素人目線の映画感想ブログ

映画文法は気にせず、素人感覚で、楽しく映画の感想を書いていきます!

あの子は貴族/一番可哀そうなのは、華子の見合い相手。 

 あの子は貴族
 あの子は貴族
 (2021年 日本映画)
 84/100点



開業医の子供の多くは、医師になることを義務付けられます。病院を継がねばならないからです。以前、教員になりたいと望んだ子供がいました。両親は、大反対。「教員なんて…。医師の方がよほど尊い仕事よ」 そんな言い方で子供を説得していました。医師にならないなら学費を出さないとまで言われ、その子供は泣く泣く教員を諦めました。

裕福な家庭の子供はうらやましいと思う反面、そんな「レール」を強いられていることもあるのです。

あの子は貴族

あの子は貴族2

さて。
<<最後までネタバレがあります>>


本作の主人公・華子(門脇麦)も開業医の娘です。両親から「医師」との結婚を強く望まれます。結婚後は、今度は姑から「子供(跡継ぎ)を産むこと」を、当たり前のように望まれます。本作は、華子の人生を通し、主に女性の人生にかけられた「バイアス(偏見、先入観)」を描きます。

折しも、「女性とは〇〇だ」というバイアスが強く非難される事象が起きたばかりです。本作にも、女性なんだから…というセリフが随所に出てきます。

また、「階層」というワードも印象的です。慶應義塾大学には、内部生、外部生の二通りがあります。内部生とは、慶應幼稚舎からずっと慶應ルートを昇ってきた富裕層です。大学入試で慶應に入ってきた外部生とは、会話の内容からケーキセットの値段まで違います。

本作のもう一人の主人公:美紀(水原希子)は外部生で、田舎の出身。父親が失業したことで大学を退学し(奨学金はないのか?)、華子にはない悩みで人生に苦慮します。

つまり。
「バイアス」と「階層」が人生の壁として、本作では描かれているのでした。

とはいえ。
江戸時代の身分制度に比べれば、打ち破ることのできる「壁」です。現に華子は、序盤のセリフで、両親が望んでいない相手と付き合っていたことが明かされます。そういう「自由」は、さすがにあるのです。

ようは。
自分の「意思」さえ強く持てれば、「選択」はできる。すべて環境のせいにして「何もできない」とはしない展開に、本作の頼もしさがあります。

だから。
自立して生き抜く「選択」をした美紀に触発され、華子は最後に自分の意志で大きな「選択」をするのでした。

とはいえ。
華子が「選択の自由」に気づいたとしても、それを巧く使いこなせるかはまだ分かりません。だって、バイオリニストの友達のマネージャーという職に就きますが、友達同士でトイレに行ったりする女学生のような行動には、まだ甘さがあるような気もします。

生活苦で追い詰められた女性が増加している昨今です。そもそも彼女は実家に頼らず生活しているのか。メーガン妃みたいに、好きにするけどロイヤルファミリーの特権は使うでは、世間は納得しないんだな。そのあたりを全く描写しないのは、ちょっと中途半端な気がします。

もしかすると、敷かれたレール通りに走る方が楽だった…となる可能性だってありますよ。意外に「自由」とは、人間の心理に叶っているとは言えない面もあります。「家庭を持つべし」「子供を持つべし」というバイアスは、実は自身の遺伝子にも埋め込まれていたりするものなんで。

あの子は貴族3

とにかく。
まだまだ華子はスタートライン。しかし、彼女の確かな成長を暗示させるのが、ラストの高良健吾との邂逅なのだと思います。まさか再婚とはいかない気もしますが、自立した女性は魅力的に見える…ということなのかな。

ただ一つ残念なのは。
そんな「バイアス」を批判する本作ですら、「バイアス」をかけた描写が見られることです。「見合いをする医者なんて曲者が多い」というセリフがあります。その直後に出てくる華子の見合い相手は、「気持ちの悪い男」でした。これもまた、バイアスなんですよ。 

本作は残念なことに、「男性の描写」が偏っています。悪い(変な)男ばかりが出てきます。「ネイルサロンで働いている女の男友達ってこんなんでしょ」っていうのもバイアスです。「いや、男なんてこんなもんでしょ」と。それでは、テーマの説得力が薄れるんです。

何を隠そう。
高良健吾に華子が一目惚れすることがもうすでに、華子の男性への強いバイアスです。「良家で弁護士でイケメンの彼ならいい人に違いない」というバイアス。『思い出のマーニー』をちょっと思い出したんです。「太っちょブタ」とは仲良くなりたくないけど、金髪の美少女とはすんなり仲良くなる少女の「あさましさ」に近い。 

つまり、この世界はどこもかしこも「バイアス」だらけ。

実は男性側もバイアスに抗えず、苦しんでいる場合も少なくありません。高良健吾に漂う哀し気な様子から、彼もまた政治家一族という「レール」に息苦しさを感じているようでした。

さらに。
本作で一番気の毒な気がしたのは、「気持ちの悪い男性」のアイコンとして描かれた華子の見合い相手です。あの男性は、辛い生き方をしてんじゃないかなあ…と随分気になってしまったよ。

だって可哀そうじゃない。人との接し方を知らず、空気が読めない変人に見えるかもしれないけど、映画館でみんなに嗤われてさ。それは侮蔑にはならないのかい?

あの子は貴族4

そうそう。
「恋愛階層」ってのもありまして。それにおいては華子も美紀も最上クラスでしょう。だって、華子なんて自信満々。友達から男性を紹介しようかと言われ、「断ることになったら悪いから」と自然に言ってのけるのは手練れの極み。美紀なんて、あの美貌だもの。何が慶應じゃこちとら水原希子ですけど? と思っていたとかいないとか(思ってない)。

そういう俗な観点で観てしまうと、お二人は勝ち組過ぎてサーっと共感が冷めていくという始末。

でも。
本作の演出は、極めて丁寧で引き込まれます。また、リアルなセリフは必見です。近年では『花束みたいな恋をした』に唸りましたが、それ以上に巧いです。俳優の自然な言い回しが、聞いていて心地いい。これこそ邦画の魅力ですね。

さて最後に余談です。
本作には一人だけ「いい男」が出てきます。華子の姉の旦那です。まるで着飾らず、人見知りの華子さえ彼には遠慮がありません。嫁から身勝手なことを言われてもキレることなく、庶民的な気遣いもできます。あれよあれ、あれこそ出会うのが難しいと言われる「普通の男」 結婚相手にはああいう人がいいですよと余計な一言で今日はおしまい。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
一言でもコメントをもらえたら、やる気湧きます!


↓よかったら、クリックにて1票、お願いします!
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

<スポンサードリンク>


Posted on 2021/03/24 Wed. 12:14 [edit]

TB: 0    CM: 0

24

コメント

Comment
list

コメントの投稿

Comment
form

トラックバック

トラックバックURL
→https://eigamove.blog.fc2.com/tb.php/464-1568762c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Trackback
list