素人目線の映画感想ブログ

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パラサイト 半地下の家族/巧いからって面白いとは限らない。 

 パラサイト
 パラサイト 半地下の家族
 (2019年 アメリカ映画) 
  89/100点


カンヌ映画祭で最高賞を獲得。公開されるや絶賛の嵐。そして、大好きなポン・ジュノ監督作品。期待はウナギのぼりでした。ウナギのぼり過ぎたかもしれません。

だからなのか…、そこまでじゃなかった…。

誤解を招くといけないので断言しますが、本作は面白い映画です。けれど、大傑作を観た時に感じる、心からのめり込む感じがなかった。なぜなのか?

もはや散々褒められている本作ですので、ここではあえて、気になった点を書きます。なんか…、最近こんな感想が多いですが、決して高評価の映画を腐し、悦に浸ろうとする魂胆ではありません。


<完全ネタバレで書きます>



…って言っても、前半は期待通り面白かったですよ。

半地下で暮らす貧乏家族(キム家)が、一人、また一人と金持ち一家(パク家)に寄生していく流れは、ワクワクしました。巧妙な作戦を練り、実行する様子は、一介のスパイ映画を観ているようです。しかも、キャラクターが楽しいものだから、余計に魅入られた。

ただし、ここでもいくつかの疑問はあります。キム家の長男が最初にパク家の長女の家庭教師として入り込みますが、なぜ彼がパク家の信頼を得たのかがわかりにくい。最初の授業の際、心配性のパク家の母親がそばで授業を見張ります。キム家の長男がそこで披露するのは、何とも釈然としない精神論のみ。しかも、長女の手をつかむというあり得ない描写。家庭教師業にちょっと詳しいんですけど、男の先生が初回で女生徒にあんな接近したら、間違いなくアウトになります。にもかかわらず、母親は彼を気に入る…。ここでまず「?」となりました。
もしかしたら。
以前の家庭教師と母親は、何か関係があったのではないか…? そんな疑念が浮かびます。娘とも関係があり、母親とも関係を持っていた。その家庭教師がいなくなって寂しくなった彼女らは、「危険な男の匂い」がする彼を、代わりの男になりえるとして気に入ったのではないか…。そんな邪推すら浮かびます。そうでないと、彼が気に入られる理由が分からん。

でも。
二番手として、パク家の長男の美術講師になったキム家の長女の機転は面白かった。ネットで調べただけの絵画カウンセリングの知識を披露し、見事信頼を得ます。たった一つの知識を披露するだけで、その筋の専門家と思わせる1級の技術。まさに、天性の詐欺師の才覚ですね。
ただし。
多動気味であるパク家の長男を、ほんの短時間でキレイなお辞儀をさせるまでに手なずけた手法が不明です。所々で、そうした大事な部分が省かれているのは気になります。

コメディパートだから、そこは気にしなくていいのか。いや、そうした描写不足は、物語のファンタジー色を強めるため、終盤の重い物語の説得力を薄めさせかねないようにも思うのです。

で。

そのあと、三番手にキム家の父親が運転手、最後にはキム家の母親が家政婦として雇われます。特に、もともとの家政婦を排除するキム家の連携プレーは楽しかった。ここは、エンタメとして素直に楽しみました。家政婦にとっては、とんでもない悲劇ですけどね。

そう。つまり、キム家は決して弱者な貧乏人ではありません。チャンスがあればモノにできるだけの力を持ち、少々の悪事も厭わない、そこそこの「悪人」でもあります。這い上がっていくためには「善人」であっては無理という、皮肉を感じます。「富裕層=イヤな人たち」「貧乏人=善い人たち」というステレオタイプな描写ではないところに、本作の頼もしさを感じたものです。そして、それが後半の哀しい展開につながるのだと思います。

それにしても。
家族全員がパク家に雇われ、生活が楽になっていく様子はサクセスストーリーのような爽快さがありました。とはいえ、金の使い道がほとんど「飲食」だったのは、確かに貧乏っぽい。

さて、後半です。

本当の問題は、ここからです。

私の本作のピークは、パク家不在の豪邸で、キム家みんなが酒宴をやっていたところに、元・家政婦がやってくる場面です。破綻が始まる後半戦の幕開けを知らせる、玄関チャイムが怖いこと。いよいよ来るでーという盛り上がり。そして、突如現れた地下室の存在。『セブン』の終盤に感じたような高揚感が、確かにありました。どうなる!?どうなる!? …と。

ポン・ジュノ監督のサスペンスの盛り上げ方は秀逸です。『母なる証明』で証明済みです。

けれど。
なにやら、そこから急速に冷めいく私の気持ち。

地下室にいた謎の男は、元・家政婦の亭主でした。地下に暮らし、パク家の食べ物を拝借していたわけです。まさに、借りぐらし。それでもアリエッティみたいな可愛い妖精がいたんなら、みんな優しくなれたでしょうけど(それも差別です)

