素人目線の映画感想ブログ

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レ・ミゼラブル/「大人の事情」なんて、子どもは知らない。 

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 レ・ミゼラブル
 (2020年 フランス映画) 
  89/100点


フランスのイメージは、何かと華やかです。パリなんて特に、芸術の都。世界最高の観光地です。

私も一度だけ、フランスへ行ったことがあります。時は、「1999年大晦日」 凱旋門でのカウントダウンに参加する気満々でしたけど、現地のガイドさんによると、今日は凱旋門に近付かない方がいいとのこと。えー、と不満に思いつつ昼間に様子を見に行ったら、日本ではお目にかかれない重火器を携帯した警官が厳重警戒中。これはヤバい…と大人しく帰ったのでした。

やはり、治安は日本よりも格段に悪いのでしょうね…。華やかさの裏側には、「負」の一面が隠れているものです。

レミゼラブル2

本作は、フランスの格差社会を描いたヴィクトル・ユーゴーの同名小説『レ・ミゼラブル』の、いわば現代版。小説は1800年代の物語ですから、200年経っても、世の中は結局は変わらない。そんな皮肉が、ビリビリ効いた傑作でした。

時は、「2018年のフランス」 冒頭では、ワールドカップの優勝で街は大賑わいです。フランス国民が喜びでひとつになっているような描写のあと、場面はすぐに移民の街「モンフェルメイユ」へ。おおよそ、フランスの一般的なイメージとは異なり、ギャングや多様な人種でごった返した貧民街です。ひとつになったのはお祭りのひとときで、現実の日常は、格差と対立の構造でがんじがらめ。

本作は、この街で起きた衝撃の事件を描きます。

レミゼラブル3

主人公は、この街の3人の警官です。
一人は新任のステファン。彼は、現地のベテラン警官のクリスとグワダと組まされます。彼の目線は、我々の目線です。『ボーダーライン』のヒロインのように、見知らぬ街の見知らぬカルチャーギャップに戸惑う役割です。

ステファンが驚いたのは、クリスとグワダの乱暴ぶり。傍若無人な振る舞いで街をパトロールします。ギャングの親分に対しても、やたら上から目線。銀星会に対する舘ひろしのような…(もはや誰も知らんかなあ)。

彼らにだって言い分があるでしょう。この街では、「なめられたら仕事にならない」のは理解できます。ギャングや宗教、人種間の対立で緊張状態に絶えず、子供でも、ギャングの卵のようで油断できない。この街を取り締まるのに必要なことは、「威嚇」であるという結論に至ったことは、現場の者の現実です。

とはいえ。
クリスは支配的な性質をはらんでいます。言いがかりのように女性に職質し、携帯電話を取り上げて壊すような真似は、もはやギャング以下。ただ、警官としては有能であることも確かです。SNSから子ライオンを盗み出した犯人を探し出したのはお見事。仕事の出来不出来と人間性は、決して一致しないものです。

レミゼラブル5

そんな彼と、やたらイケメンのグワダの二人が。
大きく一線を越えてしまうことで、大事件は勃発するのでした。

事件の引き金となる本作のもう一人の主人公:イッサという黒人少年は、確かに「悪ガキ」です。けれど、顔面にゴム弾を撃ちつけられるところから始まった、イッサへの仕打ちは凄惨です。当初は、イッサが悪いんじゃん…という印象でしたが、彼に対する大人の卑劣は比ではなく、終盤ではイッサに同情するほどでした。

ちなみに。
このイッサがとてもすごい役者です。怯える表情、思慮にふける表情、闇に堕ちた表情、憎しみに満ちた表情。どれも心にズンと迫ります。本作のMVPは間違いなく、彼。

レミゼラブル4

信頼できる大人の不在が、最も深い「罪」であると本作は描きます。ある意味、これは『僕らの七日間戦争』であり、『大人はわかってくれない』でもあります。信頼できる大人のいない社会は、子供にとって不幸でしかありません。

クリスの家庭での一面が出てきます。階段をドタドタと上る子供たちに「静かに上がれ」と注意をしますが、どの口が言うのか。クリスの子供たちも、何だか乱暴な様子です。いいことも悪いことも、身近な大人の「振る舞い」を子供は素直に吸収するのです。この部分、『そして父になる』のリリーフランキーの子供が、育ての親に似てストローを噛む場面を思い出します。

もちろん、大人の世界は複雑です。
前述のように、クリスたち警官が乱暴になることには一定の理由があります。「政治」には、「清く正しい」だけでは、動かない面もあるのでしょう。しかし、「大人の事情の悪」が子供に理解できるはずもなく。ただただ、子供たちには、より純度の濃い「悪」として継承されていくのです。

そして。
その悪の連鎖は、「大人」に痛恨の悲劇となって還ってきます。
ラストで。
生殺与奪の権利を、完全に子供たちに掴まれます。
大人の命乞いの咆哮など、子供たちの表情を変えません。

大人側にもほんの少しあった良心が、今さら、子供たちに伝わるか。

その審判がくだる刹那の。
強烈なラストカットに、息を呑みました。

  


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Posted on 2021/02/10 Wed. 21:00 [edit]

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