素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

アウトレイジビヨンド /猿山を眺めるのもいいじゃない。 


 無題
 アウトレイジビヨンド
 (2012年 日本映画)
 80/100点



かつて任侠映画というと、「かっこいいヤクザ」を高倉健が演じ、上映後、観客は肩で風を切るようにして映画館を出てきたと言います。
憧れて、なりきっていたわけですね。

それとは正反対に、『アウトレイジビヨンド』を見た観客の大半はこう思うでしょう。
「ヤクザにだけはなりたくないわあ…」と。

暴対法の強化でその波紋が芸能界にまで及ぶ中、「ヤクザ映画なんか撮ってる場合か」と揶揄する声もありますが、何を隠そう本作は、むしろ反ヤクザ映画とも言えるのであります。

仁義や義理なんかお構いなしに、ひたすら我欲の追及に奔走する「悪人」たちの世界。
ここには、一寸先に「死」が待ち構えているという、一般世間よりもはるかに重いストレスの蔓延した窮屈な世界が広がっています。
 
関東最大の暴力団組織・山王会の若頭・石原は言います。
「先物取引とかヘッジファンドとか知らないやつは、頭のいい子分から教えてもらえ」
山王会二代目会長・加藤は言います。
「これからは実力主義だ。役に立たないやつはどんどん切っていく」

暴力団組織は、まさにブラック会社の頂点に君臨しているのです。

さて、本作は、前作『アウトレイジ』の完全な続編です。
前作で山王会会長の座をもぎ取った加藤(三浦友和)と、大友(ビートたけし)を裏切り若頭の座についた石原(加瀬亮)を含め、山王会の顛末が描かれます。

「関東暴力団・山王会と関西暴力団・花菱会、警察組織、大友・木村(中野英雄)コンビの四つ巴の闘い」です。


本作の最大の魅力は、主役レベルの役者を豪勢に配したキャスティングと、その役者陣が実に楽しそうに「悪人」を演じている芝居合戦にあります。

もちろん不満点も多いのですが、それはひとまず置いといて、まずはコワ楽しいキャラクターたちをご紹介していきましょう。
個人的な評価で悪人度を付けて並べております。


(ネタバレありです)
 
 
・大友(ビートたけし)悪人度40%
元・山王会系大友組の組長です。
前作のラストで刺殺されたかと思いきや、実は生きてました! 「魁!!男塾」みたいなノリです。

彼は仮出所後に足を洗おうとしますが、山王会を潰したい警察に担ぎ出されるのです。
また、懇意にしている仲間を殺されたことで、やむなく復讐に立ち上がります。

「やる気ないんだけどなあ…」という雰囲気を匂わせてるわりに、山王会の組員に電動ドリルを向ける姿は一番張り切っていて、根っこのドS属性をいかんなく発揮。
 
・木村(中野英雄)悪人度40%
前作では大友に顔を切られ、ラストシーンでは復讐を果たす元・村瀬組組員。

今作では、なんとその大友と仲良しになって山王会に復讐します。「悟空とピッコロ」みたいなノリです。
喧嘩した後に仲直りというのは聞きますが、殺しかけた後にってのは…。木村は、大友の懐の大きさにほだされたのでしょうけれど。
本作の出演陣の中では、一番顔が怖い(ガチ)と思います。

・加藤(三浦友和)悪人度90%
前作のラストで見事なジャージ姿を披露した現・山王会会長・加藤。
腹の黒さにあいまって、顔の黒さも一段と濃くなっている気がします…。

所詮、器以上の大役は重荷だったのか、花菱の策略にまんまとハマります。
会長の座を退いた姿が、哀愁があって素晴らしい。栄枯盛衰。実際、引退した暴力団の会長ってこんな感じらしいですね。

・石原(加瀬亮)悪人度92%
山王会・若頭で、インテリヤクザです。
前作では寡黙なキャラでしたが、今回は終始キャンキャンと吠えています。恐らく、組織からだけでなく、観客からもウザいと思われたキャラクターです。
演じた加瀬亮いわく、「やり過ぎた」とか。

暗躍・裏切りが当たり前の世界に生きていながら、人に嫌われまくることは命取りだと思うので、頭のいい石原ならもうちょっとうまく立ち回れた気もしますけど…。
彼は徹底してウツケモノだったのでした。
 
・布施(神山繁)悪人度98.5%
重鎮です。花菱会会長。
前作で北村総一郎が演じた山王会会長に匹敵するほどの、タヌキっぷりです。
相手のことを思いやってるフリをしながら実は追い込んでくる、という老獪ならではの怖さを見せます。

・西野(西田敏行)悪人度99%
花菱会若頭。「花菱のナンバー2」です。
神山繁が画面中央に鎮座し、西田敏行が画面の隅っこで縮こまっているというのは、なんとも贅沢な使い方です。

「話が通じないのがヤクザだから、ヤクザとは揉めるな」とはよく言われますが、彼は病的なほど人の話を聞かず、ひたすら恫喝してくるので厄介です。上司にしたくない人ナンバー1です。
しかも、時々西田流のアドリブをかまします。山王会を例えるのに、「象さん」て…。
  
