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アウトレイジ最終章 /西やん塩やんの「オレたちに仁義はない」 


最終章
 アウトレイジ最終章
 (2017年 日本映画)  
 84/100点





そう、もうこれに尽きます。
そして本作は、西田敏行と塩見三省両氏のバディ映画といっても過言ではありません。

それにしても二人とも、かなり具合の悪い病み上がりだそうです。西田敏行は頸椎亜脱臼(痛そう…)、塩見三省は脳梗塞。そんな重たい病後、歩行も困難な中で、役者魂が絞り出した名演。いろいろと不満点もないこともない本作ですが、この二人が観られただけでも、ホントに価値は高いです。

とにかく、二人とも命がたぎってます。鬼気迫る顔面。

西田敏行のドスの利きまくったセリフ回しと、止まらないアドリブの茶目っ気。北野武が「軒並みカットしてやった!」と豪語していただけに、西田敏行が「迷惑も、ハローワークもあるかい!」と叫んだ時には笑った。非情な編集をかいくぐって生き残った、魂のアドリブ。

塩見三省の枯れた哀愁さえ漂う中での、抜け目ない老獪さ。前作と違って迫力は削がれましたが、組織の波に呑まれそうになりながら、騙されたフリして乗り切ろうとする姿には、愛嬌さえ感じます。

前作ビヨンドの時には、「たちの悪い乱暴者」でしかなかった二人が、ここまで魅力的に物語を引っ張っていくとは。

最終章2

最終章5


他にも、中年おっさん俳優たちが大活躍。

やはり北野映画の常連、大杉連のヤクザな怒声は、耳に心地いいです。元・証券マンとは思えない迫力。企業人もヤクザも同じようなもの、という皮肉なのか。彼と、花菱の幹部連中との一触即発な掛け合いには、俄然緊張感があるのです。

岸部一徳は、出番や動きこそ少ないですが、その佇まいの不気味さだけで、いつか何かを引き起こしそうな空気を作りだします。

本作一番人気と言われるピエール瀧は、すでに『凶悪』でヤクザとしての才能を存分に発揮してました。本作でも、その類まれな顔面で強面を貫くのかと思いきや、ドM設定な上、終始「いじられ役」だったという、憎めなさっぷり。先輩連中に、ことごとく怒鳴られ要求され痛めつけられビビらされる様子が、気の毒で大変かわいいです。
ある意味、本作でのマスコット的存在なのでした。

最終章3


驚いたのは、韓国側のフィクサーを演じた金田時男氏。この人、俳優じゃありません。北野武の知り合いの実業家だそうです。
にしても、申し分のない存在感。前作よりも出番が多いうえ、銃口を睨み付けたり、啖呵をきる場面まであります。素人っぽいセリフ回しですけど、「本物の大物」だからこそ滲むリアルがあります。
こういうキャスティング力は、北野武の真骨頂。さすがです。
でも、あんまりみんなが褒めちゃうと、「ただの素人やないかい!」と西田敏行が怒りそう。

最終章0

名高達男光石研のコソコソした落ちぶれコンビも、哀しくて良かった。この二人は、もうちっと動かしたら、『隠れ砦の三悪人』の太平と又七くらい面白コンビになった気もします。

刑事役の松重豊は、ヤクザも警察も欺いていた先輩刑事の片岡とは違い、まっとうに職務を果たしたい熱血漢です。
彼が、組織の論理に憤怒する場面が素晴らしかった。本作で唯一の良心です。
彼は大友を逮捕したい一心ですが、出来れば、同じように組織の論理に馴染めない大友との共謀みたいなものがあると、面白かったように思います。

とにかく。

こんな渋味の濃いキャスティングだけでヤクザ映画が撮れるなんて、北野武くらいにしか出来ない所業でしょう。

さて。

物語は、意外に複雑です。登場人物が多いので、誰と誰がどう繋がっているのか、途中で混乱しそうになります。事前にネットで相関図くらい見ておくといいかも。

そして結局、「いつだって誰もが誰か裏切り裏切られようとしているのさ。」
けれどそんな中、絶対に切れない二人組も存在します。裏切り上等の中だけに、その絆には余計に「スープみたいなあったかさ」を感じます。それは果たして誰と誰なのか。義理を果たす者と果たさない者との結末はどうなるのか。そういった視点で観ても、面白いかもしれません。

ただ!

実は、本作の「物語」には、微妙にノレない部分もあったのですが…。

<以下、結末以外、ややネタバレします>
最終章7


一番解せなかったのは、主人公・大友の行動理由です。韓国での風俗稼業で生計を立て、落ち着いていた様子の大友が、わざわざ抗争しに日本に戻る理由が見えません。
もちろん、自分が慕う張会長の手下がやられたことで、「落とし前」を付けなきゃいけないのは分かります。だけど、肝心の張会長が「やめてくれ」と頼んでいるのに。

大友さん…、それってヤクザにありがちな、恩の押し貸しでしかありませんよ?

何度も何度も張会長は「やめなさい」と言っているんだけど…。大友の耳にはひょっとして、「フリじゃないぞっ。フリじゃないからなっ。やるな。やるなよー!」とでも聞こえたんでしょうか…?

そして、同じように、武の舎弟を演じる大森南朋が、なぜ武を慕っているのか、命を賭けて花菱会に乗り込むのかが分かりません。分からないから、彼が時折見せる「ほがらかな笑み」が、何だか心地悪いのです。

「裏切り」であれば、一方の「怒声」一つで、もう片方の行動理由が説明できますが、「絆の深さ」には、もう少し描写が必要だと思うのです。オープニングの「釣り」場面が、あんまり機能してないなあと。

花菱会と韓国フィクサー側とのやり取りは存分に面白いんですけど、メインである大友たちの描写がそんなだから、物語の展開に今一つのめり込めなかったのが残念だったものです。

アウトレイジ10


それから、『アウトレイジ』シリーズは時折、撮り方が凡庸じゃないでしょうか。『1』でのサウナや大友組事務所襲撃、『2』での運転席の窓越しの銃撃しかり、本作でも、銃撃場面が、結構ワンパターンです。見せ場であるはずの、狭い車内での銃撃戦や宴会場での乱射シーンも、個人的にぱっとしませんでした。
『ソナチネ』でのエレベーター内の銃撃戦や、『ブラザー』でのマフィア幹部一掃シーンの方が、遥かに鮮烈です。
それと、武はピストルの撃ち方はカッコイイんですけど、マシンガンの撃ち方(持ち方)は、ひどく不格好じゃありませんか?

また、「花火」のシーンも、最後のカットがあまりに単純だなあ…。

そして、一番物足りなかったのは、ラストです。
その後に残る余韻が、『ソナチネ』の足元にも及びません。どうしてあそこ、撮り方にこだわらなかったんだろうか…、と思うのです。あえて、あっさりした感じにしたかったのだろうか?

…という風に、不満点もあった本作なんですけど、鑑賞から日が経つにつれ、どうしても頭から離れないのは、やはりあの二人。



こりゃあ数年後、この二人での続編があるかもしれませんよ。
「オレたちに仁義はない」
「明後日に向かって撃っちゃった」
「花菱・オブ・ザ・デッド」
「猟奇的な西野」


…最後らへんだけ余計でした。


『アウトレイジ』の感想はこちら。

『アウトレイジビヨンド』の感想はこちら。

『北野映画 まとめ 短感<前半>』 はこちら。

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Posted on 2017/10/09 Mon. 11:01 [edit]

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