素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。

ミッドナイト・イン・パリ こんなことも起きるさ、パリだもの。 


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 ミッドナイト・イン・パリ
 (2011年 アメリカ映画)85/100点

 
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冒頭からパリの風景がこれでもかと映し出されます。
音楽も優雅に、まさに魔法をかけられているかのような心持ち。
どこを切り取っても、ため息の出るほど美しい街、それはパリ。

本作は、アカデミー脚本賞を受賞したウッディ・アレン監督の傑作です。
 
あらすじは、「主人公のギル(オーウェン・ウィルソン)は、小説家を目指すハリウッドの脚本家。芸術の都パリに心酔し、パリに住みたいと考えている。婚前旅行で訪れたパリで、ギルは深夜の散歩中、レトロな車に乗せられて古めかしいバーを訪れる。そこで出会うのは、1920年代の作家、F・スコット・フィッツジェラルドとその妻であり、やはり作家のゼルダ。ギルは、黄金時代だと憧れる1920年代のパリにタイムスリップしていたのだった」というお話。

なんか気難しそうな芸術映画と思うなかれ。
たくさんのクラシックな芸術家がたくさん登場しますけど、私自身、はっきり言って「ヘミングウェイ」と「ダリ」と「ピカソ」くらいしか分かりませんでしたけど、なんて心地の良い映画かと思って、にやにやして鑑賞していました。
本当に不思議な魔法のような映画です。
複雑なストーリーなんてありません。
ただただ、1920年代にタイムスリップし、憧れの芸術家たちと飲み明かすって、それだけの映画なのです。

ギルは、ハリウッドの売れっ子脚本家です。
商売至上主義の今の仕事にうんざりしており、真の芸術活動を求め小説家を志しています。
しかし、婚約者はお金持ちの娘で、そんなロマンに興味はなく、ギルの夢を冷めた目で見ています。
婚約者の両親もギルに否定的です。
ギルは婚前旅行でパリに訪れ、婚約者に「パリに住もう!」なんて提案しますが、さらりと拒絶される始末。
そこでギルは、真夜中に一人寂しくパリをうろついていると…
あららいつの間にか、ビルの憧れの1920年代のパリにタイムスリップしちゃってたわ、となるのです。
理屈は一切ありません。
深夜0時の鐘の音とともに現れる、クラシカルな車に乗り込めばそれだけでいいのです。
決してプルトニウムを積んだ車をかっ飛ばす必要はありません。
時間が第4の次元であり、この第4の次元の中で時間移動装置がうーたらどーたら、なんて理論も必要ありません。
机の引き出しに潜り込むライトな感覚でオッケー。
そしてまた、ギルの反応が極めて素直で面倒臭くなくていいです。
わー、ヘミングウェイだ! まじ? サイコー」ってそんな感じだもの。
疑いを知らぬ男ギル。(ま、そんなんだから、一方その頃フィアンセは…ムニョムニョ。)
また芸術家たちのギルへの反応もとても寛容で、こちらが思わず綻んでしまうほど親しみに溢れています。
挙句には、ギルの「未来から来た」という告白をあっさり納得。
そんなことは不思議でもなんでもないわい…という偉大なる包容力でギルを受け止めます。

1920年代のパリは、ミッドナイトシーンのみ。そして、ほとんどが酒場や屋内のシーンです。
限られた時間と空間という制約が神秘さを強め、この魔法の美しさを一段と際立たせます。

とにかく、たくさんの大物芸術家が登場し、それぞれみんな強い個性で演じられていました。

・コール・ポーター
・F・スコット・フィッツジェラルド
・ゼルダ・フィッツジェラルド
・アーネスト・ヘミングウェイ
・ジョセフィン・ベーカー
・ガートルード・スタイン
・パブロ・ピカソ
・ジューナ・バーンズ
・サルバドール・ダリ
・マン・レイ
・ルイス・ブニュエル
・T・S・エリオット
・アンリ・マティス

