素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

CUT /ナデリ監督が選ぶ名作映画ベスト100! 


 無題
 CUT
 (2011年 日本映画)
 75/100点



本作によると、今、シネコンでかかっている映画は「金儲け主義の娯楽であり、売春もの」だそうです。

売れない映画監督である主人公・秀二(西島秀俊)は、街中でそんなことを拡声器で叫び、喧伝してまわる本格的なシネフィルです。
(*シネフィル…映画マニア、オタクの度を超えた、狂おしいほどに映画を愛する人のこと。本当のシネフィルに比べたら、タランティーノでさえまだまだ青いのだとか)
 
そんなシネフィルが声高に、「今の糞映画が、真の映画を殺した」と叫び続けます。
黒澤明監督など、日本の名高い映画監督のお墓にお参りし、敬愛の念を示します。
私のような素人目線な映画好き程度の人間には、ほんとに頭が下がる思いです。

そんな私が果たしてこの映画の感想など書いても良いものかと、はたと頭を抱えましたけれど、勇気を振り絞って、いつものようにへらへらと綴ろうと思うわけです。
  
本作の監督はイラン出身で、映画祭でも高く評価されてきたアミール・ナデリ監督。
本作に漂うシネフィルの趣きは、監督自身の嗜好でもあるということです。
ゆえに、映画に流れるメッセージ性は、大変強烈であります。

あらすじは、「映画を愛する秀二は、日々『映画界の堕落』について怒りを抱えていた。ある日、ヤクザである兄が、秀二の映画製作のために作った借金を返済するため、無茶な方法で金を作ろうとして殺されてしまう。その借金を秀二が代わりに返済することになるが、その額およそ1200万円。返済のために秀二がとった方法は、殴られ屋を営むことであった…」というお話。


<ほとんどネタバレしています。>


とにかく、イタイイタイ映画です。ひたすら秀二は殴られます。
お金のためだけではありません。自分のせいで借金をさせてしまい、死なせてしまった兄に対する贖罪でもあるのです。

兄を可愛がっていたヤクザの親分が秀二の行動を見かね、「オレが残りの返済金を貸してやる。返すのはいつでもいいから」と助け舟を出しても、「金が問題じゃないんです。金だけのことなら、銀行強盗でもやってます」と突っぱねます。
非常に不器用な男でもあるわけです。
 
映画の構造は本当にシンプル。
主人公の彼が、殴られ続けるだけなのです。
果たして彼は、最後までこの苦行に耐え抜くのか。
 
脇役が結構いい味出してます。
で、出ましたデンデン。何やらローテンションな本作の雰囲気に不安になっていたところへ、目が覚めるような登場です。冷や水を浴びせるようなヤクザ芝居。一人でハイテンション。すごい存在感です。

常盤貴子も地味に出演。特に大きな役って感じでもないですけど、ショートカットが似合って良い感じでした。

 無題1
 
 無題2

 
主演の西島秀俊もかなりの熱演です。
正直、拡声器片手に街中で怒鳴っている姿はウザいですが、終盤まで殴られ続け、顔がみるみるうちに腫れ上がっていく姿、内包した怒りの表現は、身震いするほどの迫力でしたよ。

さて。

この映画が訴えていることに賛同できるかどうか。
それによって、この映画の感じ方が変わると思います。

特に、「シネコンの映画は、ほとんどがクソ」と言い切っちゃってますからね…。

言いたいこたぁは分かります。
確かに大手の商業映画、特に邦画におけるテレビ局主導の「本気…?」と思えるような映画の企画には、辟易するものを感じるのは確かです。

そして、それが興行収入ランキングで上位を席巷したりするので、「みんな、本気…?」と思うのも確かです。
そういうのを目の当たりにすると、秀二が訴えたい気持ちもよーく分かります。

でも、わかるけど、所詮それは…、独りよがりではありませんか?
人の好みじゃん。
拡声器片手に、「オレの好きな映画が一番で、お前らの観る映画は最低!」…って言われてもね。

