素人目線の映画感想ブログ
映画文法は気にせず、素人感覚で、楽しく映画の感想を書いていきます!
ニキータ/ベッソンの才能がキレまくってた頃。

ニキータ
(1990年 フランス映画)
95/100点
※過去の記事を加筆・修正したものです。
<<最後までネタバレします。>>
この時のリュック・ベッソンは、輝いていましたなあ。
本作は、当ブログ管理人が生涯ベスト5に入れている傑作中の傑作です。美しい映像と、スパイスの利いた演出がてんこ盛りの素晴らしい映画です。

さて。
主人公は、どうしようもない不良少女:ニキータ。警察官を射殺したことで、彼女は死刑判決を受けてしまいます。ちなみにこの時、ニキータは薬物で朦朧としていましたが、意図的に警官を撃っています。悪徳警官でもなく、誤射でもありません。若気の至りとはいえ、至り過ぎ。
死刑執行で毒物を注射されたと思いきや、意識が戻ると見知らぬ部屋に。そこから、ニキータは政府のお抱えヒットマンになるべく、修行することになるのでした。
修行シーンも楽しいです。さながら、殺し屋版ホグワーツ。といっても、公の機関だからか、こちらもスクールのような雰囲で、明るめです。
しかし、天性の才を持つニキータは型にはまりません。柔道の教官を嚙みつきと一発の蹴りで倒してしまう自由形。けれど、直後に踊り狂う姿は、天真爛漫…というより、「哀しきピエロ」にも見えます。
そんな笑顔を忘れた彼女に、メイクと女の武器を教えるのが名優:ジャンヌ・モローというキャスティングが、冴え渡っています。

実はアクション映画というよりも、ヨーロッパ映画らしい皮肉を含んだ、ややサディスティックな人間ドラマです。きっとベッソンの趣味です、間違いない。
特にこれ。
誕生日、ニキータは豪華なレストランに招待され、教官からプレゼントを渡されます。少女のように喜んで開けてみると、中には銃が入っているのです。教官の顔つきがガラリと変わり、「今、ここで人を殺せ」と命じます。
なんて残酷な…。
泣きそうになるニキータ。映画のキャッチコピーが「泣き虫の殺し屋」とあるように、主演のアンヌ・パリローが、なんとも薄幸そうな顔をします。
見事な八の字まゆ毛。
限界まで垂れたへの字口。
プルプル震えるプードルのような顔。
しかし、すっと気を取り直して銃をとり、見事にターゲットを始末。ところが、教えられていた逃走経路は全くのデタラメ。ここから始まる激しい銃撃戦は見ものです。パラパラとパスタ麺が頭の上にふりかかるシーンは有名ですね。
実はこれ、最終試験。
かろうじて逃げおおせたニキータは、ついにヒットマンとして認められ…いや、ひど過ぎるだろ! 怒りで教官をぶん殴るニキータでしたが、ふと教官が自分に寄せた想いに気づいて…、あら…?(⁎˃ᴗ˂⁎) となる乙女なニキータなのでした。
晴れてヒットマンになったニキータは、日常生活を許されます。序盤のミッションでは、ターゲットの部屋に品物を届けるだけ、という地味さです。なんだか、思ったより平穏みたい…
と、油断していると。
サークルの体験会では楽しそうに遊ばせといて、入部した途端10キロ走らされるみたいな展開が始まっていくのです。

物語中盤からニキータの恋人になるのは、『ベティ・ブルー』のジャン=ユーグ・アングラード。ニキータは、彼のユーモアのある雰囲気に惹かれます。行動が雑なニキータに笑顔を見せる寛容さも、気に入ったのかもしれません。彼のキャラクターは『ベティ・ブルー』まんまです。どんな破天荒な女性でも受け止めそう。彼みたいな人なら、きっとDSをバキバキに折る高嶋ちさ子だって余裕でしょう。
ところが、彼女に安息の時などありませんでした。恋人との旅行中、部屋で満喫するニキータに突如「今、ここで人を殺せ」と命令が下されます。
事前の打ち合わせってもんがないの? とは思うものの、事前の計画は漏洩の問題があるということか。戸惑いながらも、ぶっつけ本番の「仕事」に取り掛かるニキータなのでした。
自由な生活を取り戻したと思わせて、いつ、どこで起きるかわからない裏仕事。ほぼ、いじめ。しかし、本来なら死刑になっている身のニキータに、それを拒む権利はないのです。

ニキータの恋人は、真実を知りません。
浴室からスナイパーライフルで要人を狙うニキータ。隣部屋にいる恋人が不審な気配に気づいて扉ごしに尋ねますが、ニキータはツンとして「別に、何も」とかわします。「それならいいんだけど…」と恋人が去った途端、泣き顔になるニキータが切ない…ここも、歴史に残る名場面。
しかし、次第に濃くなっていくニキータの不穏な空気に、いよいよ恋人は彼女の「秘密」を感じ取ります。「君がどんなことをしていたにせよ、僕は気にしない」と、男気溢れる言葉を投げかけます。素晴らしい! 彼ならば、きっと某タピオカ店と揉めた木下優k-(以下省略)
後半、遺体処理の掃除屋(ジャン・レノ!)と組むことになりますが、この人はニキータ以上にハチャメチャ。ニキータでさえ「あんた、なにやっとんの!?」とオロオロしてます。お前は、太田光を不安にさせる神田伯山か。
ニキータは、掃除屋の失態に巻き込まれ、危ういところを命からがら逃げ出します。次第に限界が近づくニキータなのでした。

(すでに、レオンの風格です。)
ラスト。
この映画を観たのは高校生の頃です。映画の結末には、「想像に任せる」という、はっきりしない終わり方もあるのだ、と初めて知りました。「え? ニキータが残した手紙の内容は読まないの?」「ニキータどこに行ったの?」
こんな終わり方もアリなんだあ…。恋人の苦々しい顔と、鬼教官のにやけ顔が、今でも思い出せるほど印象的なラストシーンです。それにしても、あれだけ優しくした恋人の報われなさが、とことん皮肉っぽくていい。
この映画から、映画は「表情で終わる」のが最高であり、最高の演技とは、「表情で語る」ものだと思うようになったのです。
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コメント
レオンを先に観て、これはオシャンティ過ぎて理解出来ないんじゃないかと敬遠してましたが、いやいや面白かったですね〜
風呂場のシーン、ラスト好きだな〜
あと伯山はおかしいよ(滝沢カレンの番組にて)
URL | 菜七子 #- | 2021/02/28 01:09 | edit
菜七子 様
コメントありがとうございます!
おシャンティさもありますけど、エンタメ寄りで、しかもハイセンス!
風呂場のシーンは名場面ですね。
ラストの意味深さもニクい。
伯山カレン面白いです!
あの二人、違う性質での猟奇性があって、素晴らしいです。
URL | タイチ #- | 2021/03/01 10:03 | edit
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