素人目線の映画感想ブログ

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ビフォア・ザ・レイン 民族の憎悪は、家族にさえ向けられた。 


 無題1
 ビフォア・ザ・レイン
 (1994年 マケドニア・英・仏映画)75/100点


昨日とは打って変わって、重厚な人間ドラマの感想です。
「アウトレイジビヨンド」のように、人があっさりと殺されるシーンがありますが、こちらは1994年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得しました。
 
物語は3章から成り立っています。
こういうオムニバス形式は、時間が経つのが意外に早く感じるので難しめの映画にはうってつけですね。実を言うと、映画が始まってしばらくは、時代設定もよくわからないマケドニアの田舎の村から静かに静かに展開するもので、「失敗したかなあ」と思ってしまいました。
その後、映画は急に展開し始め、舞台がロンドンに変わってからは段々と映画の意図が分かるようになり、次第に引き込まれるようになっていきましたよ。
難しい映画は、まず30分我慢です。

  無題2
  (たまには行きたい、こんな風景美)


第1章は「言葉」と名付けられています。
マケドニアの修道院で、沈黙の修業をしている修道僧キリルが主人公です。

キアヌ・リーブスとエイドリアン・ブロディを足して2で割って、若くして、邪念を取り除いたような顔立ちの俳優さんです。
ある夜、キリルの部屋に少女ザミラが逃げ込んできます。どうやら、敵対するアルバニア人を殺して逃げているようです。
キリルは、血眼になって少女を探す被害者親族から匿ってあげます。
この少女ザミラ、髪型がベリーショートなので最初は少年かと思ってしまい、突然字幕で「優しいのね」なんて女性言葉が出てきた時には、…ん? 字幕壊れた? と混乱してしまいました。

キリルはザミラを連れて逃げます。しかし、途中でザミラの親族につかまり、信じがたい悲劇で本章は幕を閉じます…。

第2章は「顔」と名付けられています。
舞台はロンドンです。1章とは打って変わって都会的な風景にちょっとほっとしました。
本章での主人公は、雑誌社に務めるキャリアウーマンのアンです。

アンには夫がいますが、彼女はマケドニア人の写真家・アレックスと不倫関係にあります。
アレックスは、仕事で数々の世界の紛争を垣間見て、今や疲れ果てていました。
慰めるアンですが、一緒に故郷のマケドニアへ行こうという彼の提案にすぐに答えを出せません。
その夜、夫に別れを告げるためのレストランでの会食中、テロが起こります。

そして、第二の悲劇が起きるのでした…。

  無題2
  (惨劇は、どこにでも起こりうる)


第3章は「写真」と名付けられています。
アンと離れ、1人でマケドニアへ帰郷した写真家・アレックスが主人公です。

親族に手厚く迎えられるアレックスですが、対立するアルバニア人の娘に従兄弟を殺されてしまいます。
この娘っていうのが第1章のザミラなのです。さあ、つながってまいりました。
ザミラは、アレックスがひそかに心を寄せているハンナという女の子供でした。
「娘を助けて」というハンナの言葉をきっかけに、もともと血で血を洗う憎悪の循環に嫌気が差していたアレックスは、ザミラを救おうとしますが、仲間の怒りを買ってしまいます。

そして、第三の悲劇が起きるのです…。

その後、ザミラは逃げ、修道院に走ります。


本作は、マケドニア人とアルバニア人、イギリス人とアイルランド人との民族対立が深刻に描かれ、悲劇はそこから生まれています。
憎悪は、信じられないほど銃の引き金にかけた指を軽くし、過酷なことに、たとえ親族・兄弟であっても容赦しません。
 
タイトル「ビフォア・ザ・レイン」の意図が、正しくは何なのかは分かりません。
一説には、「雨は希望を表している」と言われますが、私はこの映画からは何の希望も感じ取れませんでした。マケドニアは、昔から大国の利害に翻弄されてきたとのことです。本作から感じる限りでは、計り知れない憎悪のるつぼを洗い流すような雨は、そう簡単には降らないように思ったのです。
むしろ雨のように、争いもまた幾たびも降り注ぐのだと思いました。
しかし、強いて希望を感じたとするならば、村で一番穏やかそうだった人がヤギ(羊?)の出産に携わっている男だったことです。生の息吹をいつも感じているその男は、死の蔓延する世界の毒に侵されず静かに佇んでいました。これは一つの希望だと感じたのでした。
 
  無題2
  (穏やかな血の信頼にさえ、憎悪はたやすく入り込むようで…)

 
本作はまた、時間軸が不思議なねじれで構成されているのも大きな特徴です。
普通に考えれば、2章→3章→1章という時間の流れのはずですが、なぜか2章の中で、1章の悲劇を撮影した写真が出てくるので大変複雑怪奇な構成です。
同じ悲劇は繰り返されるという意図があるとは思いますが。また、ねじれた時間軸は、カオス(混沌)を感じさせることもできます。
  
映画の感想として、面白かったーとは言いにくいのが正直なところです。大変難しいし、含められた意味がたくさんあって観賞には労力が要りました。
しかし、全ての意味・意図を理解することはできなくても、何かを感じ取ることはできると思います。
おおよそ日本ではめったに見ることのできない荘厳な風景美に、説明を排した心理・行動描写、突発的な暴力、世界の成り立ちの複雑さ、前述した斬新ともいえる時間のつながり…。様々な見応えがあります。 
映画の未知の力を引き出そうとする、とてつもない才能の監督に出会った、という手ごたえを心に残すことができる秀作でした。

それから、「アウトレイジビヨンド」を見た直後だったもので、まーなんとも、いい鑑賞バランスだったかなーという自己満足にも浸れましたぜ!
 

 

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Posted on 2012/10/19 Fri. 23:05 [edit]

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