素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

ラストオブアス2/この憎しみの体感は、映画を越える。 

 ラストオブアス2
 ラストオブアス2
 (2020年 アメリカ・ビデオゲーム) 
  90/100点



<重大なネタバレをしています>


本作は、ビデオゲームです。
「映画のようなゲーム」という表現は以前からありました。けれど、前作『ラストオブアス』のラストシーンは、まさに映画に引けをとらず、強烈な余韻を残す素晴らしいものでした。程度の低い言い方をすれば、ベネチアあたりが評価してもいいほど、「映画的に深みのある物語」だったんです。

だからこそ、続編には「物語」への期待がうなぎ上っていたものです。

ただ。

本作の「物語」に対する評価は賛否両論。
炎上までしたのは、ひとつには、ポリコレ表現に要因があるようです。LGBTや人種に配慮した物語が映画の世界にも広まっています。私自身『シェイプ・オブ・ウォーター』や『ムーンライト』の評価に、一遍の疑問を感じたのは正直なところ。本作も、主人公エリーがレズビアンであったり、トランスジェンダーやアジア人のキャラクターの登場など、ポリコレ設定にあふれています。

-2ラストオブアス2


もう一つ。
主要なキャラクターの残酷な扱いにも要因があります。前作の主人公:ジョエルが序盤で退場するくだりは、確かに衝撃でした。本作の一番最初のPV公開時、ジョエルは生きていないのでは? と不安視され、その後公開されたPVで彼の姿が登場した時、前作のファンは安堵していたと思います。それは、再びジョエルとエリーの(共闘という意味での)物語が観たい! という希望を持つプレイヤーが多かったからです。

その期待が序盤で覆る。その哀しい事態に、プレイヤーはパニックに陥りました。

だけど。
それこそが、本作の狙いです。本作のテーマは「復讐」 プレイヤーの期待を裏切ってでもジョエルを退場させることで、制作陣は「復讐」を本気で描く覚悟を示しました。プレイヤーに、腹の底から「復讐心」を沸き立たせようとした…のではないでしょうか。

事実、不本意であっても、エリーが凄惨な世界に飛び込む理由として十分な悲劇であることは、誰しもが納得させられたと思います。
が。
プレイヤーをさらに戸惑わせたのは。
そのジョエルを退場に追い込んだキャラクター:アビーを、プレイヤーに操作させるという仰天の荒業。私自身、アビーを動かすことが疑問でした。主人公の仇を操作したって、面白くもなんともない。だから、アビー編の序盤は、とても空虚なゲームプレイになっていました(この時点での本作への評価は、私自身ダダ下がりでした)。

-1ラストオブアス2

しかし。
アビーの物語を体験し、彼女の抱えた境遇、事情が段々とわかってくるにつれ、次第にアビーにも感情移入していきます。驚くべきことに、これが制作陣の真の狙いでした。エリーにも、アビーにも感情移入させたうえで、終盤に二人の殺し合いを描くのです。憎しみ合うことのもの悲しさを、嫌というほど突き付けられた瞬間でした。

(戦わないでくれ!) 
その想いが炸裂します。
これは凄い。操作できるゲームだからこその、映画では決して感じることの出来ない体験です。アビーを操作しエリーを、エリーを操作しアビーを、とことん痛めつけることをプレイヤーに強いるなんて。今までにないよ、こんなの。二人のぐちゃぐちゃな表情が胸に迫って辛いのなんの。

本作の目をそむけたくなるほどの暴力描写は、そういった体験の深度をさらに深める為にあります。だから、本作のゲームプレイには、普通のゲームのような爽快感はありません。ゲームとしての楽しさより、プレイヤーを物語の中に叩き込むことに全精力を傾けていると言ってもいい。(実際、個人的にゲーム性の評価は普通くらいです)

-4ラストオブアス2


最後までプレイすることで、先に述べたポリコレ表現にも、しっかりとした狙いが観て取れます。本作の本当のテーマは、「赦し」 それは、広く「他者への理解」という意味も含まれます。だからこそ、ポリコレ表現は、本作にとって必要な表現なのだと理解できました。(とは言っても、勧善懲悪に悪い奴らも登場し、そいつらはメッタメタにやられますが)

ラスト。
なぜエリーはアビーを見逃したのか。それは、エリーにまとわりついたトラウマの理由が、アビーを生かしていることが原因ではないからです。エリーとジョエルの間には、前作の結末に端を発した「確執」がありました。それを許すことのできないままジョエルと別れてしまったことが、すべての元凶です。エリーは、アビーにジョエルの姿を見たのではないでしょうか。なぜなら、終盤に守るべき者を得たアビーの姿は、まさにエリーを守っていたジョエルと同じだったから。アビーを赦すことで、エリーはジョエルを赦すことができた…、と私は解釈しましたが、さて?

-3ラストオブアス2

アビーとの最後の闘いで指を失ったことで、エリーはジョエルとの絆の象徴であったギターを弾けなくなりました。それで彼女はギターを置いて去ります。それは、ジョエルからの本当の自立を意味するのです。

そのことに気づいた時、感動で胸が震えましたよ。そこでエンドクレジットに突入ですよ。そいで、エリーとジョエルの歌声が聞こえるんだから、たまらない。またそれが泣かせる名曲なのがニクい。ああ…、もっと早く、行き違った二人の心が元に戻っていたら…という余韻が、いまだ腹に残っています。

哀しい。哀しい物語でした。「憎しみに駆られた者」に降りかかる代償は、あまりにも大きかった。いち早く復讐をやめたディーナ(エリーの伴侶のはずだった人)は、とっとと新たな命とともに、新しい未来に向かって立ち去っていました。すべてを失ったエリーの道の先も、どうか明るく光っていてほしいと願ってやみません。


  


最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
一言でもコメントをもらえたら、やる気湧きます!


↓よかったら、クリックにて1票、お願いします!
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

<スポンサードリンク>


Posted on 2020/07/15 Wed. 21:27 [edit]

TB: 0    CM: 0

15