素人目線の映画感想ブログ
映画文法は気にせず、素人感覚で、楽しく映画の感想を書いていきます!
ワールドウォーZ【感想・レビュー】「ゾンビ映画」で何が悪い!

ワールドウォーZ
(2013年 アメリカ映画)
80/100点
ようするに、ブラッドピットが主演の「ゾンビ映画」です!
製作費が膨れ上がり(200億とか)、絶対に大ヒットさせねばならないため、配給会社は本作が「ゾンビ映画」であることを伏せてるんですって!
確かに日本人にとって、「ゾンビ映画」といえば、首が飛んだり内臓が飛び出たりするグロテスクでオカルトチックでマニアックで、ともすれば、家でこっそり死体をばらばらにしてそうな人が観てる映画だと思われがちです。(そこまでじゃない)
でもね、今までの「ゾンビ映画」に対する日本の配給会社の扱いが悪かったからだと思いますよ。
ビデオのパッケージも邦題も、やたらと血みどろを強調したおどろおどろしい煽り文句と写真ばかり。
「ゾンビ映画」と聞くと、敬遠されるような下地を作ったのは、まさに配給会社自身ではありませんか。
それが今さら、「ゾンビ映画」であることを隠すような宣伝をして客を呼ぼうなんざ、厚顔無恥もいいところだ!
本作は、れっきとした「ゾンビ映画」ですよ、みなさーん!
そしてさらに!
とっても優れた「パニック映画」でした。すっげー面白かったよ!
…さて。
もっと堂々と言えばいいと思います。これ、「ゾンビ映画」だって。
今や、この系統の映画やゲームは、一般的です。日本でもTVゲームの『バイオハザード』があります。
無論、元祖であるジョージ・A・ロメロの『ドーン・オブ・ザ・デッド』は秀逸な映画でした。
近年でも、『28日後』という傑作がありました。
そして、日本では今まさに、「初」といってもいいくらい本格的な日本版「ゾンビもの」漫画、『アイ・アム・ア・ヒーロー』が連載中であり、大人気です。
なぜ、この「ゾンビ」という設定は人々を魅了してやまないのでしょうか。
昔の「ゾンビ」は、死者が蘇るというオカルトでしたが、最近ではほとんどが「ウィルス感染」による人間の科学的変異として描かれています。
「鳥インフルエンザ」「SARS」といったウィルスの脅威は、実際に私たちの周りにあります。それが「ゾンビウィルス」だったら…。
まるで現実に起こってもおかしくないような錯覚によって、恐怖心は煽られるのです。
また、親しかった人間・顔見知りだった者が、突然正気を失い襲い掛かってくるという設定は、実際の事件として報道されている身内・隣人殺しを思い出させ、さらに現実感をともなわせるのではないでしょうか。
つまり。
私たちが密かに感じている「人間」への恐怖心が、如実にあぶりだされているのだと思います。

あらすじは、「突然、謎のウィルスの感染により、世界中にゾンビが溢れだした。元国連職員のジェリー(ブラッド・ピット)は、家族のために、地球のために、世界各地を飛び回って事態を収束させる方法を探す。はたしてワクチンは出来るのか。ゾンビの世界から人類を救えるのか!!」というお話。
本作では、オープニング後、すぐに事件が勃発します。
詳しい人間描写などはほとんどありません。
「家族愛の映画」だと喧伝されているからといって、じっくりと家族描写があるわけでもありません。
夫であり父親であるジェリー(ブラット・ピット)が、
一台の暴走トラックが、渋滞で停車中の車を弾き飛ばしていく凄まじいオープニング。
一瞬にして、異常事態に放り込まれるジェリーと我ら観客。
この「唐突感」のあるパニック演出は素晴らしいです。
まさに、突発的なテロに遭遇した感じといいましょうか。災難は、まさに突然やってくるのです。
逃げ惑う人々と、やがて見えてくるパニックの原因。
「人が、人を襲っている」
そして、「ゾンビもの」の最大の特徴である、「噛まれた人間もすぐにゾンビ化し、人を襲う」という凶悪なパンデミックが、お約束通り描かれていきます。
この負の連鎖が非常に厄介で、逃げ場が見つからない圧倒的な「絶望感」を、実にうまく引き出します。

