素人目線の映画感想ブログ

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彼女が消えた浜辺/彼女が消えたのは無理もない!? 

 彼女が消えた
 彼女が消えた浜辺
 (2009年 イラン映画) 
  90/100点


『別離』、『ある過去の行方 』、『セールスマン 』と傑作ばかりを作るアスガル・ファルハーディー監督作です。ベルリン国際映画祭の銀熊賞 (監督賞) を受賞。

次回作が楽しみな監督の一人です。本作は、大傑作『別離』の一つ前の映画です。かねてから観たい観たいと思っていて、ついにレンタル店で見つけて鑑賞。

期待に違わぬ傑作でした! 「嘘」をテーマに、人間の身勝手さを緻密な描写で描く手腕は相変わらずです。「人の心の暗い部分」を皮肉るのがミヒャエル・ハネケに似た感じですが、もっと身近な感覚です。

簡単なあらすじは、『海に遊びにやってきたグループが浜辺の小屋を借りるが、子供が溺れる大騒ぎの後、一緒に来ていたエリという女性が忽然と姿を消す。グループ内には、次第に疑心や責任の押し付け合いが始まっていく…』という物語。

彼女が消えた浜辺3


序盤から登場人物が多いので、グループの関係性を掴むのに、やや時間がかかりました。イラン映画だから、女性がスカーフで顔を覆っているから見分けがつかなくて余計にね。

どうやら物語のキーである「エリ」は、グループ内の幹事的役割である「セピデー」の娘の幼稚園の先生。離婚したばかりの友人:「アーマド」に紹介するため、セピデーがエリを無理に参加させたようです。この「無理に」ってのが、結構ポイント。

本作には、こういうポイントが複数あります。伏線というわけじゃなく、「ひょっとしたらあれがキッカケか…?」と、あとから推察させるのです。

中盤で物語が大きく動きます。グループの子供が溺れてしまいます。この場面のスリリングさは必見です。ホームドラマのようにのんきだった序盤の空気を、一気に凍り付かせます。

で。

騒動後、気づいたらエリもいない…。

ここから、本作の面白さは急上昇していきます。
果たしてエリは、子供を助けようとして溺れてしまったのか。それとも、黙って帰ってしまったのか…? 派手さはない映画ですけど、状況の深刻さがリアルに描かれていくので、怖いです。

さっきまで仲睦まじくしていたのに、とたんに責任のなすりつけ合いが始まってしまう幼稚な感情の発散。せっかくのバカンスが台無しだという憤りも、火種なのかもしれません。誰一人、「立派な人」がいないのが、かえって好ましいですね。

小さなウソのほつれが絡まって、もう何だかワケわかんなくなる終盤は本当に見事なんです。おまけに、知らせを聞いたエリの知人がやってきて、どないしょう!? と混乱するグループ一同。彼らに対し、「そんなウソ必要あるか…?」と思いつつも、「やっぱりマズいのか…?」と、私もどう対処すべきか考えこんでしまいました。それほど、この混迷の事態に見入ったのでした。

イランの戒律のことも考慮しないといけないと思います。日本よりも、「嘘」にナーバスなんじゃないでしょうか。また、女性に期待される倫理観も、日本以上に厳格なのかもしれません。

彼女が消えた浜辺4




<ここから、結末までネタバレをします>



エリの行方の謎に加えて。
エリは婚約していた。にもかかわらず、グループは男を紹介してしまった。エリを探して婚約者がやってきた。どないしょう?
というサスペンスが、終盤の見どころです。

みんなで、あーでもない、こーでもないと議論します。でも、彼らは確かに悪くないんですよ。婚約してることを知らなかったし、知っていたセピデーだって、婚約解消を望んでいたエリを助けたかったのでしょう。

私も考えこみましたが、結局正直に言えばいいと思うんですよね。
気を使うことないじゃない。言ってやればいいんですよ。「君が好かれてないのが全ての原因だよね」と。「この甲斐性なしが」と。(そこまで言わなくてもいい)」

彼女が消えた浜辺2


で。

推測ですが。
…個人的には、エリはどっかに行ったんじゃないかと推察します。子供が溺れる前に、プイっと。子供を助けに海に入ったなら、近くにいた(であろう)他の子供に、一声かけそうな気がするんだけど。

エリは自分の置かれている状況に落胆していました。
アーマドの離婚した奥さんが言った、「永遠に続く最悪より、最悪の最後を望む」という言葉に、共感しまくってました。

彼女は結婚したくない婚約者がいて、母親にも縛られていた様子があります。だから時折ウツな気持ちになって、心ここにあらず。そんな時に、職場の「お客さん」に無理やりキャンプに連れてこられ、人見知りなのにたくさんの知らない人に会わされ、「気を使いすぎ」だの言われ、「大人しすぎ」と陰口まで言われ、だから人見知りだっつってんのにジェスチャーゲームをやらされ(結構キツいよ、これ)、その上、離婚したての男とカップルにされそうになり、極めつけは、約束通り1泊で帰ろうとしたら荷物を隠される…そりゃブチ切れて帰るよね。

荷物置いたままだけど、関係ねーですよ帰りますよ。いますよ。とにかくブチ切れて帰る人。彼女はそう見えない? いやいやいや、表向きは人当たりが良くて大人しく見える人こそ、キレたらやるよ(経験済み)。

そもそもセピデーがお節介過ぎるのですよ。
「エリはさりげなくを望むタイプ」と知っていて、あからさまにアーマドの隣に座らせようとするなんて、最悪です。あのやり方で怒って帰った人、実際知ってるから。「強制テラスハウス」なんて女性からしたら恐怖でしかないでしょうが。

エリは家にしっかり帰ってて、おかあちゃんと何事もなかった様に晩メシ食ってると思いますよ。

そうそう、それから。

つまるところ、エリに全く興味を持たれなかったアーマドにも正直に言ってあげたいです。「君が『最悪の連続』なのも遠からず原因だよね」と。

ちょっとふざけて描きましたけど。
その方が平和でいいよね。
そんな風にいくつものパターンを推察できるのが、本作が非常に優れていて、面白いところだと思います。

彼女が消えた浜辺1



※全くの余談ですが。
本作のシチュエーションが松本人志のコント『古賀』によく似ててですね…
スカイダイビングのあと友達が姿を消すって話。あいつどこ行ったんやー、事故ったんかなー、とか話し合うところが、実によく似てる。



 


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Posted on 2020/03/02 Mon. 20:53 [edit]

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