犯人を二度轢いて終わるという無茶っぷりで幕を閉じるのです。

  無題1
  (主人公が凶暴なら、犯人も負けずに凶暴)


容疑者に口を割らせるために、執拗にビンタを続けるシーンも強烈に記憶に残っています。
我妻「ヤクどっから仕入れてんだ?」
容疑者「知らねえよ」
バシッ。
我妻「どっからだ?」
容疑者「知らねえって」
バシッ。
我妻「どっからだって聞いてんだ、コノヤロー!」
容疑者「知らね…」
バシッ。
我妻「どっからだ?」
容疑者「し…」
バシッ。
いや容疑者まだ喋ってないし。
とにかく十数発かそれ以上の執拗さです。 
ホントか嘘か分かりませんが、撮影秘話では、あんなにたくさん叩く予定ではなかったのに、叩かれる側の役者さんが出来るだけ長く映っていたいために次のセリフをなかなか言わず、たけしは「なんか顔が青くなってきたけど、いいのかなあ」と心配しながら叩いていたとかいないとか。

最後の銃撃シーンもめちゃくちゃ驚きました。
遮蔽物に隠れることなく、犯人に向かって発砲しながらどんどん近付いていきます。
そもそも犯人は直前に仲間割れをし、すでに負傷して動けない状況であるにも関わらず。
もちろん犯人も発砲してきます。
いつどちらに弾が当たるか分からないという、以後の北野映画の特徴でもあるこの演出はやたら怖いです。

  無題2
  (感情を排した殺し合いが怖い)


第1作目にして、このパワー。見どころだらけ。以来、北野映画にどっぷりとはまり、「アウトレイジ ビヨンド」に行きつくわけです。
本作から20年以上が経過し、北野映画もずいぶんと様変わりしましたが、「アウトレイジ ビヨンド」には、本作の犯人役・白竜も出演しているというサプライズがあると聞いてびっくり。
(まあ、「HANA-BI」にも出てたけど)
原点回帰というわけではないでしょうけど、北野映画の原点である本作は、かなりの傑作ですので、「アウトレイジ」を気に入った方には、ぜひオススメしたい一品です。 
あ、あと「こち亀」が好きな人にも。
 



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Posted on 2012/10/04 Thu. 20:22 [edit]

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