半地下どころか、「完全地下」に暮らす男に対し、手助けする気のない冷徹なキム家の面々。格差が起こす断絶の問題は、金持ちと貧乏人の間だけではなく、貧乏人とさらに下の者との間にもあるのです。まさに、士農工商のさらに下を作った身分制度の狙いと一緒。この深い差別の闇。この描写の巧さ…、確かに巧いですよ。

だけど。
その衝撃の直後のかくれんぼシーンは何? 冗長だし平凡だし。ジャッキーチェンの映画でよく見るようなコミカルなかくれんぼ。そこで、まず少し冷めました。
それと。
キム家の母親のコメディチックな蹴り飛ばしが、終盤の惨劇の火種となることのアンバランス。え? 笑うところかと思ったら、重傷…って。コメディとシリアスのバランスは、『殺人の追憶』の方が絶妙だなあ。

で。
そこからの展開には、もっとノレなかった。

最後まで言うと。
最後の惨劇。完全地下の男は、半地下の長女を刺し、半地下の母親は完全地下の男を刺し、半地下の父親は金持ちの父親を刺します。まさに三つ巴の死闘になるわけです。だけど、それは中盤で示した「格差断絶の複雑さ」を、また描写しただけです。いわば、中盤でタネ明しがあり、最後にも同じタネの手品を見せられたような感じ。だから、衝撃が薄れた。

そもそも。
キム家の父親の動機が弱い。「貧乏人を差別した怒り」となっていますが、パク家は貧乏人を差別していません(そういう描写はありません)。ただ、本当に臭いから「臭いなあ」と言っただけ。完全地下にずっと住んでる男なんて、そりゃ臭いよ。

それに、パク家のお父さんは貧乏人を捨てて逃げようとしたっていうけど、あの状況じゃ金持ち貧乏関係なく、そりゃ逃げるでしょうよ。そもそも、この惨劇を作った直接の原因は、キム家じゃ!?

だからこそ。
自分の娘が瀕死の時に、父親が他の男を刺して逃げるって精神状態が一切わからん。この時点で、私の鑑賞熱はほぼゼロにまで下がりました。

つまり。
「物語の完成」を優先するあまり、現実的な描写を放棄したように感じたのです。無理があると。これが、「巧いからって面白いとは限らない」と銘打った理由です。キム家の父親が「計画は立てない方がいい。思う通りにいかない」と言っていた通り、現実は、実はもっと複雑です。だから映画の過剰な計算は、物語から現実感を奪い取りかねないとさえ思うのです。

余談ですが。
人が死ねば面白いのか? 衝撃なのか? そうも思ったものです。
韓国映画は、邦画では考えられないような凄惨な展開をします。それは、予定調和を崩す韓国映画の良さだとも思います。しかし、今や逆に、それが予定調和になっている気もするのです。

ハッキリ言って私には、『万引き家族』での安藤サクラのひとすじの涙の方が、よほど衝撃でした。

以上です。好き放題書きました。

って言ってもね。
アカデミー賞作品賞にノミネートされるなんて、とんでもない快挙。やはり、凄く高い評価の映画なんです。私には合わなかった。ただ、それだけのこと…


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Posted on 2020/01/22 Wed. 00:58 [edit]

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コメント

私にも合わなかった 

前半、半地下家族がセレブ豪邸へと寄生していく展開はいいのだが、元家政婦が舞い戻ってくるくだり以降退屈する。あそこから少しづつ綻びが出て崩壊していくべきなのに、元家政婦の夫が暴走して結末へと向かう。せっかく貧富・格差社会を痛烈に批判していく行程を見せているのにお粗末な着地、避難所での父親の台詞が良かっただけに残念。
息子がセレブ娘の日記を盗み読みしてるけど、その伏線活かしきれてない、というかセレブ娘に対するアクション乏しいし、クライマックス息子はあえなく退場するし、息子の心情が一向に伝わってこない。結果ラストの父への手紙に感銘できない。
本当に物語設定良かったのに…

URL | raga #- | 2020/01/22 21:20 | edit

raga 様 

コメントありがとうございます。
私も後半戦で退屈を感じました。上記でも書いてる通り、
中盤で明かされたタネで、物語の仕掛けはほぼ終わりだった気がします。
着地は、韓国映画らしいなあと冷めて観てました。
自分の家族が崩壊してでも…、という父親の動機が皆目不明です。
私は、パク家の行く末も描かれていないのが気になります。
パク家の長女はキム家の長男を背負い、必死に助けようとした「いい子」です。
あの娘はどうなってしまったのか…。

URL | タイチ #- | 2020/01/23 09:32 | edit

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