といった面々が登場し、芸術について語らいます。
前述しましたように、私の知っていたのは上記から3人くらいだったので、なんとも教養のなさを嘆いたものですが、それでも、映画全体に漂う得体の知れないおかしみや、ギルをはじめ天才的な芸術家たちの純粋で奔放な個性による機知や皮肉、情愛を眺めているだけで、夢うつつな気分になれたのです。

  無題
  (マン・レイとダリ)

  無題1
  (ピカソの絵を批評するスタイン。真ん中はヘミングウェイ)


もちろん、登場する芸術家の作品を知っていた方が、さらにセリフやエピソードを楽しめるのは確かです。
例えば。
ギルが有名な芸術家(映画監督)の一人「ルイス・ブニュエル」に、「こういう映画のアイディアがあるんだ。晩餐会の会場から出られない人たちがいてね…」と話しかけ、ブニュエルが「…なぜ出られないんだ?」と首をかしげるシーンがあります。
これ、なんか意味があるんだろううなーと思って調べたら、ブニュエルの映画「皆殺しの天使」で、かつて物議をかもしたシーンの話だったのです。
他にも、ヘミングウェイの「パリは移動祝祭日だ」というセリフとか、やたらサイの話をしたがるダリなどなど。

さて、ギルは1920年代のピカソの愛人・アドリアナと出会い、一瞬で恋に落ちます。
かたや現代に戻ると、ギルの話に耳を貸さず、ギルの嫌っているインテリな男にコロッとまいっているフィアンセの姿。
次第に、ギルはアドリアナに夢中になっていきます。
ただ、ギルはギルで、恋人に共感を求め過ぎたり、義父に向かって「お義父さんが共和党を支持するのは狂気の沙汰だ」と言ってのけたり、アドリアナとの仲を深めるために婚約者の宝飾品を盗み出したり…非常に利己的だし幼稚です。
アドリアナが「芸術家は子供よ」と言いますが、それはギルにも当てはまるのでした。
もちろん、それは、アドリアナがギルに惹かれた要因でもある「飾らない」という長所でもあるのですが。

  無題3
  (ギルとアドリアナ)


後半の展開はバタバタとして唐突な部分も多いですけど、理屈はいらない映画なのでこれもオーケー。
夢が訪れ、そして覚める瞬間とは、こんなものなのでしょう。

ところで、今をときめく「レア・セドゥ」が主人公の共感役として出ていました。
さすがウッディ・アレン。目の付けどころがいいですな。
映画にもうひと花、鮮やかな色を足していました。

本作で示される教訓は「過去に幻想を抱くな」というもの。知識をひけらかすインテリ男は、過去への羨望を「黄金時代症候群」とし、ギルの前で平然と「欠陥のある思考」だと言います。
重すぎず、オーソドックスなこのテーマは、終盤でうまくまとめられていました。
「近頃の若者はなっとらん」と古代の壁画にも書かれていたというくらい、みんな「過去」に憧れるものなのです。
余談ですが、「昭和30年代」羨望論も非常に疑わしく思います。確かに元気のあった時代でしょうけど、貧困、格差、病気、暴力、少年犯罪は、今と比べられないほどひどかったと聞きますし…

本作を見れば、きっと落ち着いたバーで酒を交わしながら、趣味の合う仲間と語らいたいなあと思うはずです。


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Posted on 2012/12/11 Tue. 23:06 [edit]

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コメント

こんにちは 

レビューを楽しく読ませていただき、
早速観たくなってAmazonへ。
連休後半の楽しみができました。ありがとうございます。

URL | 藤の香り #- | 2013/04/28 17:21 | edit

コメントありがとうございます。 

「ミッドナイト・イン・パリ」は、

静かな深夜に、

お酒を飲みながら見ると、

最高だと思います。

私はお酒が飲めませんが…それでも心地良い映画でした。

まるで、夢の中のような空気感が素晴らしいです。

ぜひ、どうぞ。

URL | タイチ #- | 2013/04/28 18:38 | edit

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