・片岡(小日向文世)悪人度99.5%
本作で、実は一番アグレッシブに動いているのはマル暴の刑事・片岡です。主役といってもいいくらい。
ひたすら出世をもくろみ、山王会と花菱のつぶし合いを企てます。

詳しくは説明されませんが、序盤で石原の事務所を銃撃したのは恐らく片岡では? と思います。
なぜなら、防犯カメラに映っていたその銃撃犯の顔は帽子が邪魔で映っていないことになっていますが、銃撃シーンの直前、片岡は意味深に帽子をギュッと握って出かけていますので。
あれが、火種のきっかけとなりました。恐るべき策士です。

普段はニコニコしながら、山王会・花菱会の強面たちに全く動じないとは相当なタマ。
特に頼りになるパートナーもなく、ほぼ単独でここまで動くとは、彼は一番の悪人というより、一番の強者(つわもの)だと思います。


さて、その他、たくさんのコワ楽しいヤクザの方々が出てきます。
セリフも動きもない、ワンシーンのお飾り的な人物にも印象的なキャスティングをするところがまた、北野映画の魅力です。
韓国フィクサーの事務所でチラっとだけ映るロングヘアーの人がやたら印象的でしたし、その他「いかにも」な顔つきの人を選ぶのが、実にうまい。
それだけに、画面には終始重みがあったと思います。

音響にもこだわっていて、銃声も特徴的です。重たく響く、ドキリとさせる音です。
車のドアをバンと閉める音もまた、妙に記憶に残りました。

それから。
片岡が、でっちあげた犯人を取り調べるシーンはコントみたい。
片岡「何を使って殴ったんだ?」
犯人「女の部屋にあったバット…」
片岡「バカヤロー、女の部屋にバットがあるかよ。灰皿だったんだろ!」
犯人「灰皿です…」 
片岡「何時に女の所に行ったんだ?」 
犯人「11時ごろ…」
片岡「バカヤロー、11時はまだクラブやってんだろ。3時だったんだろ!」
犯人「3時です…」

こういうシーンは、さすがにうまいなあ。

さて。

本作にて、実は一番心惹かれたのは、高橋克典率いる花菱会のヒットマン軍団です。
高橋克典は全くセリフがありませんが、大友と木村の助っ人として、山王会の組員をひたすら撃ち倒していきます。
素晴らしい手際と技量。もう頼もしいったらありゃしません。

高橋克典の他に3人(もっと?)くらいいるのですが、みなさん、無名の俳優さん(?)なのに、非常にかっこいいです。
立ち姿や立ち位置が計算されていて、これには痺れました。
屋上で山王会の組員を追い込む銃撃戦なんて、ワンカットでバンバン撃っていきますが、このシーンは撃たれる側もタイミングがうまくて、計算し尽くして撮ったなあと感心しきりでした。
こういうのをワンカットで見せるというこだわりに嬉しくなります。何気に今回のベストシーンです。

面白いのは、普通だったらこのヒットマン軍団は敵側になると思うのですよね。
けど、今回は主人公・大友側の味方ってところがミソです。

ゆえに、前作では大友側がどんどんやられていく緊張感がありましたが、今回は敵がどんどんやられていく無双感がありました。
むろん、今日の友は明日の敵…なのが、この世界の恐ろしさですが…。

さて…。

名シーンも多い本作ですが、そうはいっても完璧な映画とも言えず、昔からの北野映画ファンにとっては物足りなさを感じるのも事実です。

・ほとんどの殺し方が単調。  
前作のように斬新なやり方をする必要はありませんが、前述の屋上の銃撃以外、全て一緒のようなもの。何か芝居の一つでも特徴がほしかったです。
単に突っ立って撃ってるだけか、車の窓越しの銃撃ばかりだったのには、手抜き感さえあります。

・女性に魅力なし。
これは北野監督のこだわりでもあるようです(ヤクザの情婦には、美人はいないという設定)。
とはいえ、ここまで魅力がないのはびっくり。女性が背中の入れ墨を見せる所は、ちょっと失笑。苦手なら、無理に女性のシーンは入れないほうがいいです。

・心情面に深みなし。
本作のコンセプトが「エンターテイメント」なんで納得しますが、とにかく猿山のサルたちが殺し合っているだけ。情緒も何もありません。
これにより、当然ベネチア映画祭で賞を獲るようなことはありません。
北野映画独特の物悲しい情緒感を、久しぶりに観たいなあとも思いますが。
  
けれど、やはり楽しい映画だなと思ったのは事実です。
「突然」過ぎると言われるラストも、私はかなり好きです。あれはあれで、しっかり映画を終わらせていると思います。
負の連鎖を断ち切ったともとれるし、また、あの後花菱会は警察にかなり睨まれるでしょうから。

決して万人に薦められる映画ではないですけど、私は、続編が観たいと思います。

特に、高橋克典率いるヒットマン軍団がもう一回観たいなあ。
あそこだけ、異質なほどかっこ良すぎてファンタジーなんですよ。いい意味で。


前作『アウトレイジ』の感想はこちら。

『アウトレイジ 最終章』の感想はこちら。

 
↓こちらのレビュー、オススメします。
出世のために・・・「アウトレイジビヨンド」/カゲヒナタのレビュー


  

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Posted on 2012/10/18 Thu. 22:47 [edit]

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