素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

ヒミズ /「気持ち悪い」のは狙いか、失敗か。 


 無題
 ヒミズ
 (2012年 日本映画)
 70/100点



その日は大変疲れていました。
眠気も強くあって、もう寝ようかなあと思ったものの、映画観とかないと更新が滞るなあと危惧し、気力を振り絞って鑑賞したのが本作だったわけです。
それが間違いでした。

うげえ…、なにこれ、気持ち悪い…。

鑑賞後、疲れは頂点を突き破ってもうグッタリ。
精神的ダメージといったら、それは計り知れないものがありましたよ。

映画の感想は、その鑑賞時の体力・気力に左右される場合がありますが、だからなのか…
他の方の感想を見ていると、高評価されていることも多い本作ですが…

私には、正直、ダメだった。

『愛のむきだし』、『冷たい熱帯魚』と話題作の多い園子温(そのしおん)監督の手掛けた本作は、『稲中卓球部』などで知られる古谷実の漫画が原作です。

私は古谷実の漫画は、『稲中』や『ヒメアノール』など好んで読んでいます。(『ヒミズ』はただ今鑑賞中)
古谷作品は、基本的に負け組を主人公とした、「世の中なんて所詮はよー」ってな皮肉の物語です。綺麗事をバッサリと切り捨てる小気味良さや、どうしようもない閉塞感でヒステリーを喚き散らすキャラクターがおもしろおかしくて、いつも楽しく拝読していたのですけど。

本作は、原作に忠実ではありません。それは別に構わないと思います。
監督の作家性をふんだんに加味することで、原作を超えることができると思っているからです。

しかし。

本作のキャラクター達のなんと気持ちの悪いことか。
実は、恥ずかしながら園子温監督の作品はこれが初めてでした。
合わない人には、徹底して合わない作風でした。

アクが強い、というか人間描写がオーバーで、狙い過ぎている感じがしたのです。
「このほとばしる感情表現が映画っぽいだろー」と、押し付けられているような気持ちの悪さを感じたのです。

そして、画面からにじみ出る得体のしれない毒っ気も、普段バイオレンス映画を好む私でも、生理的に受け付けにくい気味の悪さを感じたのです。


<結末以外、ほぼネタバレです。>


登場人物の描写が、なぜこんなにも過剰なのか?
主人公・住田の周囲に群がっているホームレスたちのテンションが、まず気持ち悪いのです。純粋で、いい人たちの集まりのつもりでしょうか…?
ホームレスの一人・夜野(渡辺哲)は、軽快なおやじの「いい味」を通り越し、観ていて恥ずかしくなりました。
「こんなキャラ設定、楽しそうでしょー」という押しつけ。
彼が初めて画面に出てきた時、まさに停止スイッチを押して寝てしまおうかと思った瞬間でした。

住田の学校の先生も気持ち悪い。綺麗事を並べ、住田に「夢を持て」と言い放ちます。
もちろん、「嘘くさいことをいう教師」というヒールの役割ですが、「気持ち悪い教師に、住田がバッサリと反論するのが気持ちいいでしょー」という押しつけ。これも狙い過ぎに感じました。

主人公・住田の父親と、ヒロイン・茶沢さんの母親もしかり。…いないよ、こんな人たち…。
どちらも自分の子供に対して、「死ねばいいのになあ」と平気で言い放ち、茶沢さんの母親にいたっては、ご丁寧に娘の為の絞首台を作成中です。 

いないってば、そんな人…。

父親はめったやたらに住田を殴りつけるし…。
現実にこういう悲惨な境遇の子供がいるのだ! お前は平和ボケだ! …という感情を、これまた押し付けられているようで、気持ち悪かった。
「暴力が蔓延した親子」という設定でも、この親子関係はあまりに非リアルではありませんか。
 
原発の危険を訴えているテレビ番組を見て、頭の悪そうなお兄さんが「原発サイコー!」と吠えるくだりなんて、まさか原発推進派ネガティブキャンペーンの押し付けじゃないよね…?

