素人目線の映画感想ブログ

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28週後・・・ 夫婦愛も家族愛も、嘲る。 


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 28週後・・・
 (2007年 イギリス映画)80/100点


見事なほどに人間を描き出したイギリス流ゾンビ映画「28日後…」の続編です。
そちらの感想でも書きましたけど、素人目線的には、ホラー映画には2種類あって、「ただ人が殺されるのを楽しむホラー」と「人間を描き出しているホラー」に分けられると思っていまして、私は後者が好きです。
前作はもちろんの事、本作「28週後…」も、リアルにゾンビに溢れた世界を描き出していて、その緊張感や絶望感に良い意味でほとほと疲れ果てたのでした。

あらすじは、
人間を狂暴化させるレイジウィルスの脅威から28週後、感染者全員が餓死したことで事態は沈静化し、ロンドンには安全宣言が出され、米軍主導で少しずつ復興が開始されていた。復興地区で施設管理者として暮らすドン(ロバート・カーライル)の子ども達・タミーとアンディは、死んだと思われる母親の写真を探しに立ち入り禁止の実家に戻る。そこで生き延びていた母親を発見。しかし母親は、『無発症』という極めて異例な感染者だった…」というお話。

 
前作では、冒頭からすでに何の説明もないままイギリス全土にレイジ(狂気)ウィルスの感染者が蔓延していました。
本作では、冒頭でのシーンこそレイジウィルスに侵された世界ですが、すぐ次の場面では脅威が去っており、復興を開始した平和な風景が現れます。
美しく整然とした活気あふれる復興地区の描写は見ていて気持ちがいいほどです。どこか近未来的でもあり、平和が取り戻されていく充実した日々を感じます。
ま、もちろん、当たり前ですが、この平和はいつか崩れるわけですよ。平和を存分に感じさせといて…ガラリと真逆の地獄絵図を描いてやろうという魂胆。
いつ、どこで、どうやってウィルスが再発してしまうのか。見ていて、じわりとした緊張が胃のあたりをシクシクと痛ませます。

  無題3
  (復興に向け、何の問題もない。みな、そう信じていたのに…)


本作の優れたところは、まさに最悪のシチュエーションを随所に取り込んでいる所です。
そこでのリアル感のある場面描写や人物描写は、「さあ、自分がこんな状況になったらどうするよ!?」と否応なく考えさせるほど感情移入させます。だから、鑑賞が非常に疲れるのです。もちろん、疲れオモロイのですが。

ではここで、その最悪のシチュエーションをご紹介していきましょう。


(結末以外ネタバレしてます、すみません)


・妻を助けるか、ほっといて逃げるかの選択シチュエーションが最悪。
冒頭のシーンでは、まだレイジウィルスの蔓延した世界です。
ドンと妻のアリスは、田舎の一軒屋で、ほか数名と隠れて暮らしています。
そこへ男の子が一人逃げ込んできます。助けるために家の中に入れたものの、男の子は大量の感染者に追われていたのです。あっという間に感染者は家の中に侵入し、夫婦に襲いかかります。
一時は妻を助けようと必死になる夫のドンですが…もう、やばいと悟った瞬間。
夫は妻を置いて逃げます。妻は、夫に助けを求めて叫んでいます。
しかし夫は振り返りもせず、ひたすら逃げる逃げる逃げる。
冒頭のこの場面は、緑色のまぶしい芝生をドンが泣きそうな面持ちで疾走する名シーンです。前作のラストを盛り上げた名BGMも絡んで、素晴らしく残酷で印象的なシーンになっています。
「生き延びるための過酷な選択」は、前作の冒頭でも、感染者に傷つけられた仲間を躊躇なく切り殺すシーンで表現されていました。
この圧倒的な「生死の狭間」で、たとえ愛する人といえども命を賭して助けに戻ることができるのか。
逃げた夫を果たして誰が責めることができますか。このブログは嫁も見ますので断言しますが、私なら助けに戻ることでしょうね! …ね!
とはいえ…
余談ですけど、昔「サザエさん」でもありました。マスオさんが夢の中でサザエさんと一緒にライオンに追っかけられていて、小川にかかった木の板の橋を、先に渡ったマスオさんがはずしちゃって、目が覚めたあと、怪しいほどサザエさんに優しくしちゃうというお話。
石川五右衛門の話でもさもあらん。愛するわが子とともにかまゆでの刑にされた五右衛門は、最初の頃はわが子を頭の上に載せているけれど、いよいよ死ぬ段階になった頃には足の下に敷いちゃってた、とか。
身も蓋もないけど、人間、その瞬間になったらどうなるか分からないわけです。
どうですか、冒頭からこの皮肉。人間描写。なんかワクワクしませんか。しません…か…?

無題4
(すたこら~)

無題5
(あ! てめ、こらっ! たすけろコンチキショー!)
 
