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すばらしき世界/役所広司の演技が、もう神。 

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 すばらしき世界
 (2021年 日本映画)
 86/100点




<<ネタバレがありますが、結末は伏せています>>


「役所広司」を初めて認識したのは、高校生くらいの時、時代劇ドラマ「三匹が斬る」でした。センゴクっていう浪人の役で、荒れくれ者でいて、頼もしく温かい演技が魅力でした。毎週楽しみに観てたのに、役所広司が降板して、後任が近藤真彦だった時のガッカリ具合といったらなかったですよ。

そんな役所広司の演技が、ここ近年さらに凄まじいものになっている、という印象があります。

強烈だったのは、是枝監督の『三度目の殺人』でした。悪人なのかどうなのか判然とせず、思わせぶりで、哀しみもあって…、そんな難解な男を見事に演じているのを観たとき、あまりの巧さに唖然。しかも、ナメック星の最長老かってくらい相手役の福山雅治の演技力さえ引き上げていたものです。

彼の演技は、いまや最高の領域に達した気がします。本作は、前述した是枝監督の弟子:西川美和の新作です。本作では、役所広司がどうなっているかというと…

もう、神。すごいよ。どうやったらこんなに巧いセリフ回しができるんだろ? 博多弁での恫喝が堂に入ってるなんて、当たり前。出所したばかりで不器用でまっすぐで、ヘタしたらステレオタイプで臭くなりかねない三上という元・ヤクザを、一切ウソ臭くなく演じきるんだから!

そう…、逆に言うと。
本作は、『ゆれる』の名匠:西川美和にしては、一般受けを狙ったのかなあ…と思えるくらい、「分かりやすく」している面があります。

素晴らしき世界1

いわば『ファブル』とか『ジョン・ウィック』とかと一緒です。「平穏に暮らそうとしている男の所に、どんどん悪人が転がり込んでくる」という、テンプレなストーリー通り、「今度ばかりはカタギぞ」と肝に命じている三上の元に、試練かってくらい、次々と悪人が現れます。

その度に、三上の乱暴な本性が出てしまい、彼の社会性が疑われてしまう、という流れ。

最初のアパートのチンピラから始まり、「オヤジ狩り」とか出てきた時は、失笑でしたよ。いったいどうした。おまけに終盤も、ステレオタイプな「悪人」が出ます。ちょっとリアリティを捨ててるなと訝し気でした。

ここは冷めるポイントなんです。本作には、『私はダニエル・ブレイク』のような、生活福祉を描く社会派の様相もあるから、都合のいい展開が目立つと作為的に見えて、説得力が薄れます。こんなに頻繁に悪人が押し寄せる世界は、そりゃ素晴らしくないでしょう。

ただ。(だいぶ余談ですけど)
不思議な因果で。
例えば、クレーマー気質の人の所に、どういうわけか故障品が届きやすい…っていう傾向はあります(個人的印象です)。ほんとに神様が試してんじゃないかなあ。そういう人のカルマを。で、クレームつけたら減点してんじゃないか。クレーマーの人は気を付けた方がいいよ。因果は巡るもんです。最後に泣くのは、たぶんあんた。

素晴らしき世界4

さて。
それでも。
そんな物語の脆弱性なんて、役所広司の演技が吹き飛ばします。だからもう、否応なく泣けちゃう。彼の男泣きに、もらい泣きせずにはいられません。

役所広司が演じる三上は、正当防衛に近い『殺人』で13年の刑期を終えたばかりです。無骨で、決定的に短気。だから、「普通」の生き方に苦慮している彼に、周りの人が注意をしてくれるのですが、気に入らないとすぐにカッとなります。いわゆる損な性格なんです。いますよ。無駄に攻撃的で味方を減らす人。

でもね…、そりゃキレるよ。

実は、三上がキレる気持ちが分かりました。
三上への物言いが、みんな偉そうなんだもの。弁護士(橋爪功)はまだ年配だからいいとして、スーパーの店長(六角精児)と、小説家志望の青年(仲野太賀)がやたら上から目線で、「マスコミの食い物にされるよ」だの、「ネグレクトによる性格の歪みが」だの、「今度こそ普通になってください」だの。三上の歴史とアイデンティティの全否定なんです。

「オレたちはカタギでまともだから、元・反社で世間知らずの君に教えてあげるけど」…っていうニュアンスを誤解されても仕方ない。

確かに三上の過去の犯罪は正されるべきだけど、彼も言っていた通り、組織にいた頃は「誰かの役に立っている」という充実感でいっぱいだったわけ。それが、母親に捨てられ、よりどころのない彼の唯一の生きる場所だったんです。それを、「あなたの今までの生き方は全て大間違いでしたよ」と一刀両断する彼らは、もうちょっと寄り添った物言いができないか。

みんなで三上の就職祝いをしてあげるシーンで、「嫌なことは流すべきだ」「取り合わなければいいんだ」「人生とはそんなもんだ」とみんな好き勝手言ってる時、不思議なくらい三上のショットが入りません。その時、思ったんです。三上は、本当は苦虫を嚙み潰す気持ちで聞いていたんじゃないだろうか。「何を腑抜けたこと言いよっとか」「仁義も何もあったもんじゃなか」と。…だって、あれは、三上への断罪裁判に近い。

もちろん。
彼らは彼らなりに「親身」です。それは三上にも分かるから、腑に落ちなくても、飲み込もうと努力したのでした。とはいえ、所詮、彼の性分には全く合わない生き方。だからこそ、あの結末なのでしょうけれど。

素晴らしき世界

でも…
あの結末は、嫌いです。(本作のタイトルの個人的解釈は、『皮肉』です)「彼のような不器用な人間が生きていける世界じゃないんだよ」と言っているようで、それこそ、三上への全否定に他ならない。

いや、三上は、才能に溢れていますよ。彼の才能は、人望です。だからあんなにキレてるのに、人が離れていきません。これは凄いことですよ。みんなが優しいというより、彼には、ほっとけないと人に思わせる魅力があるんです。

彼はとにかく喜怒哀楽がハッキリしていて、単純です。騙されやすいタイプです。けれど、仁義に厚く、人のために一生懸命になれます。人のために泣くことができる人です。ん? しずかちゃんのお父さんの「のび太評」みたいになってますけど、そうなんです。

さらに。
彼が妙に人懐っこいのは、本当は寂しいからだと分かります。だから、みんな彼から離れようとしないんです。彼のためならと、人が優しくしたくなる人望って得ですよ~。だから、彼にとってこの世界は、本当の「素晴らしき世界」でありえるはずだったんです。

それなのに。

解釈が分かれる結末ですから、読み切れてない部分もあるでしょうけど。あの結末は、ない(直前の「カーテン」の演出は凄かったけど)。

…と、三上を心底気の毒に思えるのは、やはりひとえに、役所広司の魅力だということ。もう、恐れ入りました。


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Posted on 2021/02/15 Mon. 22:43 [edit]

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