素人目線の映画感想ブログ

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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い かわいい子には旅をさせよ。 

 
 無題
 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
 (2011年 アメリカ映画)80/100点


驚いたことに、本作を見てある仏教の逸話を思いだしました。
わが子を亡くした母親が悲しみに暮れて、お釈迦様に「生き返らせてほしい」と頼みました。
釈迦は言いました。
「それならば、今まで一人の死人も出ていない家を探し当てよ」と。
母親は探し回ります。幾日も幾日も。
しかし、ついにそんな家は一軒も見当たりません。
そこで母親は気づきます。
「そうか、人が死ぬことは特別なことではない。当たり前のことなのだ」と。
そのことを悟った時、母親は初めてわが子の死を受け止めることができたとか…


本作は、まさにその話の通りのロードムービーだと思いました。
似ているのは、たまたまなのかなあ…。

さて、そのあらすじは、「最愛の父を9.11で失ったオスカー少年(トーマス・ホーン)が、父親の残した謎の鍵に合う鍵穴を求め、鍵の入っていた袋に書かれた「ブラック」の文字を手がかりに、多くの人と関わっていく」というお話。

9.11でアメリカが経験した、とてつもない喪失感からの再生の物語です。
当然のことながら、実際にワールドトレードセンタービル内で亡くなられた方々の家族の傷は相当に深く、本作の主人公オスカーもその一人です。
9.11も、私たち日本人が経験した3.11でも、発表される犠牲者の数以上に、その残された家族も含めると、途方もない数の人たちが傷ついたのだということ。

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  (一瞬にして多くの悲劇を生んだ9.11)


オスカーの父親トーマスを演じるのはトム・ハンクス。
理系の秀才でありながら、家族を養うため宝石店を営んでいます。
トーマスは、オスカーにとってとても優しいパパです。 
そして、実に子どもの教育に優れたパパなのです。
さまざまな調査課題をオスカーに与え、達成した時の褒め方といい、大変素晴らしい手腕だと思います。
オスカーはパパについて、「僕を対等に扱ってくれる」と評していますが、それは最高評価だと思います。ちょっと頭が下がります。同じ年の子供を持つパパとして、はっとさせられる部分でした。

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  (基本、褒めて育てるオスカーパパ)


ただ、このオスカー少年自体も、実はすごい。
パパの素晴らしい教育があったとはいえ、はっきり言って人並みはずれた能力を持っています。
調査課題に対する視点の鋭さや、資料の作成の細やかさは、ちょっと普通レベルではありません。卓越し過ぎです。
この点に、現実感がないと反感を持たれる可能性はあります。
ずいぶん、生意気な感じですしね。
ただこの点は、彼がアスペルガーの症状を持っていると説明されることで、納得がいくようにできています。
そのために、人とのコミュニケーションの仕方に常識的でない面があったり、極度に臆病な性格(ブランコに乗れない等)であったりします。
(*アスペルガー症候群……「知的障害のない自閉症」とも言われ、対人能力にやや問題を抱えるが、特定の面で素晴らしい能力を発揮することがある。スピルバーグは自身がアスペルガーであることを公言している)

このオスカー役を射止めたトーマス・ホーンという少年は、実は本職の役者ではなく、あるクイズ番組のチャンピオンだとか。スペイン語、クロアチア語、北京語を理解する非常に秀才の少年です。彼は、相当に繊細なこの役を見事に演じきっています。
  
オスカー少年は、父親の死を受け入れられずにいます。
そのことを、秀才らしくこう表現しています。
太陽の光や熱が地球に到達するには8分かかる。たとえ太陽が爆発して消滅しても、その事に気づくのは8分後。パパが死んでから1年。パパとぼくの8分がだんだんなくなってきている気がする。その8分を引き伸ばすために、ぼくはパパの残した課題である、この鍵穴探しを続けるんだ」と。

本作は、意外にも複雑な構成を見せ、さまざまな謎が提示されます。オスカーが謎の鍵を見つけ、手がかりである「ブラック」の意味を探る果てに何が起きるのか。オスカーが執拗に母親を拒絶する理由や、オスカーが父親の最後の留守電記録を隠す理由などなど。その他、なぞのおじいちゃんが出てきたりもします。
終盤に謎が解明された時の衝撃たるや。
ちょっと油断していただけに、ふいを突かれて驚きました。(もうちょっと単純な話かと思ってましたもので)
これは、とても悲痛な物語なのでした。
けれど、それを乗り越える少年の成長の物語です。
終盤の、オスカー少年のある告白は、私にはとても気持ちが分かるから…とても胸に響きました。

周りの大人たちがまた優しくて。その点は、いかにも感動路線のアメリカ映画なんだけど、アメリカ全体の再生の物語でもあるわけだから、これぐらいはいいんじゃないでしょうか。


<ネタバレします。>


冒頭で仏教の逸話を記述しました。
オスカー少年は、この鍵穴探しを終えた時に、「みんな、何かを失っていた」ということに気づきます。
そして少年は、ようやく父親の死を受け入れるのです。
 
サンドラ・ブロック演じるオスカーの母親の活躍も大変見事です。オスカーのために、ある大胆な行動を起こします。
先ほど述べた大人たちの優しさは、当初不自然ささえ感じたのですが、まさかこの母親の行動の伏線だったとは…。
うーん、親の愛情のなんと深いことか。またしても恐れ入るのでした。

  無題2
  (再び絆を取り戻すのは、大変な努力が必要)


全ての子供を持つ親必見の、親子の再生の物語でもあるのです。
9.11という、まだ記憶に新しい圧倒的な現実の事件に対して、物語がややファンタジックな描き方であることに批判があるかもしれませんが、私はちょっと泣かされました。傑作です!


 

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Posted on 2012/11/26 Mon. 23:57 [edit]

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