「ソンビもの」の定番ですが、安全地帯と思われた場所が、一瞬で地獄絵図に変わる描写は本作にも健在。
「ゾンビの塔」と言われる本作最大のスペクタクルシーンです。
まさに、「ソンビ群が~、壁を登って~、きたぁぁー!」などと、現実逃避したくなるほどの阿鼻叫喚。
まさに世界陸上並みに、ソンビ群が走る走る。登る登る。落ちる落ちる。飛び跳ねる飛び跳ねる。
…って元気いいな、おい!
数十年後には、「ゾンビウィルス1000mg配合、滋養強壮にリ・ポ・ビ・タン・Z!」が発売されそうな頼もしさ!(なおも現実逃避中)
さらに。
私にとって、本作最大の恐怖描写は航空機の一件でした。
無事に逃げ出せたと思ってほっとした瞬間、航空機内で巻き起こる大パニック。
映画をご覧になった方ならば、きっと深く同意されることでしょう。
あの「絶望感」たるや…。もう、卒倒しそうな勢いでくらくらしましたよ。

今回のブラピが長髪なのは、普段の彼も長髪なので、主人公を「ヒーローではない等身大の人間」として描く意味を象徴しているそうです。
その狙い通り、主人公は冒頭のスーパーで狼藉者を撃ち抜いたり、大事なキーパーソンが死んでもへこたれなかったり、ゾンビに噛まれた仲間をとっさの判断力で助けたり、大パニック中でも冷静な観察眼で救いの一手を導き出したり…
完全無欠のヒーローじゃん!
終盤はスケール感がなくなって尻すぼみでは? という評価も多いようですが、なかなか巧い見せ場にしていると思います。
感動できるほどの高揚感がありましたから。
そう、あのペプシコーラで一息つくシーンは、スポンサーの要望だったとはいえ、やり遂げた男の静寂に痺れました。
それにしても。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、なかなか斬新な解決策でした。
つまり、「(反転で)『おい、オレ美味しくないよ!』『あ、まじで?』みたいな感じでしょ。
もっと言えばゾンビから『エンガチョ!』されてるわけです。ちょっと理解しにくいですな…。」

あと、気になったことをちらほら。
随所にアメリカンなところがちらほら。
・上司や軍の人間から何度頼まれても、「やりません」ってハキハキと拒否るブラピ。NOと言えるアメリカン! さすが!
・『28日後』や『アイ・アム・ア・ヒーロー』では個人のサバイバルが描かれますが、本作では「世界を救う!」って、さすがアメリカン!
・ブラピが「行動は命だ」と言い、行動しなかった者が死ぬ描写もアメリカン!
ぜひ教訓にしたいが、頭の中に『ミスト』がよぎって混乱!
・無政府状況の中、『28日後』の兵士とは違い、忠実に懸命に職務についているアメリカ軍の兵士の皆様! なんて立派なアメリカン!
・そう考えると、本作はマッチョイズムなアメリカ礼賛主義映画でもあるのです。
突っ込みどころもあります。が、紛れもなくパニックホラーの傑作だと思います。
本作で、じっとりと熱い汗をかいてみてはいかかでしょうか。
下記のブログがオススメです!
『ワールド・ウォーZ』(2013) - World War Z -/momoな毎日
14
« ポンヌフの恋人【感想・レビュー】ポンヌフ橋に行ってみたら、ホントはこんなとこだった。 | ある子供【感想・レビュー】そして、父になる。 »
コメント
これ、三部作なんですか!
そうですかー!
ということは、2作目でまた酷いことになるんでしょうか。そして怒濤の最終回になだれこむ、と。
それにしてもタイチさんのレビューは圧巻です。この作品に対する愛が爆発しそうですね。
確かにエルサレムの兵士は美女すぎましたが、ゾンビとむさ苦しい男達の中で目に優しかったです。
私のうす~いレビューを紹介してくださってありがとうございます。
続編、楽しみですね。
momoさん
三部作だ、そうです。
しかし、この内容でどうつなげるんでしょうかね…。
この手の続編は、失敗率高いから、怖いですが。
エルサレムの美女…うまく生き延びて良かったですね。
意外にも終盤での死亡率が小さいのが、ある意味斬新で、
私的にはほっとしました。
URL | タイチ #- | 2013/08/14 13:54 | edit
Comment
list
コメントの投稿
Comment
form
トラックバック
トラックバックURL
→https://eigamove.blog.fc2.com/tb.php/150-54c90ac1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Trackback
list
| h o m e |