体に「メスブタ」と書かれた、足を鎖でつながれた下着姿のお姉さん。
これも狙いすぎで気持ち悪い。
女の人に対して、かなり描写が乱暴なのは何かの恨みですか?

そして、次から次に現れる数々の通り魔たちは、型通りに「通り魔でっせー」という顔をしています。
監督は、「人間」がとことん嫌いなのかなあ?
   
ヒロインの茶沢さんは、住田に惚れ、徹底的に支えようとおせっかいを繰り広げます。
住田に殴られるたびに川底の石を拾い、「住田君への呪い! ポケットが石でいっぱいになったら、思いっきり投げつけるからね!」
純朴で天然でかわいいでしょーって感じで…、閉口。

そして、主人公・住田ですが。
どうして、原作と違い、女の子を容赦なく殴りつけるキャラにしたのか…。
彼のその性分は、たぶん治らないと思うなあ。
この先、もし茶沢さんと結ばれるとしても、私はその先の茶沢さんの苦労が目に浮かぶようでした。
だから、終盤で二人の心が通い合ったような描写を見せられても、全くもって希望を感じませんでした。

感情移入が難しい登場人物たちがどう物語を紡いでも、ただただ首をかしげるばかり。

後半、自分の境遇への苦悩から精神を壊し始めた住田が、包丁を紙袋に入れ、世直しと称して悪い奴らを探し街へ繰り出します。
するとまあ出てくる出てくる、反吐が出るような悪人たちと、おかしな人たち。

もうリアルを描きたいのか、ファンタジーを描きたいのか、チグハグな感じでわけが分からず、酔ってくるほど目が回りだす始末。 

園子温監督いわく、「希望を描いた」とのことですが、絶対嘘だ。観終わった後、とにかくへこみましたもの。こんなひどい世の中で、うちの子供たちは無事に生きていけるだろうかと悩ませました。

この映画から希望を感じ、勇気を奮いたたせられる方がいるならば…、たぶん、もともとポジティブなんでは?

とにかく私には合わない…、徹底して合わないぞ、この映画…
いったん深呼吸をしよう…。

ふう…

でも…、ふと思ったのです。
あえてリミッターをはずし、徹底的に過剰に、無茶に、キャラクターや物語を描くのが意図ではないか、と。
気持ちが悪いなあとこの映画を否定する者を、「やっぱり? そう思っちゃう? なら、オレの勝ちだね」と言われている気もするのでした。

知ってるか!? 世の中ってのは平和じゃねーんだぞ! ちっとは分かってるか!? 普通に暮らせる幸せを! シリアだのボスニアだの行ってみろよ、まだまだこんもんじゃねーんだぞ! わかってんのか、おお!? 今のてめーの境遇をよ、ありがたく、ありがたーく噛みしめて生きていけってのこのリア充どもが!

という監督の怒りのメッセージを感じたりもするのでした。
そう考えると、反面教師的な役割を担った映画なのかもしれないなあ、と。
精一杯の冷静なまなざしで観てみると、そう思える気がしないでもなく…

ま、そうであったとして、その押しつけがましさが、まさに気持ち悪いのだけど。

さて、散々悪く書いてきましたが。
画面から溢れ出す狂気や葛藤の描写には、非凡な力を感じたことも多かった本作。
中でも、住田役・染谷将太と茶沢役・二階堂ふみは、「ベネチア映画祭・新人賞W受賞」も納得の演技であったことは事実です。
ところどころで、なんて魅力的な演技だと思ったものです。

住田の死んでる暗い目がすごいし、茶沢さんのハイテンションも慣れてくると頼もしく思ったりもしたのでした。

演出面もパワーがあるので、確かに力のある監督だと思います。
これに懲りず、今度は『冷たい熱帯魚』も観ようと思わされました。
たまたま、この映画が合わなかっただけだと信じて…

