素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

アウトレイジビヨンド 猿山を眺めるのもいいじゃない。 


 無題
 アウトレイジビヨンド
 (2012年 日本映画)75/100点


かつて任侠映画というと、「かっこいいヤクザ」を高倉健が演じ、上映後、観客は肩で風を切るようにして映画館を出てきたと言います。
憧れて、なりきっていたわけですね。
それとは正反対に、「アウトレイジビヨンド」を見た観客の大半はこう思うでしょう。
ヤクザにだけはなりたくないわあ…」と。

暴対法の強化でその波紋が芸能界にまで及ぶ中、「ヤクザ映画なんか撮ってる場合か」と揶揄する声もありますが、何を隠そう本作は、むしろ反ヤクザ映画とも言えるのであります。
仁義や義理なんかお構いなしに、ひたすら我欲の追及に奔走する「悪人」たちの世界。
ここには、一寸先に「死」が待ち構えているという、一般世間よりもはるかにストレスで死んでしまいそうな窮屈な世界が広がっています。
 
関東最大の暴力団組織・山王会の若頭・石原は言います。
先物取引とかヘッジファンドとか知らないやつは、頭のいい子分から教えてもらえ
山王会二代目会長・加藤は言います。
これからは実力主義だ。役に立たないやつはどんどん切っていく

暴力団組織は、まさにブラック会社の頂点に君臨しているのです。

さて、本作は、前作「アウトレイジ」の完全な続編です。
前作のラストで山王会の会長の座をもぎ取った加藤(三浦友和)と、大友(ビートたけし)を裏切り、若頭の座についた石原(加瀬亮)の末路を含め、山王会の顛末が描かれています。
ストーリーは複雑そうに言われていますが、実はいたってシンプルではないでしょうか。

関東暴力団・山王会と関西暴力団・花菱会、警察組織、大友・木村(中野英雄)コンビの四つ巴の闘い」です。

本作の最大の魅力は、主役レベルの役者を豪勢に配したキャスティングと、その役者陣が実に楽しそうに「悪人」を演じている芝居合戦にあります。
もちろん不満点も多いのですが、それはひとまず置いといて、まずはコワ楽しいキャラクターたちを幾人かご紹介していきましょう。
個人的な評価で悪人度を付けて並べております。
(すみません、今回ネタバレありです)
 
 
・大友(ビートたけし)悪人度40%
元・山王会系大友組の組長です。
前作のラストで刺殺されたかと思いきや、実は生きてました! 「魁!!男塾」みたいなノリです。
彼は仮出所後に足を洗おうとしますが、山王会を潰したい警察に担ぎ出されてしまうのです。また、懇意にしている仲間を殺されたことで、やむなく復讐に立ち上がります。
「やる気ないんだけどなあ…」という雰囲気を終始匂わせてるわりに、山王会の組員を電動ドリルで殺す時は一番ハリきっていて、根っこのドS属性を隠しきれません。
 
・木村(中野英雄)悪人度40%
前作では大友に顔を切られ、ラストシーンでは復讐を果たす元・村瀬組組員。
今作では、なんとその大友と仲良しになって山王会に復讐します。「悟空とピッコロ」みたいなノリです。
喧嘩した後に仲直りというのは聞きますが、殺しかけた後にってのは…。木村は、大友の懐の大きさにほだされたのでしょうけれど。
本作の出演陣の中では、一番顔が怖い(ガチ)と思います。

・加藤(三浦友和)悪人度90%
前作で山王会会長を暗殺し、ラストで見事なジャージ姿を披露した現・山王会会長・加藤。腹の黒さにあいまって、顔の黒さも一段と濃くなっている気がします…。
所詮、器以上の大役は重荷だったのか、花菱の策略にまんまとはまり最期はこてんぱんです。
会長の座を退いた姿が、哀愁があって素晴らしい。栄枯盛衰。実際、引退した暴力団の会長ってこんな感じらしいですね。

