素人目線の映画感想ブログ

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式日/『シン・エヴァ』に通じる、庵野監督の深層のドラマ。 

 式日
 式日
 (2000年 日本映画)
 80/100点



『シン・エヴァンゲリオン』、そして『プロフェッショナル仕事の流儀/庵野秀明特集』を観て、無性に過去の庵野映画を観たくなったのでした。

本作は、庵野監督による実写映画です。最近のものだと思っていたから、2000年制作!? と驚きました。まだ『エヴァ・序』よりも7年も前です。庵野監督が心身ともに疲弊してた時期の映画ですから、内容は推して知るべし。アート系でわかりにくい映画だろうなとタカをくくっていたのですが…

物語は、「アニメ監督として成功後、創作意欲を失っていた映画監督(岩井俊二)の男は、帰省した地元で心を病んだ『彼女』と出会う。毎日『誕生日の前日』を繰り返す『彼女』をほっとけない男は、『彼女』とともに過ごすが…」…っていう物語。

序盤から、奇抜な衣装を着て白塗りの女性が出てきた瞬間、嫌な予感がしたんです。やっぱりか。きっと独りよがりで退屈な映画だろうな、と。

ところが。

ちゃんと最後まで観られました。
どころか、予想よりも面白かったので意外でした。

それには、三つの理由があります。


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理由の一つ目は、映像です。
やはり構図にこだわる庵野監督らしく、どの場面もレイアウトが考え抜かれていて、見心地が良いです。どの場面で停止しても「絵」になるなんて、黒澤明かよ。ロケーションも、商店街の屋根の上を歩いたりして、多彩で面白いです。

二つ目の理由は、キャスティングの妙。
主要人物は3人程度ですけど、演者に好感が持てたのがとても大きい。

カントクと呼ばれる、主演を務める男を演じるのが、『スワロウテイル』や『リリィシュシュのすべて』などで知られる映画監督:岩井俊二っていうね。そこからして、もう、その筋の人なら興味深々のはず。しかも、『風立ちぬ』の庵野とは違って、演技がちゃんとできている。

心を壊した「彼女」を演じるのは、本作の原作者でもある藤谷文子。スティーブン・セガールの娘というから驚いた。ほとんどスッピンだからこその、あどけない顔立ちが印象的です。そして、やはり演技がちゃんとしている。 

もっと驚いたのは、こんな学生の自主制作のような映画に突如現れる、「大竹しのぶ」という女優怪獣。序盤、電話口から聞こえる「物言い」を聞いた時、「あれ?」と思ったんです。狂気をはらんだ感じが巧くて。終盤で画面に出てきた時に初めて「出演」を知りました。ワンシーンだけの登場なのに、さすがの存在感でした。

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で。
三つ目の理由は、『エヴァンゲリオン』…特に、『シン・エヴァンゲリオン』との相似性。

「彼女」は母親の愛情に飢えています。そのことが、心の病みにつながっています。それは、『エヴァンゲリオン』の「アスカ」と同じです。「彼女」が執り行う不思議な儀式を「式日」と言うのですが、『エヴァ』にもさまざまな儀式(わからん部分ですが)が出てきます。「彼女」が住むビルの地下を立ち入り厳禁にし神聖化している感じは、『エヴァ』のセントラルドグマのようです。

第一。
本作の物語のラインは『シン・エヴァ』に酷似している、とも思います。
『シン・エヴァ』のネタバレになるから反転しますけど、「彼らの再生に、庵野監督の故郷:山口県宇部市がカギとなる」ところなんて、そのまんま。

さらに。
爽やかなラストシーン」も、そっくりだと思います。ある意味、『シン・エヴァ』は、本作をなぞっているとさえ言えるかもしれません。

だから、『シン・エヴァ』を観た後にこそ、本作の鑑賞はふさわしい。本作もまた、庵野監督の深層を覗ける一品です。主軸はアートですので、眉をひそめたくなるほど分かりにくい表現も多いですが、庵野ファンにはマストだと思いますよ。

そうそう。
他の方の感想では、カントクは当然庵野監督自身、そして「彼女」は、「庵野監督のファン」を象徴しているという考察をよく見かけます。しかし、どちらも庵野監督なんじゃないでしょうか。「彼女」は、庵野監督の女性的な部分のように思うのです。すなわち、心理学的にいう<アニマ>ではないですか。

「彼女」が自殺願望を抱え、孤独を極端に恐れる様子も、庵野監督に酷似しています。自分自身を描くことは、作家にとって命を削る作業であると同時に、救済にもなると言います。当時、旧エヴァ劇場版の後、鬱状態になった庵野監督のために、本作は作られたそうです。

だから。
本作の製作には、庵野の最大の理解者:スタジオジブリの鈴木敏夫の名前があります。そして盟友の岩井俊二が主演しています。やっぱり、庵野監督の周りは、みんな優しい。

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ついでに言うと。
エンディングテーマが素晴らしいです。ラストカットにも唸りますが、予想してなかった選曲の妙に、わーっと鳥肌立ちました。やはり庵野監督の選曲センスって抜群です。私小説のように地味に描くばかりかと思わせて、ちゃんとエンタメの力を発揮させるのが、ニクい。見せ場の演出力も力強い。終盤、壁一面に「あるもの」が現れた時の爆発力は、凄かった。

先般放映された『プロフェッショナル/仕事の流儀』では、なかなか面倒くさい人柄が伺えますけど。作品に命を乗せる、心から信頼できる名監督です。この先の作品が、まだまだ楽しみで仕方ありません。


  


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Posted on 2021/03/30 Tue. 00:50 [edit]

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