ただ。

「嫌い」と言い切ることもできない良さを秘めている本作ですけど、ここまで評価を揺れさせたのは、やはり「震災場面」のシーンが大きく影響していると思います。
震災後、急きょ本作に入れ込んだという宮城県石巻市の描写。

個人的には、やはりこれは「NO」なんです。

もちろん、災害を映画にするなと言ってしまえば全ての映画がNGです。
そういう意味ではなく、「必要性があったかどうか」の問題です。

本作では、はっきりいって物語に合っていないです。しかも圧倒的に。

あまりに共感できないこの非リアルな物語に、まだ現在進行中である「東日本大震災」という現実の悲劇を結びつけようとするのは、乱暴です。
石巻市のまさにその現場で、登場人物が銃を頭に突きつけるという描写は「変」

まるで、通り魔たちの苦しみと被災者の苦しみが一緒だと言っているような、おかしな誤解を与えかねません。

物語や人物描写と同じく監督のリミッターが飛んでしまい、「ええーい! 必要だ、必要だからやっちゃえー!」という浅はかな勢いを感じてしまいました。

ということで、以上が私を二日ほどぐったりさせた本作の感想です。

しかし、翌日に早速原作本を入手したり、『希望の国』という新作も恐る恐る観てみよう、と思ってしまったあたり、やっぱり「オレの勝ちだね」と言われている気がして、なんとも悲しいやら悔しいやら。


*原作との比較検討はこちら。


↓こちらは高評価しています。いろいろな感想をどうぞ。
 みんな、がんばれ「ヒミズ」/カゲヒナタのレビュー


  

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Posted on 2012/10/24 Wed. 22:14 [edit]

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コメント

 

通りすがり失礼いたします。
主さんの感想は、私が映画を見て感じた事とほぼ同じでびっくりしました。

なので「それなのに70点?!」と2度びっくりした事をコメントせざるを得ませんでした。

URL | ねーやん #- | 2016/12/23 03:26 | edit

ねーやん様 

コメント頂戴し、ありがとうございました。

70点…そうですね、パワーがある映画だなあと思ったのは確かなので、そういう点数でした。
けど、結局この作品でちょっと園子温監督は苦手だなと思ってしまい、その他の作品は見ていません。

URL | タイチ #- | 2016/12/29 20:18 | edit

 

とても面白かったです。
やっぱり? そう思っちゃう? なら、オレの勝ちだね
と思ってしまいました。

URL | ずんどこきよし #- | 2017/01/22 00:17 | edit

ずんどこきよし 様 

この映画、結構評判いいですよね…。

URL | タイチ #- | 2017/01/24 18:07 | edit

 

わかりにくい映画でした。
ボートハウスに集う大人たちはホームレスと理解して良いのか。
それにしては酒盛りしてたり。
やたらに殴り合いますが、あれだけの打撃を加えられれば死にますよ。
現実を見よというメッセージがあったとしても内容があまりに非現実的で一切共感できなかったです。
唯一窪塚だけは現実にいそうな感じしましたけど。

映画好きの自主制作映画を見てるようでゲンナリしました。
邦画はまだまだだなと思わされました。
予算や撮影期間がどうのこうの言われますが、同じような条件で「ミリオンダラーベイビー」を撮れる監督やスタッフが海外にいるってことを考えると、これはもう文化なのかもしれませんね。

ヒミズは海外での評価が高かったようですが、日本に住み、土地の空気を吸って生活している私には違和感しかありません。

URL |  #- | 2017/12/15 14:11 | edit

 

コメント頂きありがとうございます!

感想にもある通り、私もノレなかった映画です。


「映画好きの自主制作映画を見てるよう」

まさにその通り。

園子温監督の感性が突っ走った…といえば、聞こえがいいのでしょうけれど。

キャラクターを過剰にすれば映画っぽいだろーという、稚拙さも感じますよね。

実はこれ以降、園子温監督作品は怖くて見ていません。

ほんとに、ぐったりする映画でした。


URL | タイチ #- | 2017/12/15 15:09 | edit

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