素人目線の映画感想ブログ

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映画「ヒミズ」と漫画「ヒミズ」(h24.10.28) 


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良い意味でも悪い意味でも、相当なショックをもたらした園子温監督作「ヒミズ」
難点も多かったけど、良作となりえる輝きもあって評価に悩んだ「ヒミズ
あまりに気になるものだから、原作の古谷実の漫画「ヒミズ」全4巻を一気読みしてみました。

原作と異なる点から、映画版「ヒミズ」について、再度考えます。  

主人公・住田の性格が微妙に違います。
根の暗さや「夢を持てないことへの焦り」「普通への羨望」など、抱えているものは同じですが、原作版は、人に対するリアクションが意外に普通です。
茶沢さんに寄ってこられてたじろいだりするところは、人間味があります。
映画版は、もう、まったくリアクションが薄い。その上、茶沢さんを殴ったりします。良く言えば、住田のはらんだ狂気をより濃く表現しているように思います。
原作版の住田は、決して授業中にうつろな目で「普通サイコー!」と叫んだりする性格ではありません。ひたすら俯いて、全てを回避しようとする、ある意味、ほんとに「普通」のタイプです。
だからこそ、「異常側」に振れたときの「運命の怖さ」をすごく感じるんですけど。
映画版は、最初からちょっと「普通」じゃないのです。
     
夜野のキャラクター設定 
原作版の夜野は、住田の同級生です。
映画版の夜野は、住田のボートハウスそばに住み着いている年配のホームレス。
おまけに震災被害者です。ここ、思いっきり変えたなあ。
個人的に同級生の方が感情移入しやすい。ホームレスの夜野は、その明るいキャラクターが不自然で乗れなかった。

茶沢さんのキャラクター設定
原作版は、結構しっかりしている大人びた女性です。変わり者ではありますけど。
バックグラウンドはほとんど描かれておらず、映画版では、住田と同じく、虐待する親の問題を抱えていることになりました。そして、幼げで、活発な、天然ボケのキャラとなっています。
…原作の方が好きかなあ。同じ境遇同士だと一緒に溺れていく気がしますが、保護者のような大人の目線である原作版の茶沢さんの方が、住田を助けられそうです。
後述しますが、結果は真逆でした。これは、個人的に納得いきませんでした。
(もちろん、原作版の茶沢さんが、なぜあれほど住田に興味を持ったのかは、理解しにくいですけど)

住田の父親のキャラクター設定
原作版は暴力を振るいません。ほとんど喋りません。ただ、だらしないヤツという程度。
映画版は、それはそれは住田を殴りまくりです。
確かに原作版では、住田が父親を殺すほどの理由が見えにくいです。
そのために、映画では「暴力的」といった殺される理由をはっきりさせたのでしょう。

・結末
ストーリーラインは概ね同じだったと思います。
全4巻の物語なので、当然省いている部分も多いですけど、あまり改悪なところはなかったように思います。
結末以外は。
原作版は、結局住田は拳銃自殺してしまいます。
映画版は、思いとどまり、自首に走ります。

うーん。
賛否両論でしょうね。原作版の結末は、本当に切なかった。
希望も見つかり、死ぬ理由があまりないように見せていただけに、「えぇ…」と思いました。
住田が自殺する前に、死神のような化け物が現れます。
「やっぱりダメなのか…どうしても無理か」と化け物に問う住田に、「決まってるんだ」と化け物は冷酷に言い渡します。
「そうか…決まってるのか」とつぶやく住田。
住田に生きる気持ちが湧いているにも関わらず、それでもあがらえない自殺に至る運命とは、いったい何なのでしょう。
病気? 血? 呪い?
古谷実の原作「ヒメアノール」でも、「異常殺人犯」を、「異常殺人犯」として生まれてしまった悲しい存在として描いていたように思います。
つまり、人間本人の問題ではなく、得体の知れない運命の仕業だと。
こんなことを言っていたら罪を裁けないので、本当はナンセンスなんですが、非常に重たく考えさせられる部分です。
容姿や性格は生まれもったもので、自分の意志ではどうしようもありません。
それと同じように、「異常者」「自殺者」もまた、もって生まれたものなのだ、世の中はどうしようもなく不公平なのだ、と言っているようでした。

住田も同じく、「殺人犯」「自殺者」という運命を擦り付けられている悲しい存在として描かれていて、救いのないラストシーンには、悔しささえ感じられるのでした。
  
確かに、ここが、古谷実の持ち味・テーマでもあるので、原作を好きな人は、映画版は許せないかもしれません。
映画版は生き抜きます。「運命」に、「希望」が打ち勝ったというわけです。
しかし! 再三言いますが、この先に幸せが待っているような二人に見えない! というのが、映画版「ヒミズ」の難点でもあるのです。

また、原作を読んでさらに確信することは、「震災場面」はやはり要らなかった。本来の「ヒミズ」のテーマとは全くそぐわないように思いました。
そのために、映画が何を訴えたいのかチグハグで、不安定な感じが出てしまったのだと思います。
 
あと映画版は、表現が漫画よりもマンガチックで、ストレート過ぎる印象です。

うーん、原作を読むと、やはり映画版「ヒミズ」の不満点がはっきりしてきたように思います。やはり、映画版はうまくいっていないのではないか、と。  

漫画版「ヒミズ」は、その他、映画版では省かれている興味深いエピソードも盛られていますので、なかなかおススメです。
  


   
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Posted on 2012/10/28 Sun. 02:32 [edit]

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