私は、そこで秀二の不器用さに、ちょっと不快感さえ感じてしまったのです。彼は成功しないタイプだなあと、ちょっと斜めに見てしまいました。

シネコンの映画にだって良い映画はあると思います。どうたらこうたら細かい映画の見方は知りません。なにせ素人目線ですから。芸術性のない「くだらない映画」だって、立派に人を楽しませることができれば、それは一つの「映画」ではないでしょうか。
私はそう考えるから、俊二の訴えには反感を覚えました。

主人公に共感できない。

映画鑑賞において、最も致命的な状況に陥ってしまったのでした。
 
それから、殴られ屋の設定に無理を感じました。
一発5千円がどんどん値上がりして、一発1万円になりますが、どんだけ高いの? 
それで「オレ3発ね」とか言ってる人がいるのですが…。

そんなに殴るのが楽しいかい? しかも、彼は死にそうなほど殴られ過ぎて、フラフラの状態だというのに。
よほどのドSがいるものだとしても、毎日毎日、何十万も稼げるほど、都合よくドSが集まるもんかねえ。

ほいで。
普通、人は素手で殴られたら、そう何発ももたないと聞きます。
一発でだいたい倒れちゃうらしいです。
それが、最後の日なんて100発喰らうわけですから、もうファンタジー。

 無題3

 
100発喰らいながら、なぜか秀二の(たぶんナデリ監督の)今まで見た映画ベスト100が発表されます。…なぜに!?
1発喰らうごとに一つずつ発表されます。演出としては斬新です。…でも、なぜ!?

考えてみたら、そもそもこのシネフィルという設定と殴られ屋の設定って、うまくシンクロできているだろうか?
次第に根本に疑問を持ちそうになりましたが、演出の力強さに、ま…まあ、アリなのかなと…、強引に納得しましたけども。

…さて、100発のパンチを受けた後に、俊二を待ち受ける運命とは天国か地獄か。

実を言いますと…私、秀二の主張に反感を持ったのは確かなんですけど、そうはいっても、秀二のベスト100を見ていたら、何だか無性に、昔の「真の映画」とやらを観たい気がしてきたのです。

いくつかは観てますけど、ほとんど観たことのない映画のラインナップでした。
そうだよなあ。こういう映画を観ないといかんよなあ、と思わせるあたり、この映画の本質に実はやられちゃったのかもしれません。

というわけでして。
己の素人目線を反省し、本作の終盤で発表される「名作映画ベスト100」を、なんと一挙書き出してみます。ひゃー、疲れそうだなー。

監督名はご勘弁を。
タイトルと年代のみ。
ただし、タイトルは原題です。訳さないと邦題が分かりません。
ご興味のある方はググってみては?
クイズ形式で、当ててみるのも一興ですぜ。

ではスタート!

 100位~
 Welfare(1975)
 knife in the Water(1962)
 Raise the Red Lantern(1991)
 The Wind(1928)
 Pixote(1981)
 Fat City(1970)
 Closely Observed Trains(1966)
 La Terre Trema(1948)
 Hoop Dreams(1994) 
 Peeping Tom(1960)

 90位~
 Dekalog(1989-1990)
 Kwaidan(1964)
 Yol(1982) 
 HANA-BI(1997)
 The Conversation(1974)
 Oya(1929)
 The Night of the Hunter(1955)
 Stranger than Paradaise(1984)
 Quince Tree of the sun(1992)
 Eraser head(1977)

 80位~
 Le Quai des Brumes(1938)
 Salvatore Giuliano(1962)
 Time of the Gypsies(1988)
 The Bohemian Life(1992)
 The Round-Up(1966)
 Der Stand der Dinge(1982)
 La Strada(1954)
 The Hole(1998)
 Nashville(1975)
 Vivre Sa Vie(1962)

 70位~
 Manila in the Claws of Neon(1975)
 Fitzcarraldo(1982)
 Pepper mint candy(1999)
 Xala(1975)
 Blissfully Yours(2002)
 Sur(1988)
 Antonio das Mortes(1969)
 La Belle Noisevse(1991)
 Vertigo(1958) 
 Man with a Movie Camera(1929)

 60位~
 Shock Corridor(1963)
 One Flew Over the Cuckoo`s Nest(1975)
 Red River(1948)
 van Gogh(1991)
 The travelling Players(1975)
 The Battle of Algiers(1966)
 Lola Montes(1955)
 Throw Away Your Books,Rally in the Streets(1971)
 Satantango(1994)
 A time to Live and a Time to die(1986)

