素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

描かねえ駿は、ただの駿だ。 


NHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」


先日NHKで放送されたスペシャル番組を観ました。それが、とても面白かったので、感想を書こうと思います。

一言でいうと…、まー「案の定」。

そうだろうと思いました。

宮崎駿、長編映画復活!?

宮崎2


2013年、突然の引退記者会見のあと、3年の月日を越え、ついに彼の気まぐれが炸裂!
たぶんこの人は、その場その場の感情で生きているタイプの人なんだろうなあ。さっきまでニコニコしていたのに、急に怒り出したり、その逆もあったり。あまり先を見据えていない人だと思います。まさに、気分屋の極致です。

いえね。近年の宮崎監督の作品は、物語には賛否あるとはいえ、最終作『風立ちぬ』もしかり、その映像の表現力は微塵も衰えていなかったと思うのです。それどころかむしろ、どんどんパワフルになっていたほどだと思ってさえいました。ゆえに、「引退できるわけないじゃん…」と確信してはいたのです。
ドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』の終盤では、宮崎監督は窓から眺める風景を見ながら、どんどん創作イメージを溢れさせていたじゃありませんか。「いつまでも走っていける気がする…」なんてこぼしながら。
『崖の上のポニョ』にしても『風立ちぬ』にしても、あからさまに黄泉の国が出てきたりし、宮崎監督が「死」の恐怖と直面している心理が映画によく表れています。しかし、宮崎監督は、少なくとも画面から見える風体は全く変わっておらず、元気そのもの。

宮崎4


もちろん。

長編映画100%復活というわけではなく、出来るかどうか絵コンテを試しに書き始めたに過ぎない、といいますが…、いやいや、やる気満々でしょーもん。

番組中、宮崎監督が絶え間なく「ぼやく」んですけど、恐らく、この人は「自分の願望」をいつも否定している皮肉屋なんだと思ったものです。

「僕はニヒリストじゃない」→「いや、ニヒリストだ」
「僕はリタイヤじじいです。年金受給者です。断末期なんです」 → 「歳はとりたくねえ」
「老人にもう一度青春が来るなんて思ったら間違いだ」 → 「トキメキたいな…」
「長編映画なんて出来るわけがない」 → 「若い奴にやらせるくらいなら…オレガヤルンダ…、やりたい!」


もう…、聞いてて丸わかりなんです。常に真意と真逆の事を口走っているのです。強い想いを押し殺すために、自分を戒めているというか。諭しているというか。想いがダメだった時の布石を自分で置いているというか。

環境さえあれば(つまり制作資金が集まれば)、絶対彼は長編映画を作ります。そう確信するものです。ただ…、ジブリの制作部が解散した今、果たして有能なスタッフが集まるのかどうかは分かりませんが。ポスト宮崎駿と思われる監督たちも、ちらほら現れていますしね…。

さて。

この番組では、引退後の宮崎監督がジブリ美術館用の短編映画「毛虫のボロ」を手掛ける様子が映し出されます。
面白かったのは、CG嫌いで知られている宮崎監督が、CGに興味を持っていく過程でした。若手の精鋭CGクリエイターたちと宮崎駿との出会い。ヤングミーツオールド。この邂逅は、実に興味深かったです。
好々爺のようにニコニコして、若い作家たちのCG映像を評価する宮崎監督。「面白いねえ」と。明らかに刺激を受けている様子がありました。そして…やはりというか、どんどん口や手を出していくのです。おまけに、CGを作るタブレットまで扱いだす始末。なんたる勉強意欲ですか。番組中、『千と千尋の神隠し』のカオナシが湯屋の者達を食らう姿を、宮崎監督と重ねているような描写がありました。それは、アニメスタジオが(宮崎監督が)若手の才能を食らう、という意味合いでしたが、貪欲に新しい表現技術を吸収しようとする宮崎監督の姿もまたしかりなのです。

若いCGクリエイターさんたちは、もちろん宮崎駿のことは十分知っているとは思いますが、何だか世代が違っていて、あまり緊張感が見えないところも面白かったです。宮崎監督から大量の絵コンテを渡され、「こんなにあると無視できないね」などと軽口で応えているのだから、ああ…、新しい世代に変わりつつあるんだなあという時代の流れを感じたものです。

宮崎


ところで。

この番組で話題になったのは、ドワンゴの代表取締役である川上さんに、宮崎監督が怒りを露わにした場面でした。川上さんがプレゼンしたCG映像に対し、「生命への冒涜」と一刀両断。その映像とは、人口知能を付与した生き物を自由に歩かせてみるというものですが…。確かに「気味が悪い」ものだった。その技術や心意気自体はおかしいとは思いませんけど、果たして何故これを宮崎監督に見せたのか。「ソンビゲームに使えるかも」などと言っていましたが、そもそも宮崎監督がゾンビゲームに興味を持っているのか…。ちょっと川上さんの意図がよく分からないシーンでしたね。

余談ですけど、NHKが作る宮崎駿監督のドキュメンタリー番組が秀逸なのは、こういう宮崎監督の怖い一面まで放送してしまうところです。時には、気に入らない仕事をしたスタッフを恫喝する場面まで流します。大昔、宮崎監督には、「自然を大切にする」優しい映像作家というイメージがありましたけど、今やすっかり、偏屈、怖い、気まぐれ、ニヒリスト、ヘビースモーカー、ロリコ― マイナスなイメージばっかり。そう。「天才」とはこういうもの。それは、『リーガルハイ 2期』の第7話でもパロディ化され描かれていましたね。その方が、人間的に面白いってものです。

ということで。

様々な刺激を受けた結果、番組の終盤に、ついに宮崎監督は鈴木プロデューサーに長編映画の企画書を渡します。
(若い奴より、やっぱオレがやんなきゃダメだな)くらい思っているのかもしれません。いや、思ってるな。
すまし顔でその企画書を受け取ってみせる鈴木プロデューサー。
鈴木さんいわく、「制作途中で監督が死んだらこの映画はヒットしますよ」だって。
ずっこけてみせる宮崎監督。前述のように、年齢を重ねることを明らかに恐れている宮崎監督ですが、「何もしないで死ぬよりも、何かをしている最中に死ぬ方がマシ」と語り、番組は幕を閉じるのです。果たして、長編映画企画は、このまま無事に進んでいくのでしょうか。いやいや、まだまだ宮崎監督は安泰だと私は思います。だって、顔つきが全然仏顔じゃないもの。ぎらぎらしているもの。若い奴に負けるかという野心でたぎっているもの。結局、CGクリエイターたちに任せきれず、自分で創り上げた『毛虫のボロ』のオープニングシーンは、チラ見でしたけど、やはり鮮烈なものでした。最初に若手が作ってきたものとは、画面作りや動きが、天地の差があるほど違うものでした。やはり、天才・宮崎監督の腕は、一ミリも衰えていないのです。

宮崎3


ところで。最後に。

以上の宮崎監督の一連の流れを画策したのって、きっと鈴木プロデューサーでしょう。この人は、いつもこうして宮崎監督を動かしているなあ…。番組内では終始、脇役に徹して目立っていなかったけれど。
分かりますよ、そりゃあ。
番組のタイトル「終わらない人」の題字を書いたのって、…鈴木さんでしょう?


…。


この半端ない黒幕感たるや。

若いクリエーターさんたちは、あまりこの人たちに関わらない方がいいかもしれませんよ。
それこそ、何でも飲み込んじゃうカオナシどころか、作家生命まで奪おうとするデイタラボッチですから。


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Posted on 2016/11/20 Sun. 10:53 [edit]

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