・石原(加瀬亮)悪人度92%
山王会・若頭です。
インテリヤクザです。前作では寡黙なキャラでしたが、今回は終始キャンキャンと吠えています。恐らく、組織からだけでなく、観客からもウザいと思われたキャラクターです。
演じた加瀬亮いわく、「やり過ぎた」とか。
暗躍・裏切りが当たり前の世界に生きていながら、人に嫌われまくることは命取りだと思うので、頭のいい石原なら本当はもうちょっとうまく立ち回れた気もしますけど…。
彼は徹底してウツケモノだったのでした。
 
・布施(神山繁)悪人度98.5%
重鎮です。花菱会会長。
前作で北村総一郎が演じた山王会会長に匹敵するほどのタヌキっぷりです。
相手のことを思いやってるふりをしながら実は追い込んでくる、という怖さを見せます。

・西野(西田敏行)悪人度99%
花菱会若頭。当初、西田敏行が演じるのは「関西系暴力団の組長」と聞いていましたが、実際は「花菱のナンバー2」でした。神山繁が画面中央に鎮座し、西田敏行が画面の隅っこで縮こまっているというのは、なんとも贅沢な使い方ですな。
「話が通じないのがヤクザだから、ヤクザとは揉めるな」とはよく言われますが、彼は病的なほど人の話を聞かず、ひたすら恫喝してくるので非常に厄介な存在です。上司にしたくない人ナンバー1です。
しかも、時々西田流のアドリブをかまします。山王会を例えるのに「象さん」て…。
  
・片岡(小日向文世)悪人度99.5%
本作で、実は一番アグレッシブに動いているのはマル暴の刑事・片岡です。主役といってもいいくらいです。
ひたすら出世をもくろみ、山王会と花菱のつぶし合いを企てます。
詳しくは説明されませんが、序盤で石原の事務所を銃撃したのは恐らく片岡では? と思います。なぜならば、防犯カメラに映っていたその銃撃犯の顔は帽子が邪魔で映っていないことになっていますが、銃撃シーンの直前、片岡は意味深に帽子をギュッと握って出かけていますので。あれが、全体の火種のきっかけとなりました。恐るべき策士です。
普段はニコニコしていながら、山王会・花菱会の強面たちに全く動じないとは相当なタマです。特に頼りになるパートナーもなく、ほぼ単独でここまで動くとは、一番の悪人というよりは一番の強者(つわもの)だと思います。


さて、その他、たくさんのコワ楽しいヤクザの方々が出てきます。
中には、セリフも動きもない、ただのワンシーンのお飾り的な人物にも印象的なキャスティングをするところもまた、北野映画の魅力です。
本作では、韓国フィクサーの事務所でチラっとだけ映るロングヘアーの人がやたら印象的でしたし、その他「いかにも」な顔つきの人を選ぶのが実にうまい。
それだけに、画面には終始緊張感や重みがあったと思います。

音響にもこだわっていて、銃声も特徴的です。重たく響く、ドキリとさせる音です。車のドアをバンと閉める音もまた、妙に記憶に残りました。

片岡が山王会と示し合せてでっちあげた、身代わりの犯人を取り調べるシーンはコントみたい。
片岡「何を使って殴ったんだ?」
犯人「女の部屋にあったバット…」
片岡「バカヤロー、女の部屋にバットがあるかよ。灰皿だったんだろ!」
犯人「灰皿です…」 
片岡「何時に女の所に行ったんだ?」 
犯人「11時ごろ…」
片岡「バカヤロー、11時はまだクラブやってんだろ。3時だったんだろ!」
犯人「3時です…」