 50位~ 
 Boy(1969)
 Floating Clouds(1955)
 Ali:Fear Eats the Soul(1974)
 Briganti(1996)
 Accattone(1961)
 The Ballad of Narayama(1983)
 Bicycle Thieves(1948)
 Johnny Guitar(1954)
 The Naked Island(1960)
 The killing of a Chinese Bookie(1976)

 40位~
 L`eclisse(1962)
 Paths of Glory(1957)
 Woman in the Dunes(1964)
 Close Up(1990)
 Sunset Boulevard(1950)
 L`albero Degli Zoccoli(1978)
 The Catch(1983)
 le Samourai(1967)
 kes(1969)
 A Simple Event(1973)

 30位~
 L`Enfant sauvage(1970)
 Raging Bull(1980)
 Rashomon(1950)
 M(1931)
 Wild Strawberries(1957)
 La Grande Illusion(1937)
 Viridiana(1961)
 The Third Man(1949)
 Detour(1945)
 Play Time(1967)

 20位~
 Intolerance(1916)
 Greed(1924)
 Paisa(1946)
 Tokyo Story(1953)
 Nanook of the North(1922)
 Andrei Rublev(1966)
 City Lights(1931)
 Mouchette(1967)
 The General(1926)
 the Passion of Joan of Arc(1928)

 10位~
 Pather Panchali(1955)
 Battle Potemkin(1925)
 2001:A Space Odyssey(1968)
 Late Spring(1949)
 The Searchers(1956)
 Sunrise(1927)
 Throne of Blood(1957)
 A Trip to the Moon(1902)
 L`Atalante(1934)
 Ugetsu Monogatari(1953)
 81/2(1963)
 Citizen Kane(1941)


  
無題4

無題5

無題6
(ナデリ監督による「オレの考えたベスト3」です。)


というわけでございまして、何ともストイックな番付でした。
このランキングにかかっちゃあ、一般的なランキングで上位になる『ショーシャンクの空に』や『ゴッドファーザー』は、まるで相手ではないということか…。
もちろん、これもまた「個人の好み」ですけど。

しかし、「名作」と言われる作品群であることに変わりはないので、頑張ってこのランキングの映画を一本でも多く観ようと決意する今日この頃なのでした。

原題なのが、ちょっと分かりにくいランキングですがね。
1位なんて、「シチズン カネ?」 …何? え? 時計の映画? と一瞬勘違いしてしまう有様で。
うまい具合にドラッグ、コピー、貼り付けでググってください。

個人的には、最上位付近にある『雨月物語』が気になります。

また、最近の邦画では、『HANA-BI』がランクインしていることに驚きました。
北野武、『アウトレイジ』ばかり撮ってる場合じゃないかも。

皆様も、機会がありましたら上記作品をぜひご覧あれ。
秀二いわく「真の映画を生き残らせるためには、とにかく観賞することだ」


↓本作に関連したオススメ記事です。西島秀俊主演のためか、女性票多し…。
・CUT/映画を愛する俺だから、映画のためには痛みさえ/映画感想 * FRAGILE

・CUT/LOVEシネマ調布

・「CUT」 すげえ映画(。・w・。 )
  /ジョニー・タピア Cinemas ~たぴあの映画レビューと子育て





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Posted on 2012/12/02 Sun. 23:54 [edit]

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02

コメント

 

wowwowでやったので見ましたが 途中からながら見でした、ごめんなさい。
ただ、100リストを載せてくれたのは とても嬉しいです。感謝。
邦画と街の灯・第3の男くらいしかわかりませんが、少しづつチャレンジしていきたいです。
もしかして監督はこれを発表したくて この映画をつくった?
おそらくストーリーより演出重視だと思うので ついていけるか心配ですが・・・

URL | Q #- | 2014/09/08 08:51 | edit

Q 様 

コメントありがとうございます。

クラシックな名画ばかりですから、気合が必要ですね。
「ショーシャンクの空」なんかでさえ、入ってませんから。

そんな中、「HANA-BI」が入っているのは驚きました。
北野映画って、やっぱり海外受け凄いんだなーと改めて。

URL | タイチ #- | 2014/09/08 14:07 | edit

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