 
・見殺しにした妻が、実は生きていたというシチュエーションが最悪。
前述したように、冒頭からしばらくは平和な世界です。
米軍の厳戒態勢は続いていますが、もはや感染者は餓死によって死に絶えており、もう二度とあんな世界は訪れないだろう、というほどイギリスは復興に前進しています。
しかし、この日常が崩れる瞬間が実にあっけなく訪れるのです。(とはいえ結構上手な展開なので、ちょっと感心しましたけど)
平和の崩壊は、死んでいたと思われていたアリスを子供たちが禁止区域の我が家で見つけることに端を発しています。 
アリスは当初ショック状態ではありますが、次第に落ち着きを取り戻します。
しかし、実は彼女は感染者だったのです。
彼女が特殊な遺伝子の持ち主だっため、発症せずにすんでいるだけだったのです。しかし、ウィルスの保菌者であることは間違いないため、他の者が彼女の血液や唾液に触れると感染してしまいかねない…
そう米軍が気づいた時には、すでに遅かった。
実は、アリスが生きていることを知ったドンは、いてもたってもいられずに彼女に謝罪しようと、誰にも内緒で彼女に接近するのでした。
しかし、何と言葉をかけられますか。
  
「ちょっと無断で買い物しちゃったー。7年ローンだけど」 …まだ言いやすいですね。
「ちょっと浮気しちゃったー。つい出来心だよー」 …まだ回復の余地あるかな。
「ごめーん、見殺しにしちまったね。怖かったんだもん」 …絶望的です。

小遣い減るぐらいで済むと思ってんじゃーねーぞ、このゴクツブシがっ!ぐらい言われるでしょーね。(そんなもんじゃない)

・身動きできない状態で、そばにいる人が感染するシチュエーションが最悪。
ドンは警護をかいくぐり、あろうことか精密検査中で隔離されているアリスに接触します。
そして、アリスに謝罪するドン。
小遣いを減らされる程度じゃ済まないと思っていたのですが、あろうことか、アリスはドンをあっさりと赦します。
感極まったドンは、あろうことか、その場でアリスと口づけし…唾液と接触…
あろうことか…ドンは瞬く間に苦しみだし、あり得ないほど暴れ始めるのです。
感染です。
あろうことかアリスは、精密検査中のために手足を縛られていて動けません。
感染したドンは、もう見境なく…
他の映画ではよく見かける、「化け物になっても愛する人のことは覚えていて襲わない」、なんて素敵なことは一切起こりません。
あろうことかドンは、アリスを激しく殴打した末、両目を潰して殺します。
ひぇー! ここはさすがにドン引きの場面です。
ダニーボイル率いる製作スタッフ達は、よっぽど家族愛とか夫婦愛とかに恨みがあるんじゃなかろーか。
 
・平和だった日常があっさりと崩れ去るシチュエーションが最悪。
感染したドンは、米軍基地内で暴れます。
緊急事態に気づいた米軍は、住民をある大広間に閉じ込めます。
ぎゅうぎゅう詰めの室内。やがて電気も消され、暗闇に。騒ぐ住民たち。先ほどまでの静寂で平和な夜は、一瞬にして壊れてしまったのです。この急な変化が怖い。覚悟もないまま窮地に落とされるという過酷。
そして…その部屋の別の入り口からドンが飛び込んでくるのです。
逃げ道のない部屋内での大パニック…人々は襲われ、感染者になった者がまた人を襲う、という最悪の負の連鎖が再び起こりました。
あー、もー、こうなったらとっとと感染者になったほうが楽かもね!

・米軍は感染者の射殺を試みるも、誰が感染者か区別がつかないシチュエーションが最悪!
カギがかけられていた部屋の扉をぶち破り、住民たちは一斉に外へ逃げ出します。
当然追ってくる感染者たち。
四方を囲むビルの屋上から米軍のスナイパーが感染者の射殺を試みますが、住民なのか感染者なのか遠目では判別不明。
やむおえず軍が出した答えは、「コード・レッド」
感染者を絶対に街の外へ出してはならない、という最大の使命のために、住民と感染者の分け隔てなく「全員殺害」を決定するのです。
ひどい決定ですが、決して否定することもできない処置なだけに、やるせないやら切ないやら。どうしようもない絶望感が見事なほどに蔓延します。ほんと見てて疲れるよー。終始口がへの字だったわ。


とまあ、そういうわけで、この後はドンとアリスの子供たちであるタミーとアンディ、米軍の医務官であるスカーレットとスナイパーのドイル(ジェレミー・レナー)とともに、街の外へ逃げ出します。
さて…前半で再び感染が始まった時点で物語は終わったようなもので、また、前半の描写が見事過ぎちゃったせいで、後半は失速感が否めませんでした。
ひたすら逃げるだけなもので。
おまけに草原でのヘリコプターを用いた感染者一掃シーンなんて、またまたドン引きなグロ描写炸裂で…。
そういうのを期待しているんじゃないんだけどなあ…。

  無題1
  (前作同様、ランドマークに誰もいないという驚きの撮影。)


真っ暗闇の危険極まりない駅構内で、エスカレーターから転がり落ちただけで一同が離れ離れになるところは「?」でしたし、ドンと子供たちとの決着のつけ方も、あまり目新しさも意外性もなく…。アリスを見殺しにした、というドンの抱えた罪が伏線になっているようないないような、ちょっと強引な展開でした。そんなに家族愛が憎いかい?

とはいえ、近年のゾンビ系の映画では、抜群の完成度と内容の濃さだったと思います。
前作の監督、本作の制作総指揮であるダニーボイルいわく、続編「28ヶ月後…」の構想もあるそうですが、最近アカデミー賞は獲るは、ロンドンオリンピックの開会式の演出を手がけるはでお忙しいらしく、今だ実現しておりません。

本作の続編は、まだまだ先になりそうですね。楽しみにしております。  


 

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Posted on 2012/11/04 Sun. 21:39 [edit]

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コメント

 

感極まってキスするって外国ならではだなぁって思いました。
日本なら先ずキスはしないですからね。

URL |  #- | 2016/06/15 02:36 | edit

 

コメントありがとうございます。
確かに、唐突な感じです。
愛情溢れる行為が、死を招く皮肉が利いてますねえ。

URL | タイチ #- | 2016/06/15 08:03 | edit

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