こういうシーンは、さすがにうまいなあ。

さて本作にて、実は一番心惹かれたのは、高橋克典率いる花菱会のヒットマン軍団です。
高橋克典は完全な脇役で全くセリフがありませんが、大友と木村の助っ人として、山王会の組員をひたすら撃ち倒していきます。
素晴らしい手際と技量。もう頼もしいったらありゃしません。
高橋克典の他に3人(もっと?)くらいいるのですが、みなさん、無名の俳優さん(?)なのに、非常にかっこいい面持ちです。
特に立ち姿や立ち位置が非常に計算されていて、これには痺れました。
屋上で山王会の組員を追い込む銃撃戦もワンカットでバンバン撃っていきますが、このシーンは撃たれる側も非常にタイミングがうまくて、計算し尽くして撮ったなあと感心しきりでした。こういうのをワンカットで見せるというこだわりに嬉しくなります。何気に今回のベストシーンです。
面白いのは、普通の映画だったらこのヒットマン軍団は敵側になると思うのですよね。
けど、今回は大友側の味方ってところがミソです。
ゆえに、前作では大友側がどんどんやられていく緊張感がありましたが、今回は敵がどんどんやられていく爽快感がありました。
むろん、今日の友は明日の敵…なのが、この世界の恐ろしさなのですが…。

加藤の最後も印象的でした。
ベタな演出ですけど、パチンコやってる加藤の隣に、無音のスローモーションで刺客が座って襲いかかるというのには惹きつけられました。

さて…そういった名シーンも多い本作ですが、そうはいっても完璧な映画とも言えず、昔からの北野映画ファンにとっては物足りなさを感じるのも事実です。

・映像にこだわりが見えません。
北野映画では、時にはっとするような斬新な映像・撮り方を見せますが、今作ではオーソドックスに終わっています。(前述の屋上のシーンだけは良かった)

・ほとんどの殺し方が単調。  
別に前作のように斬新なやり方をする必要はありませんが、前述の屋上の銃撃以外、全て一緒のようなもの。何か芝居の一つでも特徴がほしかったです。
単に突っ立って撃ってるだけか、車の窓越しの銃撃ばかりだったのには、手抜き感さえあります。

・女性に魅力なし。
これは北野監督のこだわりでもあるようです(ヤクザの情婦には、美人はいないという設定)が、ここまで魅力がないのはびっくり。女性が背中の入れ墨を見せる所はちょっと失笑。苦手なら、無理に女性のシーンは入れないほうがいいです。

・心情面に深みなし。
これは、本作のコンセプトが「エンターテイメント」なんで納得してますが、とにかく猿山のサルたちが殺し合っているだけです。情緒も何もありません。これにより、当然ベネチア映画祭で賞を獲るようなことはありません。
北野映画独特の人間の心情描写を、久しぶりに見たいなあとも思いますが。
  
けれど、見ていてやはり楽しい映画だなと思ったのは事実です。
「突然」過ぎると言われるラストも、私はかなり好きです。あれはあれで、しっかり映画を終わらせていると思います。
負の連鎖を断ち切ったともとれるし、また、あの後花菱会は警察にかなり睨まれることになるでしょうから。

決して万人に薦められる映画ではないですけど、私は正直、続編が見たいと思います。
特に、高橋克典率いるヒットマン軍団がもう一回見たいなあ。
あそこだけ、異質なほどかっこ良すぎてファンタジーなんですよ。いい意味で。
 
見る人それぞれで好きなシーンが異なるであろう、結構みんなでワイワイ語れる楽しい映画でした。


前作『アウトレイジ』の感想はこちら。

 
↓こちらのレビュー、オススメします。
出世のために・・・「アウトレイジビヨンド」/カゲヒナタのレビュー


  

記事を読んで頂きありがとうございました。
よかったらランキングにご協力ください。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 

 <スポンサードリンク>

バイオレンスの関連記事

 <スポンサードリンク>

Posted on 2012/10/18 Thu. 22:47 [edit]

TB: 0    CM: 0

18

コメント

Comment
list

コメントの投稿

Secret

Comment
form

トラックバック

トラックバックURL
→http://eigamove.blog.fc2.com/tb.php/68-5a319a74
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Trackback
list